第十一話『こいつマジでさ。マジでさあ……。』2/3
◆【自宅リビング】
正明「さて……」
望代「はーあ……うわ、鼻折れてるし」
ぜってー嘘。つーか折れろし。
望代「……あ?」
望代「なあ、まず謝るんじゃねーの?」
いや、こいつ本当にすげーよな……。
正明「これ以上煽るなら、オレは刑務所入る覚悟でやりあってやるよ」
望代「……」
お互い不毛な戦いはしたくないので(なら何故こうなった)無言でシャワーを交互に浴びた後、リビングに座った。
正明「……で?」
望代「で?」
正明「で?」
望代「デ○デ大王やめろよ」
正明「ちげーよバカッ!」
もううぜえ! なんで生きてるんだよこいつ!
正明「お前むちゃくちゃしてるけどさ。オレに言うことあるだろ」
望代「は? あーーーー! ある! あるよてめえふざけんな!」
望代「wifiのパスワード変えただろ!」
正明「……ッ」
こいつマジでさ。マジでさあ……!
トントントン、と思わずテーブルを叩く。人のストレスは指先に出るというのは本当らしい。
リビングで話し合いをしようとするオレを無視すると、押入れから昔モチが持ってきた布団を床に敷いてパラサイトモードに移行する。
望代「コーヒー」
正明「……」
望代「コーヒー!」
正明「……」
なんでオレの周りって常識人いねーんだろうな。
望代「チッ。クォァーフィー」
正明「イントネーションじゃねーよ!」
あ。
そうだ。ここでこんな下らねえ事言い合ってる場合じゃない。
本当にここで巣を張られると月単位で寄生するのが鏡望代。
一晩でも泊めたらもう終わりだ。なし崩しで居座る。遅くても夜までにはこいつを連れ出さないと……。
望代「残念だったなクソ原。wifiはルーターのボタン押したら繋がるんでした~」
やべえ、時間がねえ!
正明「……」
えーっと、ここで外に連れて行く動機と口調を考えろ。
「デートに行こうよ」そんな猫なで声で柔らかく言わない。ウソ八百。
「ランチってやるから」竹原正明=奢らない。よって誤り。
「股開けよ」……あー、案外これか? うん。なんかオレっぽい。
ムラムラしたとか言って、ラブホ行こうと誘いだして……ホテルは昔一度だけ行った事が……あ、駄目だ。確かオレその時ラブホ代が高いとかでこいつと喧嘩したんだわ。
あー、もう考えるのもめんどくせえ。
総当たり作戦でいくか。
正明「久しぶりにデート行くぞ」
望代「は? なんだよ藪から棒に」
望代「くふふ、やぶからぼうに」
お前それ言いたいだけだろ。
正明「ランチ奢るから」
望代「この前言ってたよな。オレはランチを驕るのだ、だろ? お前マジつまんねーよ。死んだ方がいいし」
果たしてオレは本当にそんな事言ったんだろうか?
正明「最近溜まってんだよ。セックスするぞ」
望代「ケツアナ出せよ」
……やべえ、わかっていたけど全部釣れない。
チッ……もうちょい食い下がってみるか。
正明「本当だって。もうほら、ギンギン」
望代「はいまたウソ。お前戦闘時でも5cmだし」
望代「うぎゃああああ!」
正明「やっぱ出てけてめえ!」
望代「あのさあ! 嫌なことあるなら自分で言おうよ! ねえ! ガキじゃねえんだからさあ!」
正明「うるせえクソガキ!!!」
強硬手段に出ようと思った矢先、秘策でもあるように手で静止させる。
望代「クソ原。お前モチが払った年間家賃受け取ったよな?」
正明「はあ?」
望代「てめえの言語で言ってやるよ。0.5渋沢」
正明「――グッ!?」
記憶は――ある。ある。何故だ? 何故オレに、そんな記憶が?
まさかこいつ、脳内に――ってスケスケかよ!? そのネタもう使ったわ!
望代「しらばくれるなよ? てめえは年間家賃として受け取ったっただろ」
正明「……待て。"年間"だと?」
望代「ん。モチは年間って言ったし」
正明「言ってねえよふざけんな」
望代「言ったし。ウソって言うならバックログ見ろよ」
どんだけ遡らせる気だよ!
望代「ま、座れよ」




