本来の姿
すみません、先週土曜の更新は無理でした。
長かった! とっっっっても長かったよ!!
私が不本意ながら人態を取ってから早五年。それだけの時を経て、私はようやく本来の姿であるドラゴンに戻ることが出来ていた。
いやいや、ホント、何でこんなに時間がかかったんだろうね。魔力ってこんなに回復しづらいものなの? それとも魔力の回復量に比べて、私の魔力消費量が大きすぎたのかな。
でも、やっと戻れた! ドラゴンの姿なら殆ど魔力なんて消費しないはず!
「うーん、エーデルフィアのドラゴンの姿、久しぶりで可愛いー!」
「確かに久しぶりに見ると、こう、可愛すぎて抑制が効かなくなるって言うか……、抱き締めていい?」
「俺も抱き締めよう」
「お兄ちゃんたち、いっつも抱き締めて来てるじゃん。何て今さら聞くの?」
『いや、一応』
ホント、何でいちいち確認してくるんだろうね。今まではずーっと何も確認せずに抱き締めて来てたのに。
お兄ちゃんもお姉ちゃんも大好きなんだから、寧ろ抱き締めてもらえるほうが嬉しいなぁ。
「エーデルフィアも大きくなったなぁ。人間の姿のときは小さかったけど、やっぱりドラゴンの姿になると少し大きくなるね」
「えへへー」
でも、それでもやっとお兄ちゃんたちと目線が合うくらいなんだよね。人間の姿だと相当見上げないと目線が合わないから、気分的にはこっちのほうがいいかな。
「ダメだ抑えられない可愛すぎるー!!」
お姉ちゃんはそう言って私を抱き締めた。あはは、幸せ。
「エーデルフィアもドラゴンに戻ったし、今日は久しぶりに飛んで移動して、狩りにでも行こうか」
「うん! 自分で飛ぶの久しぶりだよー!!」
お兄ちゃんナイス提案! 久しぶりに自力で飛んで狩りに行くぞー! 肉だ肉、いっぱい食べるんだー!!
と言うわけで、早く行こうか。早く狩りに行って、いっぱい捕まえよ。よくよく考えれば、魔術を使うのも久しぶりじゃん。使い方を忘れてなければいいんだけど。
「行こ! 早く行こ!!」
「こらこら、焦らないで。太陽が真上に上がったら行こうね」
くう、太陽が真上に上がるまではお家か。でも、いっか。狩りに行けるならそれでもいいや。
「それまではゆっくり休んでようね」
「体力を蓄えておかないと、飛ぶのは久しぶりだから辛いと思うよ?」
ふむふむ、確かにそうだね。なら、今はぐでぐでしておいて、体力をしっかり蓄えなくちゃ。んで、出かけていっぱい楽しむんだ!
「よーしよし、いい子だね。しっかり休んだら出かけようね」
と言うわけで、しばらく自分の部屋に戻って寝てようかな。そうすればお昼からいーっぱい楽しめるもん。
「しばらく部屋で寝てるね。お出かけする前に起こしてよ!?」
「分かってるよ。きちんと起こすから安心して」
「絶対だからね!?」
「分かってるから。だからほら、少しでも長くお休み?」
言われてしっかりと休むためにも部屋へ向かう。ぐっすり休んで、しっかりと体力を蓄えなくちゃ。
と言うわけで、しばらくの間、お休みなさーい。すぴょすぴょ。
「エーデルフィア、起きて。もうそろそろ狩りに行こうね」
「んい?」
「もう太陽が真上に上がったよ。狩り、行くんでしょ? なら起きて」
………んう? もうお昼かぁ、起きなくちゃ。狩りに行くんだから起きる。
「んうーっ!!」
起き上がり、体を伸ばす。よく寝たぁ。
「よく眠れた?」
「うん! いっぱい寝たから行こう!」
体力満タン、元気いっぱい、だから行こう!
