第四話『またオレ何かやっちゃいました?』4/4
「マーサーってなんですか?」
竹原正明とは何か。
ほほう……哲学か。ってスケスケかよ。
つーかさっきからマーサー言うけどそれオレのことだよな?
レイナ「ちなみに黒服の人がマーサー言っていたのでレイナもパクっちゃいました」
あー、高橋さんね。
レイナ「モデルさんでもないし御曹司の息子さんとかでもないんですよね。億万長者のポーカーの人じゃないなら、なんで風雪様のVIPなのかなーって」
ああ、なるほどな。
正明「強いて言うなら……芸人の卵、かな?」
望代「早く割れよ」
レイナ「あははは、もー。教えてくださいよー」
正明「つーか木葉の友達なだけなんだけど」
レイナ「へー、すごーい。風雪様の……」
レイナ「……」
レイナ「……ん?」
その答えに、レイナは言葉を探すように、キョロキョロと首を左右に降った。
レイナ「あはは、それって電話番号とか交換して、街ブラブラしたりカラオケ行ったり喫茶店行っちゃったり?」
正明「そうそう。ちょうど昨日も一日中喫茶店一緒に入ったしな」
レイナ「……」
再び数回キョロキョロと何かを探すように首を傾げてから。
レイナ「……あー、うん」
レイナ「あのー……あはは、それ、冗談ですか?」
正明「カラオケも一緒に行ったぞ。あいつ超下手。耳が腐るよ。ま、オレの美声と比べるのは可哀想だがな!」
レイナ「……」
レイナ「そ、そう、でしか……で、したか……」
キャピキャピしていたレイナがゆっくりと俯く。
正明「……?」
望代「おい、こういう時は『またオレ何かやっちゃいました?』って言うんだぞ」
正明「何もしてねーよカス」
つーかなんだこの反応。
あんなのと友達して……ってことか。
あー……そうか、まあそうだよな。
うう、可哀想な木葉。寸胴眉毛に生まれた哀れな生命体よ。
ルッキズムの日本では、木葉の眉毛は受け入れられないらしい。
レイナ「た、"竹原様"は、その…ふ、風雪様とはどのような経緯で……あ、あの! 差しでがましければ別に……はい、大丈夫ですので……」
正明「……」
どんどん語尾が小さくなっていく。あのチビ相当怖がられてるのな。
現に昨日は滅茶苦茶やったからなあ……木葉って本当に常識ねーよな。
望代「木葉ってなんだ?」
正明「なんかそういうチビが学園にいるんだよ」
レイナ「チ……ッ!」
望代「お前ロリコンだもんな」
正明「ッハ。あんな芋眉毛性的な目で見るわけねーだろカス」
レイナ「……」(顔面蒼白)
つーかチビつってもモチと変わらな……ってイヤイヤ罠だ。それ言ったらロリコン許容することになるか。
正明「あー、別に木葉とは……普通だろ」
レイナ「……普通に友達になれたんですか?」
そういやなんでつるむ様になったっけ?
正明「確か初対面の時偉そうに廊下の真ん中歩いてて、邪魔だからぶっ飛ばしたんだよ」
正明「そんで煽ってきたからムカついて……」
正明「取り巻きの黒服いない間に友達のバイクで後ろから拉致って……」
正明「誰も通らないトンネルあるんだけど、そこで拘束して調子乗んなよってナイフ突きつけて……」
正明「……」
正明「ま、まあ色々あって仲良くなったんだ! 今じゃもうマブ達っつーか……」
レイナ「……」
望代「……」
正明「う、うっそーん! うそーん! うそでしたー!」
望代「……」
ふるふると首を横に振られる。
レイナ「……」
望代「……」
正明「……」
正明「またオレ何かやっちゃいました?」
望代「やっちゃいましたし」
レイナ「あはははは、すごく面白い冗談ですね! まーた冗談ばっかり言ってはぐらかしちゃてー……って、す、すみません!」
正明「う、うん! も、もちろん冗談だよ!」
レイナ「……」
望代「おいクソ原。野菜もらってやるよ」
シェフ「こちら春野菜とサーモンのテリーヌでございます」
望代「う、ぐぬぬ、テリーヌさん……!」
正明「……」
レイナ「……」
望代「……」
憧れの高級和牛デビュー戦は味がわからなかった。




