第五話『勉強すべきはポーカーかおっぱいか…!』2/6
フロップでのフラッシュドローをどうするか?
重要なのは、勝率が34.97%ではない。あくまでフラッシュの成立。
とはいえ相手がフルハウスが揃う確率は捨てていいが、逆にスペードが2枚ボードに落ちれば、正明の4,Jのスペードの場合、Jのフラッシュハイカードになり、誰かがQ以上のスペードを一枚持っていると敗北してしまう。
正明「オレがフラッシュ時に正しいアクションは」
●【選択肢003:フラッシュの正しいアクション】
A.チェック
B.オールイン
●A.チェック
正明「チェックか」
憂「セオリーだね。フラッシュ待ちは低いコストで次のカード見たいからね」
憂「でもね。あえて私はオールインをオススメするよ」
正明「……あ?」
●B.オールイン
正明「オールインか」
憂「え、なんで? 勝率34.97%だよ? 65%以上で負けちゃうよ」
正明「引けば勝てるだろ」
うん、と頷いた。
憂「――正解」
相手からすれば、トップヒット(一番強いワンペア)、ツーペア、スリーカードかわからない。
この時のオールインはトップヒットは強制的に降ろす事ができる。
ツーペアは人による。
スリーカードだけが乗ってくるだろう。
例えばJJ持ちでボードにJがあるポケットペアが刺さる確率は無視していいほどに低い。
そう考えると97%以上が降りる。
安全にポットを貰える。
そしてそんな低い確率であろうとも、スリーカードのままであればスペードが落ちれば逆転ができる。
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憂「ブラフだけどワンちゃんある。これを"セミブラフ"って言うんだ」
なるほどなるほど。勉強になる。
憂「注意点として相手のオールインにコールはダメだよ。それだと単純に34.97%の分が悪い勝負になるからね」
憂「あ、でもでも残り少ない点数だとかの場合はそうじゃないとかもあるんで、チップの残高見ながらね。でも基本的には相手に乗るのはダメ。自分から行くのはオッケー」
憂「人数が3人以上なら、単純に勝率は33.33%だから34.87%って考えると期待値を超えてる! ってケースもあるね。ただ、同じフラッシュドローだった場合はガクンと勝率は落ちるんで注意しようね」
なるほどなるほどなるほどなるほど。
タメになる。
正明「ん? ってかさ。ふつーに10,000点とかの高額レイズでいんじゃね?」
憂「次にスペードが落ちる確率が20%もないんだよ」
ノートに数式を書いていく。
38/47×100≒80.85%(出ない確率)
憂「でね。スペードが出る19.15%を引けないでレイズされたら正明君は乗れる??」
正明「……ッ」
確かに。
もちろんこっちがツーペアのフリすればとか反論のシチュエーションはあるものの、敵がヒットするなら苦しい。
憂「毒を食らわば皿まで。じゃないけどね。行くなら行く。引くなら引く」
憂「走りきるなら、"命賭けないと"ダメだよ」
ッハ、なんだそりゃ。
超面白いじゃん――!
正明「なあ憂ちゃん。こういうのもっといっぱいやってくれねえ?」
憂「うんいいよー! 先生だからねー!」
ってちょっと待て。
正明「憂ちゃん、この場面でオールインしねーだろ」
憂「うん」
正明「……」
いや、うんって……。
自分で言っておきながら、北村憂のアクションに今の勉強内容は入っていない。
憂「私は相手の表情を見て打つプレイヤーだから、ポットの損得、確率の有無はあんまり気にしないかな」
なんだそりゃ、とは思わない。結局はそれ。勝率、確率は打ち手の癖と表情を読むの一番高いとのことだろう。
憂「――レイズの意図を読み解くの」
憂「降ろすレイズ。釣り上げるレイズ。匂わせるレイズ。降りてくれたら嬉しいなと伝えるレイズ。強いとアピールするレイズ。素直に数字通りのカードのレイズ」
憂「それが見抜ければ、相手のカードがこれぐらい、と目安がつく。そうしたら、初めて次のアクションが生まれてくるの」
正明「……なるほどな。よーーーくわかった」
なるほど、オレとは格が違うわけだ。
レイズ5,000。
その言葉の意味に、背景に何を含んでいるのか。
で、そういう意図した5,000が打てないピヨピヨはオールインしてろってか。
なるほど――悔しいけど正しいじゃん。




