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まさかの転生物語  作者:
子供ドラゴン
20/53

初陣です

結構残酷な描写があります。

ご注意ください。


 初陣です、怖いです。

 どうしてあの時寝てしまったのでしょう、後悔するばかりです。


 ―――今、私の目の前には大きな魔物がいます。しかも複数体。


「うむ、ちょうどいい魔物(バカ)がいるな。さぁエーデルフィア、倒してしまおうか」


 ちょ、お父さん!? お父さんの中で魔物はバカと読むんですか!? しかも、さらっと言われても無理だから!!


「ヤダ! 怖い、帰るー!」

「……帰れるの?」

「ここがどこか、分かってる?」

「帰る途中で襲われたらどうするの?」

「ふえー! お兄ちゃんたちのいじわるー!」


 正論をさらっと言いまくるなー! くそう、やってやる、やってやらー!!


「カーヴ、エーデルフィアと一緒にいて。お母さんたちはほかのをやっつけてくるから。エーデルフィア、何かあったらカーヴが守ってくれるけど、エーデルフィアが、この魔物を倒すんだからね?」

「うぅ……、が、頑張る!」

「大丈夫、この魔物は弱いから。落ち着いて魔術を使えば簡単に倒せちゃうよ」


 でも、でもね? この大きな魔物を目の前に、冷静に魔術を使えるかどうかって言うのが一番の問題だと思うんだ。今の時点でかなり怖いんだ。逃げたいんだ。


「おっと。ほら、早くしないと何回も襲われるよ?」


 お兄ちゃんはそう言いながら私目掛けて飛びついてきた魔物を軽く風の魔術で引き剥がす。うぅ、怖い。

 ちなみに、お父さんたちはこれ以外のほかの魔物の殲滅に励んでいるとのこと。どおりでさっきから爆発音とか悲鳴が………。


「んー、お父さんたちもやってるなー。あれだけやれとは言わないから、こいつだけは倒そうなー」


 お兄ちゃんはニコニコと微笑みながら告げる。が、すぐに表情を消してまっすぐに私を見た。


「いいか、エーデルフィア。魔物は、敵だ。魔物を倒すことは、竜神として生きている俺たちの義務だ。人間に害を成す魔物を倒すから、俺たちは竜神として国に祀られる、人間と共存している。それが、長老たち、年寄りたちの意思だ」

「うん?」

「覚えておくんだ、エーデルフィア。これは、俺たちがやらなくてはならない、義務だ」


 魔物を、倒さなくてはならない。自分たちが何かをされたわけじゃないのに、人間が安全に暮らして生きたいがために、私たちは魔物を屠らなくてはならない。

 ―――自分たちのためではなく、人間たちが生きるために。


「ねぇ、お兄ちゃん。何で、人間たちにそこまで尽くすの?」

「尽くしてなんかいないさ。ただ、俺たちが安全に生きるための契約だって、俺は長老に聞いてるよ」

「けいやく?」

「そう。人間と長老が昔、交わした約束だ。つまり、人間が俺たちドラゴンに手を出さない、ドラゴンが人間に手を出さないという約束だ」


 つまり、互いに手を出さず、平和に過ごすための約束か。


 そのために人間に課せられたものが、私たちの生活の保障。

 私たちドラゴンに課せられたものが、人間の安全な生活のための魔物退治というわけか。


「考えないで。考えないほうが平和に生きていけるから」

「う……うん…………」

「ほら、倒しに行こうか。エーデルフィアなら、燃やすのが一番簡単で効率的かな」


 燃やす、かぁ。確かに私の場合はそれが一番やりやすいかな。





 ――――ゴメン、魔物さん。今から燃やすね。命を、奪うね。


 ぼぅっという音と共に、目の前の魔物が燃え上がった。私の放った火の魔術が働いたのだ。


「よし、初陣完了。よく頑張ったね」

「うん………」


 何か感情が追いつかない。生きるためだとは言えど、私は魔物の命を奪った。奪ってしまった。

 私が、自分の意思で火の魔術を行使して命を奪ってしまった。


「よしよし、よく頑張った。甘えていいよ」


 お兄ちゃんはそう言って私を抱きしめる。……うん、甘えさせて。いっぱい甘えさせて。罪悪感がヤバイから、もっと、もっと甘えさせて――。

 ぎゅうっとお兄ちゃんに抱きつく。甘えるために、徹底的に抱きつく。


「おっと、まだいたのか」

「ふえ?」


 まだいた? って、お兄ちゃんの見ている方向を見ると、その魔物には穴が開いて、そこから血がぴゅーぴゅーと溢れていた。――グロテスク。

 曰く、水を結集させて魔物に放ったとのこと。グロテスクなことをにっこり微笑みながら言わないで!


「さ、お父さんたちと合流しようか」

「うん」


 魔物退治なんてもう二度と来なくていいよ。怖いからいいよ。今はとにかく甘えたい。



「おかーさん!」

「エーデルフィア! よく頑張ったわ!」


 お母さんたちと合流した瞬間に、私はカーヴお兄ちゃんの腕から抜け出してお母さんに飛びついた。

 怖かったよぅ、怖かったよぅ。……私、命を奪っちゃったよ――。


「うん、怖かったね、怖かったよね。でも、竜神としての責務は……」


 お母さんが何か言ってる。……でも、お母さんに抱かれている気持ちよさと、精神的、肉体的疲労に襲われてる私には聞こえないよ。

 だって、だってね? もう、眠たいの………。


「いいよ、眠りなさい。疲れたんだろう、休みなさい」


 お父さんがそう言いながら頭を撫でてくれる。気持ちいい、優しい――。


 ―――おやすみなさい。




「……が、……………ア? ……いい」

「しっ。……る……らさわ………な」

「んぅ……?」

「あぁ、起こしてしまったか、すまないエーデルフィア」


 あれ? お父さんとお母さん……と誰?


