>>> 前編
わたくしの妹はわたくしの2歳下に生まれました。
可愛い可愛い天使のような妹は、両親から大変可愛がられ、誰よりも愛されました。
妹を愛した両親は妹の願いを全て叶えて上げました。
最初は純粋に『幼児の我が儘』でした。
何でもイヤイヤと嫌がる妹から嫌がる全てを遠ざけ、欲しがるものだけを両親は妹に与えました。
食べ物に始まり、使用人。そして姉。
自分の視界に嫌なものが映るのを嫌がる妹の為に、直ぐに妹だけの専用の家が建てられました。その家に入れるのは妹が大好きな両親と妹が気に入っている使用人だけ。
甘いお菓子と大好きな玩具。
美味しいジュースにフカフカのぬいぐるみ。
妹がお姫様の扱いを受ける“女王”として頂点に君臨するお城の完成です。かしずく両親はとても幸せそうでした。
わたくしは妹のお城から追い出された哀れな咎人?
妹は自分のお城の窓から外にいるわたくしを見つけてはよく両親と一緒にわたくしを指差して笑っていました。
「親に捨てられた可哀想なお姉さま!」
遠くから聞こえてくる妹の楽しそうな声はわたくしをいつも嘲笑っていました。
わたくしはそれを…………
全く羨ましいとは思いませんでした。
◇ ◇ ◇
妹専用のお城は、本邸の横に建てられた小さな『白いお城型の別邸』で、妹が選んだ使用人しか入れない為に5人にも満たない使用人達だけが管理していました。
そんな“選ばれた使用人”も、妹が少しでも機嫌を損ねればお城から追い出されてしまう為に、直ぐに入れ替わります。しかも妹が元々居る使用人たちの殆どを嫌ってしまった所為で、入れ替えには新しい使用人を外から新しく雇い入れなければいけません。何度も何度もそんなことを続けていた所為で、雇い入れる使用人の質も今ではあまり優秀ではない者になってしまっていました。
そんな人たちが管理するお城なので……今のお城は妹の目に映らないところは管理の行き届いてはいない、薄汚れた外見のお城となっていました。
本来ならば妹の側に居る母が管理すべきところなのですが、母の側を離れたがらない妹の為に母は常に妹の側で妹の相手をしています。父は仕事があるので本邸に戻っては来ますが、妹が呼ぶので仕事が無い時間は妹の居る別邸へと急いで駆けて行きます。
……なら、別邸で仕事をすればいいのでは、となりますが、妹がそれを嫌がり、何より父の側近などが『自分のお城』に入ることを嫌がる為に、父は本邸と別邸の行き来を毎日何往復もしなければならなくなっていました。
そんな両親が別邸の外見や妹の知らない場所まで細かく目を行き届けることは出来る訳もなく、妹の為の『煌びやかな自慢のお城』は、わたくしから見れば『とても羨ましく思う場所』ではありませんでした。
両親は妹の為に大変苦労している様でした。妹の我が儘に応え、妹の気持ちを満たし、妹の笑顔を守る為に自分を犠牲にする。それが『両親の望んだ事』でした。
だから両親は、常に疲れた顔をしていましたが、とても幸せそうでした。
わたくしは両親から放置されてはおりましたが、昔から居る邸の使用人たちに守られ、親の愛が無い以外は、とても平凡に成長できたと思います。
わたくしの家は侯爵家です。
当主である父は妹への異常な愛情はありましたが、それ以外は極々平凡にちゃんと『侯爵家当主』をしておりました。
わたくしの事を『次期当主』と認め、必要な教育も受けることができました。
そして、両親から愛される妹は……
◇ ◇ ◇
お菓子しか食べない体は栄養が足らずに成長が遅れ、日を浴びない体は病気がちになり、勉強をしない頭は狭い世界しか知らず、体のケアを邪魔くさがって嫌がり、玉のように天使のように可愛かった妹は……
今では枯れ草のように若さを感じさせない外見へと成長してしまっていました。
なのに目だけはギラギラと何でも欲しがり、未だにわたくしを見かけては『わたくしがその時身につけている全て』を欲しがりました。
ですが欲しがったところで、好き嫌いなく何でも食べて育ったわたくしの体型と、お菓子とジュースと果物だけを食べて育った妹の体型が似る筈もなく。
妹はわたくしから奪ったドレスを身に着けてみてはその体型の差に癇癪を起こして泣いている様でした。
両親はそんな妹が可愛そうだと、わたくしの体型を妹と同じになるように食事制限をさせようとしましたが、動くのが遅過ぎました。
そもそも妹とわたくしは2歳の歳の差があります。そしてわたくしは『ちゃんと栄養面の考えられた食事』をして育ってきました。そんなわたくしの体を今更妹と同じ様にするなど不可能でした。そもそも身長差があり、骨格、肩幅が違います。今更わたくしが骸骨のように痩せ細っても妹と同じになれる訳ではありません。
そして何より『わたくしは次期当主』です。おかしな減量をして私の体が病気にでもなってしまっては、その後この侯爵家をどうするのかと、古くからいる年上の使用人たちから詰め寄られたお父様は、わたくしに無理な減量をさせることを諦めました。
そしてわたくしが妹の視界に入らないようにしました。
◇ ◇ ◇
妹は自分のお城から出ません。
……もう出られないのかもしれません。
散歩を嫌がった妹に両親は散歩をさせませんでした。歩くのを嫌がった妹を椅子に乗せて、使用人が運んでいました。
そうやって育った妹が、本人が歩きたいと思った時に、歩けるのでしょうか?
