第三話『怪力の説教』1/3
◆【自宅】
望代「ぎゃあああああああああああああ!」
ピンボールのようにのたうち回る望代。
本来ならばざまあみろと爽快感が抱くはずだが、それは明らかにラインを超えていた。
今ではは火の粉が降りかからないように震える正明。
つまり正明ではない。
誰が望代を攻撃しているのか言うと……!
斬「学園に行こう」
望代「死ね!!!」
布団に包まったまま、最低な言葉をぶつけるのはご存知鏡望代。
斬「まさかマサの家に居るとは思わなかった」
正明「まさかマサマ様?」
斬「……」
正明「ごめんなさい、ちょっとだけ言いたかっただけです」
斬「モチ」
斬「モチはマサに迷惑だとは思わないのかい」
望代「ああ? ハゲに関係ねーだろ! いつクソ原が迷惑つったよ!」
正明「迷惑です」
望代「裏切ったなッ!」
正明「……」
さっきグッチー先輩に殴られてる時拍手してた女がよくもまあ……。
発端はジャンの差し入れ。
実家からリンゴが届いたとかで持ってきてくれたところで、このゴミを見つけてこれだ。
望代「暴力はよくないんだろ!」
斬「うん。そうだね。暴力はよくない。それに関してはモチが言うことが正しいと思う」
斬「でも、モチもよくない」
望代「はあああああああ!? おい聞いた? こいつ今モチの存在そのものを否定したぞ」
正明「モチはいらない」
望代「モチは10勝しても10敗する門……」
正明「やめろッ! 言わせねーよ!!!」
斬「モチ。このまま堕落した生活を続けてしまえば、心身共に腐敗してしまう」
望代「クソ人間共が……!」
ガンガンガンガン!
お隣さん「大丈夫ですか!? 生きていますか!?」
正明「ひぃ!? 出やがった!」
望代「……ッ!」
ナニカを、考えた。
すぅ……と息を吸い込むとバルーンのように身体が膨れ(望代比)
望代「きゃあああああああああ! 包丁向けないでえええええ!!!」
斬「……はあ」
正明「モチはよくない」
ジャンは奇声の元を放置して、代わりに玄関まで向かうと平然とドアを開けた。
お隣さん「この強姦魔が、お前もう終わ……」
斬「こんばんは。夜分遅くにお騒がせして申し訳ありません」
斬「ただいま折檻の最中ですので、もうしばらく騒ぎを起こすかもしれません」
お隣さん「え、あ……はあ……え、折檻?」
斬「お引取りを願いします」
望代「きゃああああああああ! 殺されるうううううううううう!」
お隣さん「……ッ!」
斬「口で発しているだけです。彼女はいつもウソをつきます」
お隣さん「……」
初めて見る斬を相手に出方を伺っているようにも見えるお隣さん。
考える事数秒。その間にも助けを乞う悲鳴が聞こえてくる。
お隣さん「ちょっと、中を拝見してもよろしいですか?」
斬「はい。構いません」
いやいやいや、一応涙の後もあるしさっきオレがグッチー先輩に殴られた血痕が壁にあるのよ?
こんな状態で入れたら……
考えがまとまらない中、お隣さんが靴を脱いで敷地内に足を踏み入れた瞬間、
トンッ、
小さな音がした後、電池が切れたロボットのように倒れるお隣さんを斬が支える。
正明「ええ……」
望代「うっわ……」
そのままズルズルと引きずると、斬は何事もないように戻ってきた。
正明「ジャン……」
望代「おい。歩く暴力」
斬「暴力は使っていない。眠ってもらっただけだ」
怖いよこの人……。