「初めまして、エーデルフィア。私はユフィネス。あなたのお父さんの妹」

「あ、起きたのエーデルフィア? 大丈夫?」

「おにーちゃん、おねーちゃん!」

「ユフィー、自己紹介したの?」

「したした。ティア、あんた、サーファのときと言うこと同じね」

「だって、ユフィーってそういうの面倒くさがりそうなんだもん」

「あーもう。じゃああんたたちの前でもう一回するから。エーデルフィア、私はユフィネス。あの子達みたいにユフィーって呼んでね」

「ゆふぃー、さん?」

「ユフィー。さんはいらない」


 ……やっと寝惚けてた頭が覚めて来た。つまり、この人が、このさん付けを拒むこの人がお父さんの妹で、私たちのおばさんということか。……お父さんたち曰く、怖がりの。


「あー! 可愛い、可愛すぎる! やっぱり子供っていいよねー」

「なら、カイルスともっと頑張れよ。頑張れば出来るだろ?」

「頑張ってるんだけど、生まれないんだよねー」


 ユフィーはそう言いながら私を抱いて、撫でてを繰り返している。これを見ていると、本当に子供が好きなんだということは分かるのだが、ちょっと、干渉がきつくないか?

 あ、カイルスって言うのはユフィーの旦那さん、つまり、おじさんの名前らしいです。


「どうやったら義姉さんみたいにそんなに生めるの? 私も子供欲しいー。ねー、カイルスぅ」

「おいおい、義兄さんの前でそんな甘えた目で見ないでくれよ……。抑えられないじゃないか」


 !?!? カイルスさんは甘えた目で見つめてきたユフィーを押し倒した。見ない見ない。見てはいけない。こういうのは退室しなくては……。


「はい、おいでエーデルフィア。このバカ夫婦の邪魔は止めておこうな」

「あー、ゴメンねー。しばらく二人っきりにしてねー」


 ユフィーはニコニコと微笑みながら言い、それを見たお父さんたちは溜め息をつき、私を抱き上げてさっきの部屋から出る。そのあとにユフィーの甘い声が聞こえたのは、聞こえなかったことにした。

 ……てか、ここはどこ? 眠っている間に結構移動していたようだ。さっき魔物を退治した森が全く見えない。つまり、町も結構違うのか?


「とりあえず、夜まではあの二人は子作りに専念するだろうし、町を見に行くか。そうしよう、エーデルフィア?」


 うん? 決定権は私? なら、決まってるじゃないですか。

 ………子作りという言葉は聞かなかったことにして。


「うん、行ってみたいー」

「よーし、今日はみんないるから何があっても安全だからな」

「今日はエーデルフィアは頑張ったし、ご褒美に、欲しいのがあったら買ってあげましょう」


 それは嬉しい! でも、その言葉は否が応にも思い出してしまう、命を奪ったときのあの感覚を。

 あの時、慣れた火の魔術は、そこまで強く念じなくても私の意思を汲んでくれた。簡単に、あの魔物を燃やした。

 そう、私は簡単に(・・・)あの魔物の命を奪ってしまった、奪えてしまった。

 簡単に、容易に命を奪うことが出来る。それが、私がもう人間ではないことを実感させた。


 私は、ドラゴン。人間であったのは遠い過去。

 今の私は、人間なんかじゃない。考えを改めなくちゃいけない。

 私は、ドラゴン。火の加護を受けた、真っ赤なドラゴンだ。


 ドラゴンだから、魔術を使える。

 ドラゴンだから、人間を守るために魔物を屠らなくてはならない。

 それが、遠い昔にドラゴンと人間がした、契約。


 ―――契約は、破られてはならない。



「あー、これはダメだね。ユフィー、部屋貸してー」

「へ?」

「今日はもう町なんて行かないほうがいいでしょ。今日はみんなで一緒にいようね」


 え? 何で? え? えぇ?


「エーデルフィアは優しいね。魔物にあんなに心を痛めることが出来る、いい子だね」

「本当だよ。どうして、そこまで心を痛めることが出来るのか、私は分かんない。私は、そこまで思えない」

「こればかりは、生まれ持ったものだろうな。確かにエーデルフィアは優しい。だが、その優しさがこの子を苦しめることもあるだろう。お父さんは、それを思うと一番辛い」

「お母さんもそう。優しすぎるの、この子は。魔物は敵、倒すべきモノ。それでいいのに、この子の中では違うから」


 確かに、そういう認識が一番やりやすいんだろうね。でも、無理なんだ。どうしても、魔物も生きているのだからと、理性(?)が働いてしまう。

 ―――殺すことを、躊躇ってしまうんだ。

 本能は殺せと訴える。でも、私の中の心は、生きているのだから殺してはいけないと訴えてくるんだ。


「だから、エーデルフィア。君はずっと俺たちと一緒にいよう。俺たちが守る、何があっても」

「守る。絶対に、私たちが守るから――」

「俺たちの可愛い妹。小さな小さな、最年少のドラゴン」



 ――君は、一生守ってあげる。守ってみせる。

 ――だから、一緒に生きていよう? 離れないでいよう?

 ――失いたくない、なら、離さなければいい。だから、一緒にいよう。



 ―――俺たちのエーデルフィア。君は一生、俺たちと共に―――。



ここまで暗い話にするつもりはなかったんですが、ね


やっぱり命の尊さとかを考えさせるべきかと

考えていたらこんなに暗い話になりました


次からは明るめに、頑張ります!!


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