7品目
私は一体何のために生まれたのだろうか、答えはわからない。雨が私の体を強く打っている、耳の中に入ってくる生ぬるい水が不愉快だ。
横になった視界に先ほどまで共に暮らしていた友の骸が映る、どうして私は死ねないのだろうか。いや、理由は分かる、今口の中で噛んでいる友の肉が、血が、私を生かしているのだろう。
死にたいと思いながら絶対に死にたくないと思うこの矛盾、冷たい石畳のベットに対する憤り、何もしたくない虚無感。暗く明かりもない路地裏に力なく横たわる私は果てしなく情けなく虚しく本当に死んでしまいたかった。
どれほど時が経ったのだろうか、それほどでもなかった気がするが、雨も過ぎて綺麗な空と太陽が私を嘲笑いに来たときその光を遮る奴がいた。正直死んで欲しかったけどよく見るとそれは白い服を着てクソ神様に服するペンダントを下げた女だった、私はさらに気分が悪くなった。
「ちょっとあなた大丈夫!?」
そいつが私を抱えるとそいつの服から焼いたパンと花の香りするのが当然腹立たしくなったがそんなことを言う気力も失せていたのでさっさとどこかに行ってくれと考えていると。
「助けなきゃ」
止めてくれ。そう言いたかったけれど面倒で、それでもって若干あった死への恐怖からそれを言えなかった、そいつは私を抱えるとみすぼらしい教会へ連れて行った。
「・・・」
暖かい光がずぶ濡れの私を暖める。
雨で幾分かは汚れは取れていたがまだ汚らしい髪を私とは比べることが出来ないほど美しい人が柔らかいタオルで水分と共に汚れをふき取ってくれている。
「大丈夫?」
涙が溢れて止まらなかった、声にならない声で何度も首を振る。
「もう大丈夫だからね」
彼女はそう言って私を抱きしめた、強くてその手は外せなかったけれども私は一つ強く願った。
――神よ早く私を殺してくれ――
彼女の胸にかかる神の証が憎らしかったのを暖炉で燃える火と共に今も鮮明に覚えている。