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まさかの転生物語  作者:
子供ドラゴン
27/53

敵との距離

 家に帰ってから、私たちはすぐに寝たのだが、………寝るまでにすっごい苦労した。

 だって、私からすれば久しぶりの人の姿だから、足が長くて歩きづらい。何度も何度も長い足を引っ掛けてこけた。

 まぁ、こける前にお兄ちゃんたちが支えてくれたけど。


「危ないなぁ、エーデルフィアは魔力が馴染んだら歩く練習をしなくちゃね」

「うん………、って、きゃうっ!」


 うーむ、何回も何回もこけちゃうよぅ。歩くのってこんなに難しかったかな。


「よし、部屋に着いたね。後は一緒に寝ようか」

「ゆっくり寝てなさいね。あぁ、カーヴもティアも首にしっかりとロープの痕がついて……、辛かったでしょう?」

「エーデルフィアの首にもロープでこすった痕があるね、可哀想に。サーファも、ティアもカーヴも、手足にロープで縛られた痕がくっきり……。――――どうやって殺そうか」


 いやん、お父さんの台詞が怖いわー。でも、今は眠たくて考えるのも無理そうー。ゴメン、まだベッドに上がってないけど寝るねー?

 ごめん、おやすみ、なさぁい。………ぐぅ。


 *****


「エーデルフィアは寝たようだな」

「うん、寝ちゃったね。寝かそうか」

「お前たちも休みなさい。お父さんは、じいちゃんと王都に行って来るからな。あぁ、ここにはばあちゃんにもいてもらう、だから安全だ」


 フォンシュベルとジャニストリスは、そう言った後、エーデルフィアの頭を一撫でし、そしてほかの子供たちを一度抱きしめて出て行く。

 フォンシュベルとジャニストリスの目的は、もちろんこの日のカーヴたち四人が人間たちに襲われ、殺されかけた件だ。


「父さん、少し飛ばすか。早く、あいつ等を殺してしまいたい」

「それには俺も参加したいが、話を全て聞きだすまでは待て、いいな?」

「耐えるが、抑えきれなければ、もうかまわないだろう?」

「そのときは、な」


 そうして二人は、話をしながらも飛び進み続けている。


「しかし、エーデルフィアは大丈夫なのか?」

「……確かに、六十代で人態を取ったのは、エーデルフィアが初めてだろう。―――この件も長老に尋ねなくては」


 全ては可愛い子供たちのために。愛する自分たちの子のために。


「もう少し、急げるか?」

「あぁ。お前と、可愛い孫のためだ」



 そうして王都によって長老や各村の代表たちとで話し合った結果、人間の処分は、まずは、この国の国王に忠告、そして最終的な手段はフォンシュベルたちに任されることになった。

 そして、この話し合いで決まったことがもう一つあった。



 ―――我々竜族は、安全を確認できるまで人間と距離を置くことにする。


 *****


 んう? あたり、ちょっと暗くなりかけてる? ご飯はもうすぐかな。とりあえず、起きてお父さんたちのところに行こう…………、べしゃり。うぅ、こけた。


「あ、目が覚めた? 大丈夫?」

「ふえ? おにーちゃん、おねーちゃん」

「大丈夫? 盛大に転んでたね。人間の肌は脆いからね。怪我とかはしていない? ……あぁ、擦りむいてるね、洗いに行こうね」


 言われて体中を眺める。あ、膝を擦りむいてるのか。通りで何かずきずきするな、と。


「抱き上げるね。洗わないとそこから菌が入って、ずっと痛いのが続いちゃうから」

「うん、お願いお兄ちゃん」


 そうして私はお兄ちゃんに抱き上げられ、擦りむいた足を洗いに向かう。うん、自覚したら痛いね。ずきずきする。

 っていうか、こういう風な傷、擦りむいたりするのって転生してから初めてだから予想以上に痛いな。


「あ、あうあうあうあう」

「あぁ、痛いんだね。でも、洗うともっと痛いよ?」

「でも、そうしないと治るのが遅くなる、というか下手をすればひどくなるからね」

「だから我慢するんだよ?」


 出来るよ! 私をいくつの子供だと思ってるの!?

 ―――……って、結構痛いぃぃぃぃ!!!


「ぴゃうっ!!」

「あぁ、痛いよね。でも、もう少し我慢してね」


 うーむ、久しぶりの怪我の痛みは危険だった。いや、正確には怪我の消毒の痛みがきつかった。

 とりあえず今は、痛みを飛ばすためにもお兄ちゃんたちに甘えよう。


「おにーちゃん、おねーちゃん」


 ………べしゃ。駆け寄ろうとして、またこけた。いや、私ヘボくない?


「うーん、早く歩く練習をするべきかな」

「だね。こけても大丈夫なところに今度連れて行って、練習させよっか」


 お兄ちゃんやお姉ちゃんは、そう言いながら私を抱き上げてくれた。

 ねぇお姉ちゃん、こけても大丈夫なところって、どんなところ? 尋ねると頭を撫でられました。


「草がいっぱい生えてるところ。そこなら、転んでも草が守ってくれるからね」

「だから、しばらくはエーデルフィアは、自分で歩かないでね? それか、壁に手をついて、それで歩いてね」

「うん」


 また転んで、こうやって擦りむくのはイヤだしね。転んで擦りむくのも地味に痛いし、傷口を洗うのが一番痛い!!

