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まさかの転生物語  作者:
ヒトとの関係
39/53

宣戦布告


お待たせしました、更新です。

が、こんなんでいいのかと今でも……


ので、この話はその内書き換えるかもしれません。


そのときは、前書きでお知らせします。



「この世界にいる者全てへと告げる。グラディストリ国王、ウェイリス・ジ・オルト・グラディストリの名に於いて、人ならざる者たち全てへの戦を宣言する」



 エーデルフィアの年齢が八十を越え、魔力の制御にも大体慣れた頃、突如人間からの宣戦布告が行われた。

 理由は、国王の代替わり。死した父王の後を継いで新しく国王となった若き国王は、王子の頃から何の利益も生み出さなくなったドラゴンを脅威以外、何とも思っていなかった。

 脅威は、早めに摘み取るに限る。幸い、軍事費は父王の数代前からかなりの額が溜め込まれていた。若き王はその費用を使ってドラゴンを駆逐しようと考えているのである。


 だが無論、父王の時代から仕えている臣下たちは反対した。だが、若き王は聞かず、実際に国中のドラゴンへ宣戦布告の言葉を飛ばしてしまった。そうなると、遥か昔からのドラゴンと人間の関係性は、絶たれる。

 ドラゴンは、人間と距離を置くようにはしたが、それでも人間に手を出そうとはしなかった。それが、昔の契約の一端だから。


 ―――人間を守る。


 魔物を倒すのはそのため。ドラゴンは人間を守らなくてはならない。

 だが、この瞬間にその約束は反故にされた。ドラゴンには人間に手を出すのを躊躇う必要は無くなった。

 つまり、身を守るためならば人間に手を下すことに躊躇いを感じる必要性が無くなった。


「面倒じゃ、若き王を倒す。それでよかろう」

「だな。はっきり言って、俺たちから見れば人間は羽虫同然。勝負は一瞬だろう」

「そういうことじゃ。さて、全土に伝えねばなるまいて。"面倒じゃから自己防衛以外に手を出すな"とな」



 そうして始まった人間対ドラゴンの戦。その結果は、圧倒的にドラゴンが有利だった。何と言っても、ドラゴンは強く、頑丈であり、人間と遭遇してもちょっとやそっとでは怪我もしない。

 そして逆に、ドラゴンの自己防衛のレベルの攻撃ですら人間は、その力加減によっては容易に壊れてしまう。


 それで考えれば、人間は負けを認めたほうが一番平和なはずだった。

 だが、若き王はそれをよしとせず、負けを認めるように言う臣下たちを皆手打ちにした。


「へ、陛下! どうか、どうか……!」

「うるさい! 私は王だ! 王の言うことを聞かぬものなど、みな殺してしまえばいい!」

「う、ああぁぁぁぁあ!!」


 そうして王が嘗て信頼していたはずの臣下たちは戦に反対し、皆王の手にかかり、死んでいった。そんな王の元に残ったのは、信頼の出来ない自分の利益のみを考える貴族たちのみ。

 だが、それでも王はドラゴンへの戦いをやめようとはしなかった。それが衰退の道を歩んでいっているというのに、それにも気づかずに、国庫を戦のために使っていった。


 そんな王を慕う民もおらず、真っ当な貴族も王に外面だけ頭を下げ、内面ではどうやって他国に取り入ろうか考えていた。それほどに、この国は廃れていった。

 王にドラゴンの征伐の命を出された騎士や兵士たちですらも、まともにドラゴンに攻撃を加えようとも考えなくなった。


 そして民は、謀反を考え始めた。この王が王である限り、この国に平和は訪れない、この国は廃れていくだけであると。

 それは、王以外の人間全員の意思が一致した。自分の利益のことしか考えない甘い蜜を吸うことしか考えない貴族たちすらも、王に蜜を感じなくなったのか、反逆の兆しを見せた。



 そして王は、城を出された。その後、玉座には王の一番下の弟が座り、新たな王は即座にドラゴンへの戦を止め、正式にドラゴンへと謝罪した。

 ここで、ドラゴンと人間の戦は終了する。だが、物語はこれで終わらない。



「………誰?」

「っ! 近づいちゃダメだ、こっちに来るんだ!!」


 城を出された王、いや、前王は、末弟の温情で殺されることだけは避け、ただその代わりに王都には二度と近寄らないという契約がなされた。

 そうして王都を追放された王は、ある山にいた。ドラゴンが住んでいるという山。彼は、自分の力でドラゴンを倒さんと考えていたのだ。


「見つけた、私の獲物だ……」

「……? どしたの、大丈夫?」

「近づいちゃダメだって言ってるだろう! ティア姉、エーデルフィア連れて帰って!」

「分かった! エーデルフィア、帰るよ!」


 エーデルフィアは、自分が今目の前にしている男が、この国の先の王で、自分たちに宣戦布告をしてきた人間だということは知らない。

 両親も、兄姉たちもエーデルフィアにはそれを教えなかった。まだ子供のエーデルフィアには教えたくなかったのだ。小さなうちから社会の汚いことに触れなくてもいい、そう思ったから教えなかった。だが、今は否応なく関わる羽目になっている。



「さて、どうしてこんなところにいるんだ、先の国王」

「う、うるさいぞドラゴン!」

「ドラゴンを随分と下に見ているな、先の王。脆弱な身でありながらよく言う」

「うるさい! お前たちはこの国には必要ない! だから私はっ!!」

「じゃ、死ね」


 カーヴァンキスはそう言って、冷たい目を先の王に向ける。彼は、彼の愛する弟妹たちのため、守るべき者たちのためにも先の王の存在は危険だと判断し、排除するつもりだった。

