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愛着  作者: 長野 創
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大学で付き合い始めたゆりと優斗。

優斗がワーキングホリデーに行くことをきっかけに、二人は遠距離恋愛になる。

二人はお互いに思いあっていたはずなのに、遠距離恋愛を通し二人の間にあった問題が浮き彫りになっていく。年齢を重ねていく二人は、その問題を直視しなければいけないだけではなかった。

不安、寂しさ、遠距離では埋められない感情は二人の仲に着実に亀裂を入れていく。


お互いのことは好きでも、それだけで一緒にいられるわけではないのかもしれない。お互い思いあっていても、裏切ってしまうことはあるのかもしれない。将来の苦難やお互いの裏切りに苦悩する二人はどんな結論に至るのだろうか。                                      

胸が張り裂けそうに痛い。

いや、物理的に痛いわけではないが苦しい、どうすればこの苦しみから逃げられるのだろうか。



ーーーーーーーーーーーーーー



「じゃあ、付き合いますか?」

「、、、はい、そういうことで、」


私たちの始まりはいかにも不器用だった。

お互い恋愛経験が豊富だったわけではない二人、特に私は、年齢相応とは思えない何とも格好のつかない始まり方をした。


もともとの始まりは、大学の授業で一緒になったことだ。違う学部でそれまで見たこともなかった彼女と大学3年生になって出会うなんて奇跡のようだった。その時から彼女は綺麗だった。


彼女に出会った当初、私には別の彼女がいた。その時は気づかなかったがお互い都合がよかっただけの関係だった。そんなこと本当はわかっていた。当時の自分も魅力的な人間とは思えない、人の後ろ指を指せないような男だった。なのに、大学3年生の最後、その元彼女がわずか3か月で私のもとを離れたときは、今までにないほど傷ついた。何もかもが手につかない。その、なにも手につかない自分を見て自己嫌悪に陥る。ドツボにはまっていた。


それから半年、久しぶりに授業で一緒になった彼女、ユリを思い出しふと連絡を取ってみた。元カノと別れてから自分を取り戻してそろそろ前進しなければ、という多少不純な動機もあった。

これが思いもよらず吉と出た。彼女は約半年の留学のため休学中、大学院への進学を考えていた私も就職活動を熱心に行っていたわけではないため自ずと二人で遊ぶ機会が何回かできた。

少しいいイタリアンを食べに行ったり、二人で飲んだり、ただの散歩や線香花火なんかも楽しんだ。

しかしそこで彼女はフランスへと留学に行ってしまう。お互い意識し始め魅力的に感じているのに離れてしまう。だから次帰ってきたら、また会って今度こそ付き合いたい、その一心で彼女と連絡を取り続けた。


留学が始まって4か月、もうすぐ彼女の日本帰国も見えてきたときに突然彼女が口にした。


「私、森さんのことが好き、なんです」


予想外だった。お互い好意は合ったものの日本とフランスという遠距離でそんなことを告白されるとは。


「えっと、、、私もゆりさんのこと、いいと思ってます。それで、好きというのは付き合いたい、的な?」

「すみません、自分でもただこの気持ちを伝えたいという気持ちでいっぱいで」


我ながら付き合いたい的な?ってなんだよと自分で思い返してツッコんでしまう。しかも彼女に見事に先を越されてしまった。何とも情けない。


「じゃあ、付き合いますか?」

「、、、はい、そういうことで、」

「よろしくお願いします」

「こちらこそ、」


超遠距離から始まる二人の恋愛。こんなこともあるのか、と呆気にとられてしまう。


2か月後、ゆりが帰国し二人の距離は急速に縮まっていく。会えなかった期間を取り戻すように、私も無事に大学院への進学が決まり、彼女も二人がいた名古屋から遠方ではあるが就職が決まり、二人の愛を深める時間が続いた。このまま続く、もちろん、二人で乗り越えなければいけない山はあるだろうが、一緒に乗り越え二人で将来を開いていきたかった。

そして二人の関係に自信もあったからこそ、私は大学院の間に1年間海外にワーキングホリデーに行くことに決めた。もともと行きたかったがコロナウイルスの蔓延でタイミングを失っていた夢だった。

それに彼女のおかげで何かに挑戦する勇気や自信が湧いてきたことも一つの要因だった。

これが不格好な二人の関係をこじらせることになった。

いや、今まで直視できていなかった問題を顕在化させただけなのかもしれない。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



大学に入学してからは初めて彼氏ができた。森優斗(もりゆうと)、今彼はワーキングホリデーを目前にしている。私は就職して1か月、彼の行くオーストラリアと日本の遠距離になる前に、彼は私のもとを訪れて時間を惜しむように一緒に過ごしている。


私たちの始まりは少し変わっている。私はもともと直情的で自分の意見や気持ちを隠すことが苦手だ。だからフランスへの留学中という遠距離中に彼に気持ちを打ち明けてしまった。それが功を奏して今付き合えているのだから自分のこの性格に感謝すべきだと思うし、それを彼が素直に受け止めてくれたことも付き合えている理由ではあるが、何とも変わった始まり方だとは思う。


付き合い始めてもう1年になる。その間、彼とは時間の許す限り一緒にいた。付き合い始めは特にお互いに慣れていないから価値観のすり合わせなどあったが、大学生の時は家の近い彼とは頻繁に会えた。それに、優しい彼の性格や私に向けてくれる眼差しに愛を感じる。正直、私は彼にぞっこんだし、それゆえに彼がいなくなってしまう不安もあるけれど、彼のその愛が私を満たしてくれるし、ただ単に一緒にいたいと思ってる。

私は今年大学を卒業し、二人でいた名古屋から徳島に就職した。だから、もともと遠距離になることは承知していた。それゆえに彼のワーキングホリデーに多少の心配はあれど応援してあげたい。

遠距離恋愛、どんとこい!

という心構えだった。だからこそ、将来を心から見据えている。


「ねぇ、優斗は大学院の後の将来どう考えてる?」


「うーん、そうだなぁ。今は目の前のワーキングホリデーへの期待とか不安でいっぱいだけど、大学院を卒業したらどうにかして一緒に暮らしたいね。」


将来を見据えている私と違って、彼の答えは具体的なようでいつも曖昧だ。どこに就職したいのか、もしそのまま名古屋に就職したとしてこの遠距離をどうするのか、私が仕事を辞めるしかないのだろうか。疑問は尽きない。

ただ、就職先が決まっているわけでもなければ、名古屋の方が就職先がたくさんあるのも事実だからそこを詳しく聞いてもまだわからない、と彼を困らせるだけなことはわかっているから聞けない。


「もちろん、ゆりの年齢も考えないとだし私が転職をするにしても、ゆりにお願いするにしても二人で話し合って続けていこうね」


彼はそう続ける。彼にも続けていきたいという気持ちがあるのなら良いかと思える。

しかし、二人の続けていきたい気持ちとは裏腹に、確実な問題が宙ぶらりんなまま二人の遠距離は始まってしまった。



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