そして私はお兄ちゃんたちと一緒に外に出た。すぐにカーヴお兄ちゃんだけがドラゴンの姿に戻る。
その後、お姉ちゃんとサーファお兄ちゃんがカーヴお兄ちゃんの背に乗って、出発! あ、ゆっくり行ってね? 早く行かれたら置いていかれちゃうもん。
「分かってるよ、ゆっくり行こうね」
そうして出発。うーん、久しぶりだとちょっと羽が動かしづらいぜ。でも、一応飛べるからそれでいい。
でも、やっぱりお兄ちゃん飛ぶの早いよぉー。
「うーん、久しぶりだから前みたいに飛べないんだな」
「久しぶり、だからね、動かしづらい、のぉ」
うん、だからアレだけで疲れちゃった。このままじゃ狩りなんて出来そうにないぜ、くそう。
「行きは頑張って自分で飛んでね。帰りは俺の背に乗って帰ろう」
「うん、そう、させてぇ……」
これだけで疲れたよ。そうしている間に、やっと狩りの場所に着いた。本当に疲れたーぁ。
「エーデルフィアはティアと一緒に、しばらく休んでなさい。サーファ、獲物を探しに行こう」
「おう。エーデルフィア、ティア姉とここにいるんだよ」
「うん、行ってらっしゃい。見つけたら教えてね」
私が言うとお兄ちゃんはにっかり笑って獲物を捜索に走る。私はお姉ちゃんの横に落ち着いてぐでっぐで。
ドラゴンの姿で外出って言うのも久しぶりだから楽しいんだよね。
「相変わらずエーデルフィアの鱗はつやつやできれいだね」
「そう? お姉ちゃんの髪もきれいだよ?」
「ふふ、ありがとエーデルフィア」
本当にお姉ちゃんの髪、きれいだよ? 元日本人の私からすれば黒や茶色じゃない髪って何か惹かれるところもあるし、それにお姉ちゃんの髪もさらさらストレートできれいだよね。
爪に気をつけながら、そっとお姉ちゃんの髪に手を伸ばす。
「やっぱり、お姉ちゃんの髪サラサラ。すっごいきれいだね」
「ふふ、エーデルフィアは可愛いんだから」
お姉ちゃんの赤い髪が風に揺れると光が反射してきれいなんだよね。お姉ちゃんの髪、好きなんだ。
「ティア姉、エーデルフィア、獲物見つけたよ。今カーヴ兄が逃がさないようにしてるから、行こうか」
「うん!」
そうしているといつの間にかサーファお兄ちゃんが獲物を見つけたと言ってやってきた。えものー!!
「こっちこっち」
そしてサーファお兄ちゃんの案内で獲物のところに向かうと、大きい獲物がいた。………じゅるり。
「さて、どう狩る?」
「燃やす?」
「水を出現させて溺れさせてもいいけど」
「風をぶつけるのもあるな。エーデルフィア、何かないのか?」
あはは……考えただけで怖くなってきた。でも、狩りはやめない! だって、生きるためだ!!
「燃やす!!」
毛先くらいを燃やして威嚇して、その後やっつける!
「よーし、じゃあ燃やそうか」
お姉ちゃんが言うと同時に、お兄ちゃんが獲物のそばで火をつける。獲物は反射的に動いた。そこに今度はお姉ちゃんが炎を投げつける。
―――って、私のやることがなくなるっ!! えいやっ!! 炎を投げつけるが、狙いが甘かったのか、外れた。
「おっと、残念。もう一発やってごらん、しっかり獲物を見てね」
「うん! ていやっ!!」
だが、またも外れた。だが、その間に逃げられると困ることが分かったらしく、お兄ちゃんたちが獲物にとどめを刺していた。
「ゴメンね、エーデルフィア。あれ、逃がしたくなかったから」
「うん、私が上手に狙えないのが悪かったんだし……」
でも悔しいものは悔しいんだよね。このままじゃ、とにかく食事の捕獲の全てがお兄ちゃんたち頼りになってしまう。やっと七十歳近くまで成長したのに、せっかく狩りが出来るくらいに成長したのに、頼りっぱなしは嫌だよ。
だが、まだ自分だけで狩りは不可能のようだ。くう、もっと成長しなくては!!