 それが、彼の大切な家族を守るためだった。それが、彼の、彼の大事な大事な一族全員を守るための行動なのだ。


「サーファ、先の王を捕獲しろ。俺が、殺す」

「あぁ。水よ、彼の者を捕らえろ!!」



 そしてカーヴァンキスは、先の王を殺すための魔法を放った。――――はずだった。


「どうして戻ってきたんだ、エーデルフィア!!」

「お兄ちゃん、人を殺そうとしちゃダメだよ!!」

「どくんだ、エーデルフィア! こいつは今のうちに殺さなくては……」

「だから、どうして!?」

「オースティア、何をしていた!? どうしてエーデルフィアを戻らせた!!」


 カーヴァンキスの放った魔法は先の王をかばうエーデルフィアに向かい、それを見たカーヴァンキスは反射的に軌道をずらし、エーデルフィアに魔法が当たらないようにした。

 そしてそのカーヴァンキスの怒りは、その原因となったエーデルフィアに向いた。


「僕たちが、何の理由もなしに殺すとでも思うのか!? 理由があるから僕たちはこいつを殺そうとしているんだ!」

「でも、何で!?」

「こいつは、先の王だ! 僕たちにいきなり宣戦布告をし、ドラゴンから平和を奪った愚者(ド阿呆)だ! 今殺しておかないと、ほかのドラゴンが被害に遭う可能性もあるんだぞ!!」

「で、でも!!」

「でもも何もない! いいからどくんだ!!」


 カーヴァンキスやサーファイルスは必死でエーデルフィアを先の王から離そうとするが、エーデルフィアは意地でも動かない。先の王にしっかりと引っ付いたままだ。


「あーっ! もう。エーデルフィアは何をしたいの? コレを殺さずに、どうするつもり?」

「こ、殺さずに……、えっと、んっと………」


 突然話を振られたエーデルフィアは焦る。止めはしたものの、この先の王をどうするのか考えてはいなかったらしい。


「エーデルフィアが考え付かないなら、僕らは竜族のために先の王を殺す」

「うえぇ!? えっと、んっと……」


 真剣に考えるエーデルフィアと、隙を見て先の王を葬ろうと考える兄たち。そこに、オースティアはいない。オースティアはエーデルフィアをつれて帰ったあとに、父に捕まり、事情を説明させられていたのだ。そしてエーデルフィアは、その隙を縫って逃げてきたのである。

 そして今のエーデルフィアは竜態。それは、先の王にとってはもっとも憎い姿であった。


「離せ、ドラゴン! その手でこの私に触れるな!!」

「うるさい! 私はあなたを死なせるつもりはないんだから黙ってて!」

「ドラゴンにかばわれ、生きながらえるなど恥だ! いいからどけ!」

「うるさいうるさいうるさい!」

「うるさいのはそちらだ! いいから離れろと言っているだろう!」

「離れたら殺されるじゃないか! 絶対に、嫌だ!」


 兄たちの見ている前で、依然として先の王とエーデルフィアの言い合いは続く。兄たちが最早放置して眠りたくなるほどにこの二人の舌戦はすごいことになっていた。


「私は、殺されてもかまわないと言っているんだ! 一矢報いるくらいのことさえ出来れば、死んだとて後悔はない!」

「そんなの私が許すもんか!」

「貴様に許されるいわれなどない!」

「ある! 殺そうとしているのはお兄ちゃんたちなんだから、私が許さないと、お兄ちゃんたちに攻撃なんてさせない!」

「ならば、私が貴様を殺してやる!!」


 先の王はそう言ってエーデルフィアに対し、剣を抜こうとするが、サーファイルスの魔法で拘束されていることを忘れていた。


「く、っそ! この拘束を解け! 殺してやる!!」

「そう言われて解く馬鹿がいるか」

「いいから解け! この赤い蜥蜴を殺してやる」

「蜥蜴? 言ってくれるじゃないか、先の王。お礼にたっぷり苦しめてやろう」


 エーデルフィアが、ひいては竜族が蜥蜴扱いをされたことに憤慨したサーファイルスは、先の王を拘束する力を急激敵に強めた。


「ぐ、あぁぁああぁぁっ!!」

「もう一度言ってみろ。僕たちドラゴンに対して、何と暴言を吐いた?」

「う、るさい、ぞっ、蜥蜴……が……」

「いい度胸だな、先の王。いっそ、このまま死ね」

「サーファお兄ちゃん!!」


 そのまま水の縄で拘束して絞め殺そうとするサーファイルスと、それをとめようと必死で兄に食いかかるエーデルフィア。


「お兄ちゃん、やめて!!」

「やめられるものか。こいつは竜族を侮辱し、殺そうとしている。今殺さなくては……」

「いーやーだー!」

「嫌も何もない! 殺す」

「じゃあせめて、お父さんたちに決めてもらってー!!」


 父であるフォンシュベルや母であるエイシェリナならば、自分の頼みは聞き入れてくれるだろう、エーデルフィアはそう考えて父たちに決定権を授けた。

 その結果、先の王はサーファイルスに拘束されたままでカーヴァンキスの背には乗せられず、水の紐で垂らされたまま、家である洞窟へと連れて行かれることになった。

 その間も、先の王がとことん抵抗していたのは言うに及ばない。


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