両親の説得
とても短いですが、
次の話とのつながり上、ここで投稿。
今から両親を説得して、ウェイリスを追いかけて、間にあうのか。ウェイリスは今も、無事だろうか。
そう思いながら、エーデルフィアはカーヴァンキスに降ろしてもらい、居佇まいをただした両親の目の前に座る。そして、しっかりと目を合わせて、告げた。
「ウェルを探しに行きたい」
「ダメだ」
「ダメよ」
だが、返ってくる言葉はもちろん、反対の言葉だ。無駄に気温の下がったこの部屋で、若干怯え腰になったエーデルフィアと、それを傍観するカーヴァンキス、部屋の温度を徹底的に下げているエイシェリナ、フォンシュベルは少なくとも表面上だけはにこにこと笑っていた。だが、もちろんその笑みがやさしいものであるはずがない。
「ウェルを探しに行く。お母さんたちがダメっていうなら、一人で勝手に行く」
「――――何を言っているの、エーデルフィア? お母さんたちが、エーデルフィアを一人で勝手にお出かけなんて、させるはずないでしょう?」
「お母さんの言うとおりだよ。これ以上言うならば、また部屋に閉じ込める」
「逃げる。そんなことされるくらいなら、家出する」
「させないって言ってるでしょう? エーデルフィアは、まだお母さんたちの庇護が必要なほど小さいんだから」
「じゃあ、ウェルを探しに行ってもいい?」
結果、家出まで考えていることをエーデルフィアが告げると、もちろんフォンシュベルとエイシェリナはにっこりと笑ってそれを禁じた。
しかしその後、エーデルフィアが暗に家出はしないから、とウェイリスを探しに行ってもいいか、期待に満ちた目をしながら尋ねたのだが、もちろんそれも反対された。
「ダメに決まってるだろう」
「やーだー! 探しに行くもんっ!」
「ダメだ。さー、エーデルフィアは部屋に戻ろうね」
「ヤダ! お父さんたち、また閉じ込めるつもりだっ!!」
「うん、そうだよ? さあ、部屋に戻ろう」
その反対にキレたエーデルフィアが徹底的に食い掛かり、そんなエーデルフィアを優しく見つめるフォンシュベルとエイシェリナは、にこにこと笑いながらエーデルフィアの腕をつかみ、部屋へと連れて行こうとする。ちなみに、カーヴァンキスは傍観中だ。下手に手を出さぬが吉。
そして、両親に両腕をつかまれたエーデルフィアは、必死で足掻きながらも、部屋への道のりを辿っていた。……ちなみに、エーデルフィアの歩いてきた道には、エーデルフィアが引きずられたことによって土が削られている。
「おとーさん、おかーさんっ! 離せ、離してーっ!」
「エーデルフィアが先の王を探しに行かないと約束してくれたら、離してあげようね」
「ヤダ、探しに行く。このままじゃ、ウェルが死んじゃうもん」
「じゃあ離さないよ。さあ、部屋に戻ろうね」
「だから、いやだって、言ってるじゃんかっ! お父さんたちの、分からず屋っ!!」
「分からず屋で結構。エーデルフィアが先の王を諦めるためなら、お父さんたちは何だってするさ」
「鬼畜! 外道! 人でなし!!」
「何と言われてもいい。エーデルフィア、部屋に戻るよ。先の王のことは忘れなさい」
フォンシュベルは、エーデルフィアが何を言ってもとにかく手を離すことなく、とにかく急いでエーデルフィアを部屋に運んで閉じ込めようとする。閉じ込めて、先の王を忘れるように。
だが、閉じ込められたからと言って、そう簡単に諦めるエーデルフィアではなかった。エーデルフィアは、家族たちにばれないよう、こっそりと地面に穴を掘っていたのだ。自分が抜けられる程度の小さな穴で、普段はベッドなどでかくして。
そうやって何日も何日も掘り進めて、エーデルフィアはようやく外に出ることになった。閉じ込められてから数日ぶりの外。エーデルフィアはそれを満喫したかったが、そんなことをしている余裕はない。
エーデルフィアがこうやって出てきたのは、先の王、ウェイリスを探し、助けるためなのだから。
そうしてエーデルフィアは、仲良くなった人間であるウェイリスを探すために、翼を広げて大空へと舞い上がった。