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薄い彼女  作者: りゅう
15/29

14 バディを探せ1

 三月も後半になると、うららかな陽射しが降り注ぎ思わずゆったりしてしまう事もある。


「重役出勤だね」

「しょうがないだろ?」

「ふふふっ」


 そう笑って俺の腕に縋り付く麗華。それ以上は追及しないんだ。


「おはようございます!」


 一階の花屋の前を通り過ぎようとすると明るい声で挨拶された。


「あら、妖子ちゃんおはよう」

「お、おはよう」

「龍一、まだデレてる?」


 麗華が可笑しそうに笑った。俺はデレてない。けど、ちょっと焦っただけだ。何故なら妖子の後ろに上条絹が見えたからだった。

 上条絹はゼミは違うが同級生だから麗華ももちろん知っている。俺は二年の頃に勝手に盛り上がっていたことがあった。そのあと今宮麗華と仲良くなったので忘れていたんだが、この前の夢に登場して思い出した。それで、ちょっと焦ったのだ。


 この日俺達は、いつものように共感定期便に出発して昼頃戻って来た。まぁ、重役出勤してるので仕事をしたのは実質二時間ほどだったけど。


  *  *  *


 俺達が仮眠室から出て来ると接客テーブルには夢野妖子がいて隣には上条絹が座っていた。


「おう、帰ったか」と意次。

「先輩、お帰りなさい!」妖子が元気に言った。

「ただいま!」

「あら。えっと、上条さん?」と麗華。


「こんにちは。上条絹です」

「こんにちは」


 驚いたが挨拶くらいは出来る。


「いま、夢野妖子のバディに誘ってたところだ」意次が言った。


 上条絹を? 彼女にも共感能力の才があったのか。ちょっと驚いた。


「お帰りなさい。あら、ちょっと混んじゃったわね」


 希美が出て来たが、お茶を用意しようか迷っている。


「そうだ。ちょうど昼時だし今日は外で食べるか」


 そんなことを言って意次は近くのレストランに予約の電話を入れた。


  *  *  *


 そこは俺達がまとまって座れる席こそあるが、内緒話をするような場所ではなかった。ただ、明るいテラスに面した席で窓も開けられていて気持ち良かった。テラスの外は公園だ。


「いいレストランね」麗華が言った。

「まぁ、学生はあまり知らないだろうな」


 意次は、ちょっと大人風を吹かせているっぽい。


「私達も、あまり来ないけどね」と希美。

「バラすなよ」と意次は笑いを取った。


 微妙な繋がりの集まりなので食事の時間は静かに過ぎていった。

 ただ、そうは言っても全員初対面ではない。それぞれに知っているのだが何を共通の話題にするのかちょっと迷っている感じだ。


  *  *  *


 それでも食事が終わるころには軽い冗談を言うようになっていた。


「上条さんが妖子ちゃんと知り合う切っ掛けって何だったんですか?」麗華が上条に聞いた。バディに選んだ事だろう。


「私、妖子ちゃんとは公園で会うことが多くて、それで仲良くなったんです」

「ああ、アパートが近いから」と、思わず言ってしまった。

「あら、龍一。良く知ってるわね」


 そりゃそうだ。


「同じところに、山田がいるからな」


 これは、本当だ。俺と良く遊んでいた友人が同じアパートにいる。上条絹とは違う階だが。


「ああ、たまに会います」と上条。


 別に変な奴とは思われてないようだ。危ない危ない。

 もちろん、上条のアパートを知っているのは例の夢で行ったことがあるからだ。当然、ここにいる上条はそのことを知らない。


「お前ら、あまり知らなかったのか?」意次が不思議そうに言う。

「同級生は、結構いますからね」

「私は、編入だし」と麗華。


 そう、麗華は二年から編入してきたのだ。


「それにしては、お前らは仲良くなるの早かったよな」と意次。

「そういう言い方は失礼よ」希美から、すかさず突っ込みが入った。


「まぁ、そうですね」そこは俺も意外な気がする。

「あれ? もしかしてバディを探してた?」

「うん。それはそう」麗華は正直に言った。


 麗華は元々この学園都市で育っていたが、どうもバディを探すために他の大学まで行ってたようだ。だが、お目当ての相手が見つからず帰ってきたら俺がいたわけだ。


「遠回りしちゃったのよ」

「苦労したんだな」


「今では公園で有名なカップルですけどね!」妖子が言った。

「えっ?」と麗華。

「いつも、絹さんと羨ましいって見てました」

「妖子ちゃん!」上条は、ちょっと慌てた。


 バディを探すには共感チェックを使う。まず、共感能力者のオーラが出ていないことにはどうにもならないからだ。例えオーラが出ていたとしても適性が無いとダメなのだが、これは試してみるまで分からない。

 その意味では麗華は沢山試したのかと思ったが、結構いると言っていたオーラ持ちがなかなか見付からなかったようだ。神海一族なら沢山いるのかと思ったがそうでもないようだ。


「それで私、絹さんに適性があったんで思わず誘っちゃったんです」


 妖子が共感チェックを使えるようになったのは最近だからな。


「お客さんも含めて探したんですけど、なかなか見付からなくて」と妖子。


「このところ適性者が減ってるからな。うちも、以前はもっと社員がいたんだが」と意次。


 そう言えば、仮眠室は三部屋あったな。


「以前は仮眠室が満杯になったりしたんですか?」

「ああ、もちろんだ。いま会議テーブルがあるところも含めて四部屋使っていた」


 なるほど。人数が減って使い方を変えたのか。


  *  *  *


「そう言えば、バディって同性でもいいんですね」


 レストランからの帰り道、俺は意次に聞いてみた。


「ああ、問題無い。同性のほうが長く続くという意見もあるくらいだ」


「なるほど。確かに、異性だと問題が起こり易いでしょうからね」


 とりあえず、この日は顔を合わせをしただけだった。上条絹と夢野妖子がバディになるのなら、後は意次と妖子に任せればいい。

 俺達はいつも通り共感定期便をこなしていた。


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