「次は一撃くらいは当てられるようになろうね」
「うん! 次こそ!!」
次こそ当てる! 次こそは私の手で仕留める!!
「さー、帰ろうね。今日もいいのは仕留められたしね」
「お父さんに美味しいの作ってもらって、次の狩りのための力にしようか」
「ついでに、いっぱい食べて魔力回復させて、人態も取れるようにしなきゃね」
あー、それもそうだね。常日頃から人態とドラゴンの姿の使い分けも出来るようになれば、お父さんやお母さんたちとお揃いだ!
「ところで、帰りは自分で飛べる? 俺の背に乗って帰る?」
「お兄ちゃんの背に乗って帰る!」
だって、来るまでに疲れたし、魔力も使ったから疲れちゃったもん。
「そうかそうか。じゃあ、俺の背に乗って」
「うん」
そしてお兄ちゃんの背に乗った私たちは洞窟に戻り、捕らえてきた獲物を見たお父さんにたっぷり喜ばれた。やったね。
…………ただそのかわりに、お母さんまで料理を始めそうな恐怖には襲われました。
「お母さん、料理しないで! 怖い、怖いって!!」
「へ? 料理? ……って、うわっ! 何やってんだ!!」
「ん? 何事?」
「どうしたのさ、エーデルフィア、カーヴ兄」
お母さん、何で台所で食材眺めてるの!? 怖いからやめてよ!!
「って、うわっ!!」
「……どうして全員そんな反応をするのよ。お母さん悲しいわ」
そりゃ決まってるよね。
『お母さんの料理は怖いから』
「まったく、失礼な子供たちね」
全員の声がしっかり揃う。その言葉に反論が飛んできたが、怖いものは怖いんだよ? だって、小さいときに間近で見て、思いっきり泣いたし。泣きながらお兄ちゃんたちのところに移動した記憶あるし。
「いやいや、自覚していないのが一番の問題ではあるんだけど」
「お母さんの料理って一種の呪いだからね?」
「並のドラゴンが食ったら死ぬぞ、多分」
「まったくもう、本当に失礼な子供たち」
いえいえお母さん、お母さんの言葉よりはお兄ちゃんたちの言葉のほうが正しいよ。間違いなく正しいよ。言葉がおかしい気もするけどそれも気にならないくらいに正しいから。
だって、あれ黒魔術じゃん。小さい頃、純粋にアレは黒魔術だと信じたよ? この世界に黒魔術なんて括りがあるのかも謎だけどね。
「んもう、少しくらいいいじゃないの」
「無理! お父さんお母さんを止めて!!」
「うん? 何なんだ、お前ら。何やってるんだ、エイシェリナ?」
「フォンシュベル、聞いてちょうだい。この子たちったら、揃いも揃って私の料理を呪い扱いするんだから!」
「エイシェリナの料理? あぁ、それは呪いではないが、確かに危険だな。だから、料理はするなと言ったろう? 昔、子供たち全員に一度は泣かれたこと、忘れたのか?」
………私が今より小さい頃だけじゃなくて、お兄ちゃんたちが小さい頃も料理しようとして泣かれたことあるんだね、お母さん。それで何で諦めないんだろう。
「料理は俺の仕事だ。エイシェリナはその分、俺の苦手な掃除や洗濯をしてくれればいいさ」
「ふふ、ありがとね、フォンシュベル。さて、あなたたち」
「だな。カーヴ、ティア、サーファ、エーデルフィアを連れて部屋に戻ってろ」
「あーはいはい。あんまり長時間にならないようにしてくれよ」
「考慮するよ」
そうやって話をしていたお母さんたちだが、突然こちらを向いて言うので何かと思った。ら! 愛のお時間ですか、もう、ラブラブだな!! まぁ、両親の仲がいいって言うのはいいんだけどね。