第四話『またオレ何かやっちゃいました?』2/4
そこはいつも見ている焼き肉店とは全く違うオシャレな店。
店はもちろん、そこに居る客の質も木葉のパーティーで見たようなどいつもこいつも上辺だけは気品があるように見える。
対して、自動販売機の下で格闘していたボロボロの服を身に纏う竹原&鏡ペア。
レイナ「うわー、いけないんだー。両手に華。いやーん」
望代「おお……! お好み焼きだし」
案内された場所は座席は片方だけで正明の左に望代、右にレイナ。
お好み焼きと言った通り、向かいには椅子の代わりにテーブルが鉄板になっている。
レイナ「ねー。現役アイドルと食事できるってどんな気分? ねえねえ?」
正明「メニュー見ようぜ」
望代「カルビ!」
レイナ「あはは、すごいね! 現役アイドルのアイデンティティの欠片もないね!」
パッとメニューを開くと――
――言葉を失った。
正明「……」
望代「肉! カルビ! カルビ原肉明早く!」
待て。
待て待て待て。
カルビって、アレだろ……焼き肉屋で298円のヤツだろ。
『松阪牛カルビ150g……参萬圓』
『黒毛和牛A4カルビ150g……壱萬圓』
望代「くふふ。150とか舐めすぎだし。1ポンド!!! モチは1ポンド以外食べないし!」
正明「………………」
流石のオレでも、気が引ける。
レイナ「レイナ何食べようかなー」
正明「なあ、鏡さん。この漢字読めるかな?」
『参萬圓』
さあ、これは一体何を意味するのか。
つーかA4って何……紙? 普通紙? 光沢紙? なんでいきなり紙の話?
望代「は? 知るかよ。『園』だから産地かなんかだし。漢字だから中国だろ」
あー、なるほどね。産地か。そうだよな。どっかの地名に決まってるよな。
まあそうだな。たかが150g三渋沢する可能性と『参萬圓』がどこかの地名である可能性。どちらが明白かは考えるまでもない。
正明「……」
正明は考えるのをやめた。
すると鉄板の向こう側にシェフの格好をした品のある男性が現れる。
シェフ「本日担当させて頂きます山本です」
正明「……?」
望代「はあ……」
正明(誰? 友達?)
望代(モチが知るかよ。進藤レイナの知り合いだろ)
シェフ「本日のオススメは宮崎支部から取り寄せた"きくまつ"です」
そう言うとベストを付けた別のスタッフがサービスワゴンからこれでもかという程の肉の塊運んできた。
正明「うお……!」
望代「やだ……逞しい……」
シェフ「子牛登記でございます」
出された一枚の紙は住民票みたいなよくわからん記載があり、左下に……黒の掌紋? その上にハンコが押されている。
正明「……?」
望代「なんだこれ」
よくみると確かに、書いてある。
左上に黒毛和牛。そしてその父と母。それぞれの祖父の名。よくわからない検定の内容。
そして名前"きくまつ"と。
望代「……」
正明「……」
あの鏡望代でさえ何か察したらしく、口を閉ざした。
そう。つまり――サービスワゴンに乗っているあれが、きくまつちゃん(雌)なんだ。
レイナ「オススメでお願いします」
シェフ「かしこまりました」
望代「あの……えと…あう……」
正明「……」
レイナ「あ、全然大丈夫ですよ! 足りなかったらバンバン注文しちゃってください!」
望代「ん……んんぅ」
正明
――つっても、流石に奢ってもらうにも限度があんだろ。
このシェフがオーダー取り終わってどいたらレイナと喋ろうと思ったが、
山本「初めさせて頂きます」
え……。
あろうことかこいつは居座ったまま鉄板の上に油を引き始めた。
カシャカシャと料理の準備を進める。
正明「……」
望代「……」
敵地のアパート。裏カジノ。ハマルン。雀荘。警察署。暴力団事務所。
人に豪語できるほどの人生経験はないが、それなりの場所に入っても気後れしたことない竹原正明が、初めて萎縮した。




