三品目
あの後店から強引に連れ出された私は今とても混乱している。
「えっとぉ……なぜこんなところに?」
城だ、私の目の前にあるのはこの国の城だ……あの後騎士に連れられて来たら何故かこんなところに、なんだ?ふざけてんのか?
「何故って、ここに僕は勤めてるからね、これからよろしく頼むよ」
城を背に私に笑いかける赤色の騎士、ちょっと殺意が湧いたのは内緒だ。
そし私は決意した、こいついつか殺したる。
あれから一週間ほどたって赤色の騎士の稽古とか日常風景を見てたんだけど。
殺してやるとか思い立ったのですが、訂正する、無理だわあきらめる。
私は赤色の騎士、ジェイドって名前なんだけど、ジェイド様の御傍付としてメイドをやってんだけど……
「強すぎて勝てないだろ常識的に考えて」
そう、強すぎるのだ、さっすが王国守護騎士隊長マジパネェッス!
魔法を使えば三人倒れ剣を振れば二人倒れる、なにそれ怖いんだけど。
だからこいつを殺すのはあきらめた、盗むだけ盗んで他国にでも逃げることにする。
「さっきから何ぶつぶつ言ってんだい?」
「いえ何でもないですよ?ジェイド様、汗臭いので近づかないでください」
訓練が終わり汗だくの気持ち悪い男が近づいてきたのでタオルと水の入った小樽とお昼の分のお弁当を投げ渡す。
「ひどいなぁ、リアンは」
「気持ち悪いのは本当ですから」
「まったく……スゥー」
タオルで汗を拭くのかと思ってたらそのタオルを顔にくっつけて深呼吸し始めるジェイド様。
「………何してんですか?」
「リアンの匂いを――」
「きもっ!?やめてくださいよ!」
前世が男とか女とかそういうのじゃなくて本当に鳥肌が立った、冗談っていうのは分かってるけど……
っていうかたぶんお日様の匂いしかしないと思うんですけど。
「冗談だよ、冷たくて気持ちいなぁって思って」
「ずっと日陰にいましたからね」
こんな炎天下に外で走れるお前らの根性とガッツとやる気が凄いとしか言いようがないよ。
「ふーん」
汗を拭き終わりタオルと空の小樽を回収してその場を去ろうとする。
「なるほど、ね!」
私が後ろを見せているからと言って油断しているとお思いですか?残念ながらそこはすでに解析の魔法の範囲内ですよ。
私を汗臭い体で抱きしめようとしているジェイド様の手の範囲からギリギリ避ける、本当は足でにやけた顔を蹴り飛ばしたいが、前にやったら足ごと吊り上げられたので遠慮する、あの時の屈辱は今でも忘れません。
「……まったく、どんな手品を使っているか教えて欲しいものだな」
「教えませんとも、ええ、教えませんよ、では私は仕事がありますのでさようなら」
少なくともエアハグをしているような奇人変人いは絶対にな。
それ以上この場にいても仕方がないのですぐに離れる、私はご主人の食事やら部屋の掃除やらで忙しいんですよ。
行ってしまったか……
しばらく悲しみのあまりエアハグから元の状態に戻れないジェイドであったが。
「隊長、何やってんすか」
「副隊長、これは悲しみのポーズだ」
愛を理解してもらえない俺の悲しみのポーズだ。
「はぁ、こいつ何とかしなくちゃ」
頭を抱えて悩む副隊長、どうした頭痛いのか?
「ところで何か用かね?副隊長」
「いや、隊長の所に来たあの子、いい目してますよね」
「そうだな」
彼女の目は何時もギラギラしている、常に求めている、そんな目に俺は惚れてしまった。
そして強引に俺の傍付の侍従にしてしまって色々と周りには迷惑をかけた。
「やらんぞ?」
「いりませんよ、隙を見せたら喉笛を噛み千切られそうです」
「ははっ、そうかそうか」
彼女はそこまで悪人ではないと思うがな。
※悪人です、いい人なんかになりませんしこれからもそんな予定はありません。
「死ね!死ね!糞!ロリコン!汗臭い!おらあああ!」
水と洗濯板でさっき渡された汗臭いタオルを洗う、薬草で油のぬるぬるが取れると思うなよおらあああああああ!!
