第三話『怪力の説教』3/3
斬「暴力は確かによくない。ただ、キミ達に口で勝てるとは思っていない。学園に行こう。ボクの要求はそれだけだ」
開き直ったよこいつ。
望代「四光院には関係ねーだろ。一々絡んでんじゃねーよ暴力女」
斬「モチ。お願いだ。ボクはモチが心配なんだ。一緒に学園に行こう。ね?」
望代「どうせ言う事聞くまでモチの事殴るつもりだろ? 屈すると思うのかよこのモチが。ニート生活を捨てるとでも思うのかよ?」
正明「捨てろよ。ぶっ飛ばすぞクソ女」
斬「マサ。暴力はよくない。ボクはモチと仲良くなりたい。暴力だって振るうつもりはない。お願いだモチ。少しぐらい言う事を聞いてほしい」
望代「うるせえハーゲ」
斬「……」
望代「ぎゃあああああああああああ!!!」
正明「暴力はよくないんですよね四光院さん!?」
斬「ごめんマサ。うるさいよね」
こいつ結構サイコパスだよな。
望代「チッ……人が下手に出てたら言いたい放題しやがって!」
いつてめーが下手に出たよ。
望代「じゃあモチが学園に言ったらどうなるってんだよ!」
望代「東京大学に合格できんのか!?」
望代「シャニーズのイケメン彼氏できるのかよ?」
望代「芸能界デビューできるのか!?」
斬「……」
一瞬チラリとジャンの視線が正明に向けられる。
正明は諦めろと首を横に振るった。
斬「え、えと……可能性は0じゃない……と思う……うん。あくまで個人の感想にはなるけど……」
どれだけ保険欲しいんだよこいつ。
斬「違う。そうじゃない。モチ。ボク達は学園に行かないといけないんだ」
望代「おいクソ原。このクラス委員長みたいな真面目ハゲなんとかしろよ。お前の友達だろ」
斬「……」
リンゴを粉々に潰した右腕をグッパッグッパッさせて、モチの頭に近づける。
望代「違うの! クソ原にレイプされて酷い身体だから出たくないの!」
斬「酷い身体……」
斬「……」
斬「いや、うん。別に二人の関係をとやかく言うつもりはないんだけど、その、付き合って……ない、んだよね? そんな二人がこう、身体を重ねるなんて……うん、ボクは関係ないけど、それでも……」
斬「まあ、もちろんボクが二人の関係に入るつもりはないけど、でもモラルとか、道徳とか、やっぱりどうなのかなって気になるのは確かなところではあるし……」
コイツはコイツで変なところが乙女チックだから面倒なんだよな。
正明「関係云々出すわけねーだろ」
斬「え、そ、そうなんだ?」
少しだけ嬉しそうに微笑むと、
正明「こいつ風呂入んねーし」
斬「……」
斬から表情が消えた。
布団を占拠するモチの髪を優しくとく。
望代「なんだよ。髪の毛あるのが羨ましーか?」
望代「ぐあああああああああ!」
ローキックの音がパンッ! と肉が弾ける音が響いた。
斬「すまないマサ。浴槽を借りる」
ズルズルと腕力だけで望代を引きづって行く。
望代「ああ? ざけんなクソ女! そんなことしたら……ああ、溶ける! モチの身体が溶けるううううう!」
正明「おい!!! シャンプー二回以上プッシュしたら殺すぞ!!!」
プシュプシュプシュプシュ。
正明「うおおおおおおおおおおお!」
望代「おいハゲ! てめえモチもっと繊細で……バカ! それタワシ! タワシだってば……ぎゃああああああ! 竹原! おいゴミ! 助けろ! 助けんかい!」
望代「ぎゃああああああ! 削れる! 大根おろし! 違う、やめ、……あああ、うわああああああああああああん!!!」
望代「てめえ泣いてる子に……ぎゃあああああ! やめろってばハゲ!」
正明「……」
こいつ、不潔にスイッチあるのか。
ジャンの好きなジュースでも、買ってこようかな。




