第二話『闇の住人、夜の住人』1/3
◆【リレイズ北村】
正明「――リレイズオールイン」
憂「コール」
正明「ぐ……」
散々時間をかけた勝負は、ブラフ時の特攻で呆気なく決着がついた。
正明「……あん?」
見ると、憂ちゃんのカードもそんなに強くない。
そんなに強くないカードで乗ったということはたまたまではなく、ブラフを正確に見抜いている。
憂「このゲームだけなら、多分降りてるよ。その前、正明君が強い手が入った時。チェックで回したんだよね」
まだ解説してくれと言っていないのに勝手に喋ってくれるすげー便利なヤツ。
憂「強いカードはチェックで回す。それを意識付けて、今度は……と思ったけど、呼吸がさっきと違ったからブラフってわかったの」
正明「呼吸?」
憂「んー……あのね、結論から言うと正明君はポーカーフェイスなんて向いてないの」
憂「隠すのが下手ですぐ表情に出ちゃう」
……ッ!
自分では上手くやっているつもりだが、現にやられている以上反論することができない。
憂「だから当面の目標はポーカーフェイスを捨てる練習をしようか」
正明「ポーカーフェイスを、捨てる?」
なんだそれ。自分が弱い時に弱いですってバカ正直に言うのかよ。
憂「うん。正明君が思っている通りだよ」
正明「ナチュラルに心読むなよ。つーか多分違うわ。カード弱い時に弱いですーって言うのかよ」
憂「うん。だから合ってるって」
正明「……」
ニコニコと、いつも通りの北村憂。
憂「勝率や期待値のストラテジーはほぼ完璧に覚えているね。正直想定よりもすっごく早かったかな」
憂「次のステップは相手の読み方。なんだけど、これも結構センスあるね。押し引きに関しては間違いは多くないよ」
カチャカチャとチップを滑らせながら笑顔で解説してくれる。
憂「でね。問題なのが、ポーカーフェイス」
憂「これね。正明君は致命的に下手くそなの」
正明「……そうか」
こういう風に言われるともちろんムカつく。だが、課題が明確になるほは良いことだ。
現にラシェルにもあの時、オレが望んでいないカードが落ちたと表情で悟られてレイズをされた。
憂「だからね。ポーカーフェイスなんて捨てちゃって、正直になろうよ」
正明「いやいやいやいや、ダメだろそれ」
憂「んー? そうかな。じゃあ実際にやってみようか」
正明「……ま、いいけど」
今日は時間はたっぷりあるし、良し悪しを見れるだけいいのかもな。
憂「正明君はピンとこないと思うから、私がやってみるね」
憂「でね、こういう勝負となると、緊迫感がほしいから……うーん、正明君が負けたら罰ゲーム!」
正明「……」
えー、と抗議したいでもあるが、こいつの言っている意味もわかる。
ラシェルの時、半分以上資金突っ込んでいる状態。
あの時レートが渋沢1枚なら、オレは突っ込んであいつのカードを見に行った。
だがレートはその三十倍。カードが見たいからで残り半分の5,000円は突っ込めても15渋沢は入れられない。
金の圧。
それがないとこのゲームは全く別の遊戯に変わる。
正明「で、罰ゲームってなによ?」
憂「んー、それじゃあ……」
憂「ク●ニして」
正明「……」
は?
正明「ヒヒヒ、なんだよ。悪い、今ク●ニしてって聞こえたわ」
憂「ク●ニして」
正明「……」
こいつ……ああ、もう……。
憂「えへへ」
えへへじゃねーよババア。




