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第十一話『蟷螂の斧と絶縁の魔女』

◆【屋上】

△【イベントCG037・最強の二人】

恭介「深淵に亀裂が走ったかと思えば――空蝉うつせみの貴様が俺に用か」

屋上の最上部、貯水タンクのてっぺん。

高所に張りついた金属の足場はわずかに軋みながらもその男は風を楽しんでいた。

恭介「四光院――斬よ」

意味はない。ただ立っていただけ。

世界に気付かれないまま"世界を見下ろす者"として。

斬「うん。ボクは生きてるから空蝉ではあるけど、あと会話しずらいから降りてきてくれないか?」

恭介「ククク……」

恭介じゃなければ心配だが、もし落ちれば大惨事に……それでもきっと大丈夫だろう。

そんな心配をよそにぴょんと跳ねると目の前に着地する。

斬「よじ登ったの?」

恭介「この俺への用件を伺おうか」

タブーに触れたらしいのでスルーする。



斬「マサのことで相談があるんだ」

恭介「だろうな。涅槃ねはんの逆さまに位置するあの男を憂う(うれう)のは正しい。故の空蝉と言っているんだ」

斬「今日はいつもに比べて絶好調だね」

いつまでも恭介のワードに耳を貸しては話が進まないので本題に移る。


斬「昨日、マサから連絡があったんだ」

少しだけ、唇を噛んだ。

斬「人を闇討ちしたいって」

恭介「ほう」

対して恭介はあっさりとした反応。

それもそのはず、普通の彼氏や友人に言われたのではなく、対象はあの竹原正明だ。何も驚く事はないだろう。


斬「深夜だしもちろん断ろうと思ったんだけど、体中がボロボロだった」

斬「凄く、心配した」

恭介「ククク、今更蟷螂とうろうの斧とでも言いたいのか?」

斬「……」

どう言うべきか、一度視線は宙を彷徨った。

斬「結末から言うと、知らない人を倒して財布を盗んだ」

斬「凄くいっぱいお金を持っていた。それを、全て盗った」

斬「……」

斬「――ボクがやった」

淡々と事実を述べて、淡々と感情を吐き出した。


恭介「道理であろう」

錬金術師を知る恭介に驚きはない。

恭介「そもそも虚弱な錬金術師が其れは行えん」

斬「……」

追い剥ぎ。

犯罪への告白をしてどう言ってほしかったのか。それは斬にもわからなかった。


斬「……よくない事をした」

言葉を探しても見つからなく、ただ思っていた事が口から漏れた。

恭介「ふむ……」

思うことがあったのか、口元を隠すように手を当てた。


恭介「錬金術師。即ち欲望の摩天楼」

恭介「空蝉うつせみと言ったであろう。生者は多かれ少なかれ求心する。その量と物は個々で異なりはするがな」

恭介「善悪も優劣も有りはしない。貴様も。錬金術師もな。例えるなら自然の摂理である弱肉強食の世界成り(なり)」

斬「……どういうこと?」

恭介「蟷螂とうろうの斧とも言ったであろう。自分の力量をかえりみない虫は轢かれて幕引きする」

恭介「それは事実であり、俺も理解する錬金術師の姿」

恭介「はて。それをどう思う? 賞賛か嘲笑か侮蔑か。それもまた外野の自由だ」

斬「……」

納得した表情は見せない。


恭介「構わん。賛同。修正。拒絶。許容。どれを選択することも自由だ」

斬「……そんなの無理だよ。マサが人の話を聞くわけがない」

恭介「修正。それは確かにあの男には叶わんだろうな。ならば答えは明白。別の選択肢を選べ。離れよ。もしくは受け入れろ」

恭介「錬金術師の思想であれば。恐らく嫌悪されるリスクを背負う事こそが美学であろうな」

斬「……」

斬(マサの思想……)

思想という表現が適切かわからない。

ただ、竹原正明は何かしらのカタルシスを持っているのは斬にもわかる。


それはわかるが――


斬「……そんなの、おかしい」

恭介「ククク、可笑しいゆえの錬金術師であろうが」

斬「……」

斬「モチが知っても、絶対心配すると思う」

斬「モチに合わす顔がない」

ハッキリと首を横に振る恭介。

恭介「ふう」

ゆっくり溜息をついてから。

恭介「今――貴様は自分を正当化するために第三者を用いているに過ぎん」

恭介「是とはしないが否もない。だが常識を盾に議論を卓越を試みるとて、だ。その例はあまにも幼稚」

斬「……」

恭介「あれは憎しみから生まれた忌み子。あれが錬金術師と交友関係がどうかは知らんが、実際それを目の当たりにすればあの女は心配などしない」

斬「そんなことない」

恭介「阿呆が。あれは錬金術師でさえも凌駕する邪教だぞ」

斬「ない。絶対心配する。恭介は見てないからそう言えるんだ」

斬「本当に酷い外傷だったんだ。全身打撲で、骨も折れてるかもしれない」

斬「流石のモチも心配すると思う」

恭介「……やれやれ」

認知的不協和か。これは一悶着ありそうだな


◆【自宅】

望代「がははははははは!」

望代「ひゃーーーっはははははは!」

望代「なにこれちょーボッコ。どんだけデカイニキビ潰したんだよ」

望代「ううぅ。顔がブサイクで力が出ない……」

望代「竹パンマン、新しい顔よ!」

望代「よし! これでイケメン100倍だし!」

望代「でも現実はー?」

望代「はい顔の交換できませーーーん。ブサイクで生きてくださーい」

望代「くふッ! くふふふふ! 顔! 顔! ははははは! 竹原の名前は今日から顔!」

正明「ヒヒヒ!」

この後めちゃくちゃ暴力した。

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