ネリシャとリリシア
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強烈な目まいにより思わず気を失いそうになる来人。体全体がファルムスの呪いに拒絶反応を示している。まるでこのまま指一本も動かなくなってしまうような体が重くなる感覚が来人を襲う。だが倒れるわけにはいかない。
「え?一瞬だけすごかったけど、もう見るからに満身創痍じゃん。弱すぎない?」
笑いながらそう言うバルキラの目は、もはや来人に興味をなくしたかのようにリリシアの方だけを見ている。
「バルキラ、確かにお前の世界でお前らパーティーは最強だ。誰も勝てないさ。お前たちがその世界のルールだっただろうね。」
ゆっくり、そして確実に来人の指の先がバルキラのほうを向く。
「ん?君まるで前の世界の僕を知っているみたいなはなしかただね?なんでだろ?まあいいね。さようなら。」
なん百もの魔方陣が一斉に展開され来人のほうを向く。
「でもこの世界は違う。誰が最強か、何が正しいのか、決めるのはこの世界の住人でお前じゃない!」
来人の指先が魔力を帯び始める。
「スキル[絶海]、発動。」
刹那、バルキラの魔方陣が砕けバルキラが苦しみ始める。
「くっ、苦し、、なん、、で、ぼ、くが、、」
絶海は相手の体の認識能力を低下させ間違った情報を体に認識させるスキルだ。つまりバルキラの体はここは海だと誤認しているためバルキラは呼吸できないのである。
「おか、、し、い」
「お前は特別なんかじゃない。だが、そう思ってしまったのはお前のせいじゃない。殺しはしないから少し寝ていろ。」
どさっ、とバルキラが白目をむいて倒れる。
「リリシア、すまないが、バルキラや他の奴らを縛ってってくれないか?俺はちょっと休、、む、」
ファルムスの呪いにより来人の体はすでに限界を超えていた。体が石のように動かなくなり意識が遠のいていく。
「へー、アナタ面白いことするね。ふふ、これからがたのしみだなー。」
気を失う瞬間、来人は誰かのそんな無邪気な声を自分の体の中から聞いた気がした。
~第407世界担当執行部にて~
「来人先輩大丈夫なのかな?」
「真紀さん。そんなことより真紀教って何ですか?来人さんキレますよ。」
「ユミー、違うんだよーあれはサクが勝手に、」
「まってほしいっす、サクのせいにするんすか?真紀の姉貴が女神になりたいってい言ったじゃないっすかー。」
「だからって、邪神来人はないでしょうが。」
「それ知らないっす。サクたちの世界の住人が勝手に作った話ですよー。」
「とにかくです。私は関係ないので、サクさんと真紀さんで真紀教問題は解決してください。」
ガックシ、と肩を落とすサクと真紀。まあ、基本的にこの2人は暇なのでちょうどいいだろう。そんな平和な第407世界担当執行部の部屋にいきなり連絡が入る。
「こちらグラグ、ダグリウス陣営に動きあり。部下の捜索をあきらめ勇者トモヒロ探しを本格的に始める模様。時間の猶予はあまりない。」
「こちらユミ、まだ来人様が帰りません。ですが、その余裕そうな声を聞いていると、上手くいったということだけは伝わりますよ。」
「来人様の言う通りのことは全てあちらにばれないように完遂したつもりだ。うまくいけば奴は罠にかかる。」
「はい、グラグさんは速やかにこちらに戻ってください。」
「了解。」
来人の優秀な部下達(2人ほど戦力外がいるが)は来人の野望に向けて進む。自分たちの主、来人の心配を少ししながら。
~第407世界にて~
「来人様なんで倒れたんですか!来人様が死んだら私も次、来人様が行く世界についていきますからね。」
バルキラとの戦闘(一方的な蹂躙?)から3日後、目を覚ました来人はおそらくずっと看病してくれて来人が起きてから来人から離れようとしないリリシアにそんなことを言われる。
「まあ、それでもいいですけどねー。私は永遠に来人様の剣です。まあそれ以上の関係になりたいと来人様が言うなら、、、仕方ありませんね。」
