第一話『剛力の説教』1/3
◆【自宅リビング】
△【イベントCG027・説教モード坂口】
坂口「学園には行っているんだろうな」
正明「はい!」
望代「はい!」
坂口「返事は良いな。返事は」
頭の両側を深く剃り込んだ髪型に、ざっくりと顔を走る古い傷。
頬を斜めに裂いたような、“いかにも”な風貌な男は説教を始める。
目の前にいるおっさんはグッチー先輩(坂口)
名目上オレの保護者になっている従兄弟で、兄貴面と常識人面する反社会勢力筆頭のゴミである。
望代「あの、グッチー……えっと……」
坂口「なんだよ。ズバッと言えよ」
返事一つ間違えれば灰皿を投げられそうな、ドラマや漫画の世界で見る紫シャツは学園生でなくても一般人でもしどろもどろにならざるを得ない。
望代「早く帰ってほしいし。ゲームしたい」
坂口「……」
望代「邪魔。モチの視界から消えろよ」
坂口「……」
望代「その紫シャツダッサ。THE・加齢臭」
鋭い瞳孔が、何故か正明に向いた。
正明「ね! こいつバカなんですよ! 本当に! どうしようもない出来損ないで、ね!」
正明「だから早くこいつ親元に帰してあげてくださいよ。ね!」
望代「おい。クソ原。てめえが言えつったんだろ」
正明「サラっとウソついてんじゃねーよ! オレがグッチー先輩にそんな失礼な事言うわけねーだろ!」
はあ、と溜め息。
坂口「お前ら、最近のテスト答案出せ」
もはや突っ込む気もないのは付き合いの長い証拠でもある。
望代にも正明にも、こいつらがどういう人間か坂口は把握している。
正明「はい、なんのテストでしょうか?」
望代「くふふ。クイズはモチ得意だし!」
坂口「舐めてんのかバカなのかどっちだよ。学園のテストに決まってんだろ」
正明「……」
望代「……」
学園のテスト……?
坂口「おい……まさかサボってるわけじゃねーよな」
正明「いえいえいえいえいえ、もう学園大好きでゲスよ!」
望代「そうそう! モチも友達100体ぐらいいるし!」
坂口「……」
必死の弁解も虚しく、どうしてこうなったと頭を抱えるグッチー先輩。
坂口「なあ。お前ら将来どうするつもりだ?」
正明「わははは! それを社会のゴミ(ヤクザ)がどの口で言てんだよ!」
望代「くふふふ! 育成失敗したのがグッチーだろ。ウ●娘だったらとっくに馬刺しだし」
正明「うわあああああああ! 違います! 違……あ、あああああ! なんでオレだけ!!!」
ガス! ゴス! ガスッ! ゴッ!
殴られている正明を横目に見ながら、コホンと咳払いをする望代。
背筋をピンと伸ばし鏡望代は今、ここに宣言する。
望代「モチはちゃんと目標があるし」
正明「ウソつけ!」
間髪入れずベストタイミングのツッコミに、望代はせせら笑った。
望代「ウソじゃないし。クソみたいな生活してる竹原に合わせて黙ってあげていただけだし」
正明「あん?」
坂口「ほう……」
吸い込まれるような澄んだ真っ直ぐな瞳に引き込まれた。
坂口「言ってみろ」
望代「チューバーになって年商1億円稼ぐし」
坂口「……」
正明「……」
望代「くふふ。大丈夫だし。税金の申告とかちゃんとやるし。いっぱい取られるけど、それを受け入れる心の広さがモチだし」
望代「あとゲームの世界大会に出てサクッと優勝して1億稼ぐし。くふふ」
坂口「ああ……」
もう一度、どうしてこうなったと頭を抱えられた。




