第七話『クラス保有者の実力』1/5
◆【公民館】
山岡「初めまして。本日ポーカー講師を務めさせて頂きます、山岡と申します」
山岡「本日は初心者から上級者まで、幅広い受講者と、世界で活躍するプロポーカープレイヤーと一緒に勉強ができればと思います」
山岡「先生、お願いします」
そう言って出てきたのは二メートル近い外国人。
ペーニャ「コンニチハ、ワタシペーニャ」
気さくそうな笑顔の挨拶につられて場が和む。
山岡「ペーニャは世界上位100名に入るクラス保有者の称号を持つプロポーカープレイヤーです」
山岡「ご存知日本にもプロの名を語るプレイヤーは四名程いますが、日本最強と言われる二階堂春樹さんであっても、クラス保有者ではないのでランクとしてはペーニャが格上になります」
山岡「実際のところあの人だけは別格なんである程度ペーニャとも戦えると思いますが、他のプロでは話になりません。ボクは春樹さんともよくお会いする仲で、一緒に大会に出たこともあります」
集められたのは公民館みたいな箱。
まるで怪しい商材でも売りつけられそうな、そんな雰囲気にも見えるが参加者の熱量の低さからそれとも違うまた異質な空気になっている。
山岡「では本日はせっかくこうやって集まったので、全員でゲームをしてみましょう」
実際集まったのは15名ほど。それぞれテーブルを別け、実践という形で遊んでみた。
男性「あの、これってどっちが勝ってるんですか……」
山岡「はい。この場合、増田さんがスリーカードなので勝ってますよ」
正明「……」
こりゃあ失敗したかな……。
以前近藤さんに進められたポーカー教室とやらの案内に顔を出してみたらコレだ。
腕に自信があるギラついたヤツでもいれば仲良くなってカモリストに追加したが、この様子じゃあ……なあ……。
仲良しクラブなんて時間の無駄。
そんな考えに変化があったのはそれから二時間後の事だった。
山岡「鈴木さん。これが終わったら残ってください」
正明「……? ああ、はいはい」
ちなみに今日の名前は竹原でなく鈴木である。
同様にオレ以外にも数名、個別で声をかけ、一度表向きにはポーカー教室は平和に解散した。
そして再び集まり……残ったプレイヤーは5名。
山岡「お待たせしました。これより、実践に参りたいと思います」
そう口にすると、客のうち二人が拍手をした。
正明「……」
あまり状況が掴めないので、周囲の進行を観察する。
山岡「何名か初めての方がいますが、既にテキサス・ホールデムを知っている人には今日の講習は退屈でしたでしょう」
山岡「実践。ということで、勝負ができる場所へ行きたいと思います」
今の今までチップで勝負していた。ってことは、このニュアンスは……。
正明
表の顔と、裏の顔ってわけね。なるほど。嫌いじゃねーな。
山岡「近くに、"そういう"ゲームができるポーカー店があります」
ってことだよな。やっぱり。
山岡「後から参加する生徒も居ると言っていましたが……現地合流としましょうか」
山岡「それではペーニャ先生の実力を拝見しましょう!」
それはきっと、どういう意図だったのか。
今にして思い返せばクラス保有者はこんなに強くて、だから高額なセミナーに参加しろとか、もしかしたらそんな内容だったのかもしれない。
その答えは生涯わかることがないだろう。
何故なら――
◆【ポーカー店】
ペーニャ「……ッ!」
四度目のチップが空になった、世界上位100名に入ると自称するクラス保有者。
結果だけ見ればその称号を背負うにはあまりにも弱いと傍から見れば思うだろうが、そうじゃない。
基本的な打ち回しのレベルはとても丁寧で、ポーカーというゲームを熟知している。
期待値を追求するゲーム。波があるのは事実だ。
ならばたまたま負けたのかというと、それもまた違う。
△【イベントCG000・ラシェル・オンドリィ】
??「おかわりをするんだよ。お金がないならね。それにしてもマナーが悪いね。あと、顔も悪いかな」
??「性格は素直だけどね」
山岡「く……なんだ、お前は?」
一人。
チップの城を作るあどけない表情の人物がそこに座っていた。
??「名前かい? ボクの名前を聞きたいんだ? いいよ。一度しか言わないからよーーーく覚えておくんだよ」
正明「……」
まあ……こいつとやるんなら、クラスなんちゃらってのもそうなるだろうな。
??「ボクの名前は――」
??「シャークさん。って呼ぶといいよ」
ラシェル「お魚君」
――ラシェル・オンドリィ。




