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補遺註解一
エクスターゼ(独): 脱自、脱自態。ギリシア語でエクスタシスἔκστασις 「外に立つ」ことを言い、脱魂の意。英語ではエクスタシーecstasy 通俗的には快感の絶頂で忘我の境に陥ること、宗教的には神に近く接するような超越的瞬間などを云う。『パイドン』(プラトン著)の中で、ソクラテスは「純粋にものを見ようと欲すならば肉体から抜け、魂によって事象そのものを見なければならない」と言った。自らを超越して客観的に観照することができる状態。哲学者ハイデガーによれば西欧伝統の固定的自我から脱却乖離し、精神が非対象化的な在り方をしている状態。すなわち人間は未来に必ず現実化する『死』に対して眼を伏せ、固定的・対象化的な生き方に埋没し、非本来的な生き方をしているが、『死』を予定して覚悟する超越的時間性を観照し、生産効率・支配優位・所有権力を追求する価値固定・静的なコギトから脱自して生成的な状態になることを示すと解釈する。