第十二話『フィッシュではなくスリーセブン(前半)』2/5
◆【路地裏】
待ち合わせ時間の5分前に、そいつは居た。
恭介「――来る」
いや来たけどさ。
恭介「ふむ」
正明「あー……」
お互いの服装を見て、色々思うことがあったが、それを飲み込む。
地味めな格好で来いと言ったのに、いちいち厨二っぽいんだよな。
恭介「その意図は果たして?」
そっか。ジャンと違ってスケスケは初めてか。
正明「大学デビューしたいマンみてーだろ? で、そういうバカがイキってギャンブルするってシナリオなのよ」
正明「ほら見ろよ。タバコもセーラムピアニッシモに変えたぜ。これ男が吸うと鼻で笑われるみてえ」
恭介「貴様の周到さだけは認めている」
恭介「ふ。詳細は移動しながら伺うか。タクシーはあるのか?」
正明「高いわっ!」
恭介「期待していないが、その返しを高いとの一言。ククク、まあ己の二本の足で向かうのも悪くはない」
雑談はそのままで、目的の場所に案内してもらう。
◆【繁華街】
恭介「到着――」
ある程度の作戦と目的を共有して、見えた。
『WENS CASINO』
リレイズ北村より怪しさは格段に落ちるものの、堂々とカジノという看板を飾っているのがこの店の格を表している。
正明「さてさて」
よくある裏カジノというのはダーツBARやビリヤードなど別店舗を装るパターンで、そこから派生して危ない場所が監視カメラの設置されているアパート。
ここは、堂々とカジノと告知しているということは、そういう事。
おまわりさんとヤクザさんが仲良しのお店か、リスク承知で経営してるかのどちらかだ。
正明「ひひひ、やっべ、よだれ出そう」
普段なら色々頭働くし戦略も考えるが、今回はまず"見"だ。
普通にカジノを楽しみ、カモを選定する初期の作業。
ま、おもいっきり楽しめるっつーわけよ。
恭介「中毒者め。貴様ら欠陥存在者に振り回される俺の身にもなれ」
正明「払うもんは払ってんだろパートナー。従えよ」
◆【WENS内装】
そして予想通り、監視スタッフや門番みたいなヤツもなく、すぐに広がるのは様々なカジノテーブル。
スタッフ「……」
出入り口に座るのは風格のある男性。とりあえず通過時点で文句言われなければ大丈夫だろう。
カジノテーブルは全部で8つとその奥にパチンコ・スロット台がわんさか並ぶ。
中央にあるルーレットは流石にわかるが、ポーカー台に見えてテーブルの模様が違うもの……多分、バカラとかブラックジャックのテーブルなんだろう。
客「レイズ――」
客「コール」
知っている単語が耳に入る。ってことは、奥にあるのがポーカーか。
正明「……」
ルーレットがちょうど中央に位置する。で、ポーカープレイヤーの発声もかろうじでだが聞き取れた。ってことはここで少しはしゃげば、カジノテーブル全体には声が届くだろう。
正明(合わせろよ)
恭介(任せろ)
正明「うわー! やっべ、すげー。これってルーレットってヤツ、うわー、かっけー!」
恭介「……」
恭介(謝罪しよう。無理だ)
ちょっとぐらい頑張ってくれよ!
店員「やってみる?」
正明「えー、どうしようっかなー。ちょっとやってみてーなー」
正明「これどういうゲームなんですか?」
店員「数字の上にチップを置いて、当たったら配当がもらえるよ」
店員「さっき10万勝った人いたよ。鬼だよな」
正明「へー、すっげー!」
正明「いくらからできるんすか?」
店員「5,000円25枚。1枚200円で置ける」
店員「数字に当たれば7,200円だからね。結構でかいよ」
正明「うっわ、でけー! 一発当たればすぐ元じゃん! ちょっとやってみるー!」
正明「うっしゃああああああああああ! うぇええええええい! 3万勝ったああああああああ!」
正明「ふはははは! あー、すみません。ビールいくらですか? あ、じゃあ一杯……あー、コーラもお願いします」
いやー、勝てたのは良かったよかった。単純にすげーおもしれーわルーレット。二度やんねーけど。
ルーレットのコインをカジノコインに変換する。ややこしいが、とりあえずこれで他のゲームに移れるようで。
そんじゃ――行くか!
スケスケに場所移動を伝えると、それに従い目的地。
ポーカーテーブル。
そこには歳がバラバラの男性が4名座っている。
正明「こんにちはー。ゲームできますか?」
ディーラー「はい。大丈夫ですよ」
ん……?
愛想の良い店員がにこやかに微笑む。
ディーラー「今回は僕も入っていて、5人ですね」
正明「へー。これ、ポーカーですよね」
ディーラー「テキサス・ホールデムポーカーですね。ルールがわからないのであれば、あちらのテーブルで教えてもらえますよ」
正明「へー、親切ですね。オッケーです。ちょっとわからないんで、向こうで説明受けてきますね」
ディーラー「あ、それならボクが入ります。藤崎、ディーラーお願い」
店員「あーい」
正明「……」
ディーラー「本日説明をさせて頂きます。高木と申します。よろしくお願いします」
言葉通り丁寧に渡された名刺を受け取る。
正明「おー、丁寧にあざっす。斉藤です」
恭介「田中です」
【WENS CASINO支配人 高木・遊矢】
正明「……」
ほーん。支配人、ね。
一通りレクチャーを受けて、憂ちゃんの店でやっているテキサス・ホールデムと齟齬がないことを確認する。
ようやくテーブルに座る頃には二人退席して残りは二人。
正明「こんにちはー、初めまして、斉藤です。よろしくっすー!」
客1「あ、よろしくお願いします。私浜田と申します」
客2「……」
正明「浜田さんですね。そちらの方はなんと言いますか?」
話しかけるが、反応はなくうつむいたまま。
正明「浜田さんはよくポーカーされるんですか?」
客1「ちょこちょこ……ですね。はは。ちょこちょこです」
正明「へー、ベテランさんなんですね。ボクこういう場所は初めてなんでよろしくお願いします」
その後しばらくポーカーデビューで遊んでみる。
……ふむ。
正明「チェック」
浜田「レイズ3,000」
正明「リレイズオールイン」
浜田「……」
浜田「ダウン」
正明「うわー! よかった! 乗られたらどうしようかと思ってすっげー心臓バクバクだったよ」
浜田「ははは……」
高木「……」
1時間ほどして、携帯音がなると同時に席を立った。
正明「もしもーし、はいはいー! あ、ひっさしぶりー! げんきー? ははは」
スタッフ「……」
店外へ出る際、脇目でスタッフの視線を浴びながら、外に移動した。