うん、どうしたリリシア?なんだか地球のストーカーがかわいく見えてくるようなことを言っている。ちなみに担当神は死んだら消えてしまうけどね、、、
「来人ー、ネリシャ?って人がはなしたいことがあるって。大広間にきてー。」
療養中なのに、、、担当神忙しい。なんて思っていると、リリシアの顔がちょっと暗くなるのに気が付く。
「リリシア、大丈夫君に何かしようとしても僕が対処する。この前も僕が守ったじゃないか。」
「わかってます。でも、私が来人様をまもるんです。」
少し元気が出てきたリリシアと一緒に来人は大広間に向かう。
「助けてくれたことに感謝しているわ。私はネリシャ。こう見えても勇者パーティーの一員よ。」
大広間につくと青髪の少女が話しかけてくる。
「俺は来人。早速だが、事情を聞かせてもらえないだろうか。」
ネリシャはリリシアに気が付くと一瞬目を丸くしたが気にせず話しはじめる。
ネリシャは向こうの世界で最強の槍使いだった。しかし、他のパーティーメンバーの日ごろの素行や自分の持っている才能に依存して努力を全くしない態度が気に食わず、自身はただ槍の修行ばかりをするようになり他の事にはだんだんと興味がなくなっていった。
そんなある日、勇者トモヒロとこっちの世界に召喚される。召喚された都市ではカイ教と真紀教が対立していた。それに目を付けた勇者トモヒロは自身のスキルを使いカイ教と手を組み真紀教を弾圧することでカイ教に恩を売りその中心人物となり権力を手に入れようとした。トモヒロにとっては手を組むのは真紀教だろうがカイ教だろうがどっちでもいいのだろう。最終的に乗っ取るのだから。ただ、元から追放などをしているカイ教のほうが自分の好みだっただけだろう。
ネリシャは圧倒的な力を持つトモヒロ達が自分達の都合でその世界の在り方を変えてしまうのに抵抗を覚えた。カイ教によって本来、私たちがこなければ追放されずに済んだ人が、殴られ、追い出され、苦しんでいるのを見るたびにトモヒロが、いや、私たちなんかこの世界にいなければよかったのにと思った。
だからかつての仲間と戦うことを決めた。
勝てるはずだった。自分の一生をささげた槍ならば。負けるはずがなかった。あんな、才能に依存して努力しないものに。
自信しかなかった。でも負けた。そして今に至る。
ネリシャの話を要約するとこんな感じだ。
「私と同じです。」
リリシアが口を開く。
「私も貴族の付き合いが面倒で剣の修行ばかりしてました。そして、父が反逆罪でとらえられたとき私は貴族の事なんか全く分からずなにもできませんでした。」
「あなたは確か、、、リリシアさん?」
ネリシャはあまり覚えていなさそうにそう聞く。
「はい。私はあなた方勇者パーティーに何もかも奪われました。」
「そう。それはほんとうにごめんなさい。」
「いえ、私話を聞く限りあなたは何もしてなくて、、私も剣に逃げてて、、」
複雑、なのだろう。リリシアが辛そうに笑う。ちょっと場の空気が重くなる。
「よし、分かった。ネリシャどうやら君も不遇キャラのようだ。」
この場に合わない明るい声で来人が言う。
「ふぐうきゃら?」
「うん、不遇キャラはこの世界で絶対に幸せになるんだ。」
「なにそれ」
「来人様の言うことは正しいんですよ。なにしろ神様ですし。」
「ふふふ、やっぱりね、この世界に来る前に会った神様と雰囲気似てるもんね。あっちの世界は、私ずっと一人だったから寂しくて悲しかった。だからこっちの世界であなたたちと会えてうれしい。ありがとう、神様。」
「さすがに神様って呼ばないでよ。それから、、、ネリシャ、リリシア、俺についてきて。チートスキルを楽しんでる勇者君をこらしめないといけないから。」
「はい」
「うん」
二人の不遇キャラは原作で見られなかったとびっきりの笑顔を来人に向ける。
更新遅くなりました。体調不良です。すみません。