泡が激しくたちジェイド様の汚い汗を水に浮かべさせることに成功する。
「はぁはぁ」
しかしまだ終わりではない、このままでは薬草の匂いが残る、ご主人は奇人変人でも地位だけは高いので薬草なんて庶民な匂いをつけさせるわけにはいかない。
「そんなに匂いが嫌なら自分で香水しろいつか殺してやるわ!こらあああ!!」
匂い付きの白い粉を少量塗して綺麗な水の中でごしごし洗う、憎しみを込めて。
「ここか!?ここがええんか!?ほらほらほら!言ってみろよ!気持ちいですってなああ!」
そしていい匂いになった服たちを誰の目もつかないところで干してこの作業は終わる。
「ふぅ」
ストレスを発散して洗濯物を籠に入れて後ろを見ると目を丸くした赤色、いや緋色の髪と瞳を持つ少年が立っていた。
「………」
「………何処から見てた?」
「死ね死ね糞ロリコン―――」
「うわあああああああああ!!」
つまり最初っからじゃねえかあああ!!
「君たしかジェイドの所の御傍付き侍従だったよね?」
こんなことがジェイド様の耳に届くとこれを口実に何されるかわかったもんじゃない。
「仕方ない殺すか」
坊主ー、世の中にはな?そんなこと屁にも思わないような奴が多いんだぜ?
「ええ!?」
「大丈夫だ、安心しろ痛くないから」
解析の魔法を使って辺りに俺と彼しかいないことを確認して笑顔で彼に近づく。
「大丈夫じゃないし安心できないよ!?やめてよ!どうしてこっちに近づいてくるの!?」
「逃げるなよ坊主………そっちは壁だぜ?」
今頃気づいたか坊主、お昼のこの頃はここには誰もいないんだぜ?
「ひっ、待って!誰にも言わないから!」
「信じんな、そんなこと」
一歩少年に近づく、少年の顔が青ざめる。
「本当だよ!誰にも言わないから!」
「そんなことより殺してしまったほうが楽だな」
ますます青ざめる少年とあと数歩で正面に立てる俺。
「金貨一枚でどう!?」
「仕方ないそれで許してやろう」
金の力には勝てないからな。
「よ、よかったよぉ~」
へにゃへにゃとなってへたり込む少年。
「まったく根性が足らんな」
「どの口がそれを言うかなぁ、ほんと」
とりあえず懐をまさぐり財布を見つけると中から金貨一枚を取出し、ってこいつ財布に金貨五枚も入ってんのかよ、ブルジョワめ。
「じゃあ俺はこの辺で、誰かに今日のことを喋ったら七代先とは言わずに今代で根絶やしにしてやる」
「う、うん!誰にも言わないよ!」
ふひひ、金貨一枚だなんてラッキー。
そそくさと俺は仕事場に戻った。
「怖かったぁ……」
ちびりそうになったよ、あのお姉さん怖すぎ。
「でも」
怖かったが、不思議ともう一度会いたいと少年は思った、きっと明日もここに来るだろうと思い、少年は誓う。
「あの子と友達になって見せる!」
そう決めた少年は緋色の髪と目の持ち主、皇族の証である緋色の持ち主であった。
少女は気づかない、自分がとんでもない事をしでかしてしまったことに。
「後悔なんてねーし、反省もしねーしー」
いまだ気づかない少女は食事の支度が遅れてジェイドに小言を言われていた、ついでにお尻を触ろうとする変態を撃退していた。
まあ、気づかないほうが幸せかもしれないが。
財布112000G→121800G
生活費は一日33Gほどだから、物価は超安いことになります、一年で12000Gとか少なすぎましたね、すいません。
いい感じにできないものか思索中、DQって物価高いよね宿代の割には。