第二話『闇の住人、夜の住人』2/3
正明「ヒヒヒ、なんだよ。悪い、今ク●ニしてって聞こえたわ」
憂「ク●ニして」
正明「……」
こいつ……ああ、もう……。
憂「えへへ」
えへへじゃねーよババア。
●【選択肢020:えへへ、クンニして】
A.挑発に乗る
B.イヤです……
●A.挑発に乗る
正明「上等だ――やってやるよ!」
憂「わーーーい!」
憂「じゃあお願いします」
正明「負けたらな!!!」
憂「でもでも、多分表情に出ちゃうから簡単に勝てると思うけどね」
正明「オレが勝ったら何くれるの?」
憂「んー、そうだねー。そうだねー。燃える勝負にしないとねー」
憂「私の晩酌をあげるよ。じゃじゃ~ん、シャトー・オーゾンヌ」
ワインか……あんまいらねえなあ。生ビールの方が全然いんだけど。
憂「何百万円もするものじゃないけど、正明君が自腹では飲まないとは思う値段はするよ」
憂「あともし負けたら今晩私が苦しむよ!」
別に憂ちゃん苦しめても得はねーんだよな。
ま、数万のワインってだけでも良いか。スケスケやジャンの依頼金代わりになるかもしれねーし。
憂「えへへ、でも今日は勝てると思うけどね。なんたって正直者の北村憂ですから!」
そうあってくれ。もし負けたら大変なことになる。
正明「……」
あれ?
オレ、今もしかして……とんでもない安請け合いを……?
もし負けたらこいつの……。
正明「……ッ」
意識すると、緊張感が増してきた。
憂「じゃあゲームの前に、一言だけ確認ね」
憂「弱いカードは弱いカードって伝える。強いカードの時は、強いカードって伝えるよ」
憂「でね。後出しになるけど、今からのゲーム。一度だけウソをつくかも」
あん……?
憂「もちろん、それがビッグベッドにならなくても一度は一度だけどね」
憂「後出しでごめんね。でも。どうしても今日は勝ちたいなー」
言葉に偽りがないように、普段見ない北村憂の勝利への炎が垣間見えた。
正明「……」
結構マジだなこいつ。
いいぜ、上等だよ。誰が舐めるかそんな臭えもん……!
ぶっ殺してやる!!!
ゲームを進める。
憂「うーん、弱いなー。降りてほしいけどドローカード伸びる可能性もあるから、コール」
憂「うんうん、強いからレイズしよーっと」
憂「ふつーだなー。正明君もふつーそうだし、積んだら降りるかなーっと」
嘘偽りなく、本当に心に思った事を口にしてゲームを進める憂ちゃん。
それはブラフじゃなく、全部本心だと言うのは口調でもアクションでもその通りで。律儀にゲーム終了時にはカードをオープンにして疑惑の払拭までしてくれる。
憂「うーん、弱いけど降りてほしいからリレイズー」
ドカンと、上乗せがくる。
正明「……」
互いにフロップ前にある程度チップを乗せた。
それでも場はローカード。確かに噛み合わなくともポット(場のチップ)は欲しいのでブラフは常套手段。
弱いカードだと主張するのは先程までとは何も変わらない。
正明「リ……」
リレイズ?
本当に?
正明「……」
ボード3,5,9に対して、オレは5,A。つまり5のワンペアで、憂ちゃんが勝つには現状一番強いワンペアの9か、もしくは配られた2枚が77,JJ,KKなどのポケットペア。或いは39や59などの2ペア。
テキサス・ホールデムにおいて、特に1VS1の場合オレの手は"そこそこ"強いではある。
正明「……」
もちろん、そこそこ。
必勝というならば9,9のポケット。或いは4,6を持って2,7を待つギャンブル。23456,34567のストレート待ち。
仮に確率が薄いギャンブルといえ、それは弱いとは口走らない。
言葉通り、今までのアクションからして、まずオレの方が強いのは間違いない。
正明「……」
間違いない……?
間違いないなんて、安全なんてないゲームで、間違いない――?
ドクン。
あ――。
ああ――そうか。
正明「なるほど、な」
これか。オレの目指すテキサス・ホールデムは。
憂「私弱いよ。本当に弱いのに迷うなんてもったいないよ。現状では絶対勝ってるって。こんなチャンスをドブに捨てるの?」
憂「……なーんて感じで、弱い自分を"弱いと見せるテクニック"が、ピュアブラフって言うんだよ」
なるほどな。
憂(正確には違うんだけどね)
正明「……」
正明「憂ちゃんの言っていることすげー理解したから、勝負終了しない?」
憂「んーん。ヤダ。弱いからオールイン出してよ」
憂「それでも落ちるカード次第逆転があるんだから」
正明「……」
結局そのゲームは降りて、別ゲームでオールイン対決を制した。
その後泣きわめく憂ちゃんを後にリレイズ北村を後にした。
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●B.イヤです……
正明「わしはそんな臭いもん舐めとうない」
憂「……」
憂「正明君が勝ったら、福沢さん20枚」
正明「……ッ!」
憂「負けたら3時間ク●ニ」
正明「ぐ……ッ!」
こいつ……悪魔かよ……!
しかし、しかし20枚、20枚あれば……牛丼換算で400杯。銀玉換算で等価5万発。
正明「……」
悪魔の天秤。何よりも欲しい金に相当する悪魔の処遇。
答えは――。
正明「ヤダ」
正明「憂ちゃんの臭そう」
憂「……」
憂「うう……わかったよ」
ホロリ、と憂ちゃんの頬から涙がこぼれた。
やなもんは、ヤダ。だってビラビラで汚そうだし。
憂「今日は気分優れないから、お店閉めるね」
憂「はあ……うう……」
正明「……」
こいつって結構メンタルクソ雑魚だよな。




