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第十二話『杳杳(ようよう)たる至近距離』4/5
◆【繁華街】
百万円の束を惜しみながら渡すと、それを裸のまま雑にカバンに入れる憂ちゃんにムカついた。
憂「私もこのお金返そうか?」
正明「ああん?」
威圧的な態度を取ってしまうが、オレのイラつきなんかで態度をどうこうする相手じゃない。
んな事わかってんだよ。だけど――そういうのがムカつくんだよ!
でもって、この女はオレがそういうのにムカつくってわかってるのがさらにムカついて――ああ、もうムカつく!!!
憂「あはは。正明君ってさ。本当に綺麗で真面目だよね」
正明「……ッ!」
それはある意味オレにとって最大限の侮辱の言葉。
憂「んー。あれ、怒っちゃった。あはは。それなら本当に綺麗だなー」
正明「……」
憂「あーん、正明君可愛い~」
そう言って平然と腕を絡ませてくる女。
遠い。
オレにピッタリとくっつくこの女は、一体どれぐらい離れてるんだろう。
正明「憂ちゃん」
憂「んー?」
正明「今に見てろよクソ女」
憂「あは」
嬉しそうに微笑む北村憂の表情を目に焼き付けた。