 ので、どこかに行きたいときは、お兄ちゃんたちに甘えて運んでもらうか、這い蹲って進むか、壁に手をつきながら頑張って歩くよ。


 そうやって考えていると、私を心配してくれたのか、お母さんとばあちゃんが様子を見に来た。


「大丈夫? エーデルフィア」

「どうしたの? 擦りむきでもしたかい?」

「って、本当に擦りむいてる。どうしたの? 転んだ? 何して転んだの?」


 お母さん、質問尽くしだよ。


「普通に歩こうとして、上手に歩けなくて転んだー。おかーさーん」


 とりあえず、抱かれたままでお母さんの方に手を伸ばす。すると、お兄ちゃんお姉ちゃんは察してくれたのか、私をお母さんに手渡した。


「エーデルフィア、大丈夫? そして、カーヴたちも平気? 一応休んでなさいね」

「大丈夫だよ、俺はさ」

「私も平気。寧ろ、エーデルフィアが心配だよ」

「俺も平気だからさ。だから、お母さんはエーデルフィアと一緒にいてやって」


 え? お兄ちゃんたち本当に平気? 特に、カーヴお兄ちゃんとサーファお姉ちゃん、首絞まってたよね? 平気? 本当に平気なの?


「大丈夫だから安心してね、エーデルフィア」

「本当に平気? 大丈夫?」

「だーいじょうぶ。寧ろ、エーデルフィアのほうが、まだ魔力の減り方が恐ろしいはずだから辛いでしょ」


 うーん、どういうのが辛いって言うのか分かんないよ。とりあえず今は、転んで擦りむいた傷が痛いから、とにかくお母さんに甘えておきたいかなって。

 ので、お母さんに抱かれた状態でとにかく甘える。すりすりすりすり、甘えに甘える。


「よしよし、怖かったでしょ。いーっぱい甘えていいからね」

「なら、カーヴたちはばあちゃんに甘えるかい? 今日はとにかく、可愛がってあげよう」

「ばあちゃんの可愛がるは怖いんだよ」

「うん、怖いわ」

「怖いな」

「おかーさーん」


 なんだろうね、この拒否と甘えの声。お兄ちゃんたちは徹底的に拒否してるし、私はお母さんに甘えまくる。


「お義母さん、カーヴたちが嫌がってるから」

「まったく、失礼な子供たちだ」


 しかし、お母さんに抱かれてると、私の小ささがよく分かるな。お母さんたちの身長はよく分からないけど、それにしても私との身長差が、ドラゴンのとき以上に顕著になっているようだ。

 だって、だって!! 相当見上げないとお母さんの顔、見えないんだよ? 今は抱っこしてもらってるから見やすくていいんだけどさ。


「ばあちゃんのところにもおいで、エーデルフィア」

「あら、行く? 行っておいで」


 お母さんが裏切った!! お母さんは私を抱いたままばあちゃんに差し出す。……逃げろっ!! ………こけた。


「危ないわねぇ、無理しないの」

「ぎにゃー!!」


 こけたところでばあちゃんに抱き上げられた。―――奇声を発してしまいました。


「んもう、どうしてそんなに嫌がるの」

「だって、ばあちゃん怖いもん! お兄ちゃん、お姉ちゃん助けてぇ!」

「ばあちゃん、エーデルフィア貸して。ほら、おいでエーデルフィア」


 助けを求めると、お兄ちゃんたちはばあちゃんに言って私を受け取った。ううう、怖かったよぅ。


「カーヴ、あなたの部屋か、ティアの部屋でみんなで寝てなさい。今日は相当辛かったでしょうから、ちゃんと休みなさいね」

「平気だってのに」

「いいから休んでなさい。エーデルフィア、しっかり休みなさいね?」

「うん! おかーさんおやすみー」


 お兄ちゃんに抱っこしてもらってそのままカーヴお兄ちゃんではなく、ティアおねえちゃんの部屋へ向かった。うん、寝ようか。

 そうして、私はお姉ちゃんの腕に自分の両腕を巻きつけて、しっかりと引っ付いて眠った。


*****


「ただいま」

「お帰りなさい、フォンシュベル。エーデルフィアのことは……」

「やはり、こんなに早く人態を取ったのはエーデルフィアが初めてらしい。前例が無いんだ。

 長老曰く、よほど辛かったのか、よっぽど強く願ったのか、それで人態を取ったのだろうと。そして、こんなに早く人態を取った分、どこかでしっぺ返しもあるかもしれないとのことだ。

 これからは、今まで以上にエーデルフィアのことを気にかけておかなくてはならないだろうな」

「えぇ、そうね」


*****


「ふふ、全員こうやっているとまだまだ小さな子供だな」

「あら、私たちから見れば、全員まだ小さな子供でしょうに」

「ふみゃ?」


 何か声が聞こえたよ? お父さん、帰って来たのかな。とりあえずお姉ちゃんからは離れずに、目を開ける。


「おっと、起こしたか? すまない」

「おとーさんお帰りー」

「ただいまエーデルフィア。調子はどうだ? 頭がクラクラしたりしないか?」

「だいじょうぶだよー。平気平気」


 全然頭がクラクラなんてしないよ? 元気いっぱいだから、お父さんに甘えに行こう。そう思ってお姉ちゃんの腕にまわしていた腕を取り、立たずにお父さんのそばに向かう。


「よしよし、調子は悪くないようでよかったよ」


 お父さんはそう言って私を抱いて、膝に乗せてくれる。………ダメだ、お父さんとの身長さも気になってしまうぞ。


「とにかく、様子見だな」


 お父さんは小さく呟く。が、私には何と言ったのか聞き取れなかった。お父さんに問いかけてみても何も言っていないとしか言わない。むー、気になるよー。


「エーデルフィアは気にしなくてもいいさ」


 そうしていると、さっきまで眠っていたお兄ちゃんたちも起きだした。

 そしてそこで、お父さんが衝撃の告白をしてきた。



「今後竜族は、人間たちと距離を置くことになった」


 その原因は、私。

 私の不始末で、こんな目に遭った。

 私が悪かったんだ。



 私が、何もかも悪いんだ―――。



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