妹はお城の窓からよく外を見ていました。
だから本邸に居るわたくしを見つけられたのです。
庭を散歩するわたくし。外に遊びに行くわたくし。お友達の家に行くわたくし。お茶会に行くわたくし。
妹はそんなわたくしを見つけては騒いだそうです。
「お姉さまの着ているドレスが欲しい!!」
と。ですが一度も
『わたくしも行きたい!』
とは言わないのです。
もしかしたら妹は本能で悟っていたのかもしれません。
『お城の外には自分の嫌なものや嫌なことが溢れている』、と。
そして既に自分の足が、“歩くのに不向き”になってしまっている事に……
お城から出ない妹の視界に入らないようにすることは簡単でした。
わたくしは別邸から離れた本邸の部屋で過ごすようになり、どんどんと『妹』という存在から離れていきました。
妹もそれを望んでいるのだろうと思っていました。
しかし、そうではありませんでした……
◇ ◇ ◇
狭い世界の中で両親と限られた使用人としか顔を合わせない、会話をしない妹は、『わたくし』をずっと意識していた様です。
『姉』という存在が、妹からすると『特別』な存在となっていたのかもしれません。
姉が、ただ自分の人生を歩いている中、妹はそれさえも不満に思うようになってしまっていた様でした。
父は妹から「お姉さまばかりズルい!!」と言われて困っているとわたくしに話してきました。
そんな事を言われてもわたくしも困ります。
「では今からわたくしと妹の立場を入れ替えますか?
わたくしは別に構いませんよ?
あのお城に監禁されても」
そう言ったわたくしの言葉に、父は青褪めて沈黙してしまいました。
わたくしとしては本と食料さえ別邸に運んで下されば本当に監禁されても良いと思っているのですが、そんな事をしたところで事態が何も好転しないと父もきっと分かっているのでしょう。
昔の、幼児だった妹の我が儘を全て叶えて上げられていたようにはもうできないのです。
今更、妹がどれだけ騒いだところで、『今の妹』を人様の目に触れさせる事は、侯爵家当主である父にはできないでしょう。
そうしてやっと、やっと父は気づくのです。
自分たちが妹の為に、としてきた事が全て、
今の妹の我が儘を叶えられなくさせてしまっている事に……
お姉さまズルい!!
お姉さまばかり!!
わたくしから両親の愛情を全て奪っていった妹は、今は『わたくしを羨むだけの存在』となってしまっていました。
しかし幼児ではなくなってしまった今、いくら妹がわたくしを羨み、わたくしの物を欲しがったところで、妹にはどうする事もできないのです。
溶けた氷が、元の形へと戻らないように…………
◇ ◇ ◇
ずっとずっと妹の側で、妹のことだけを愛して生きていた母は最近泣いている様でした。
当然でしょう。
幼児は成長するのです。そうして『母と同じ一人の女性』とならなければいけないはずなのです。
それなのにずっと側で、卵を温めるように抱きしめて『小さいままで』なんて、そんな願いが叶う訳がないのです。
成長した妹は、きっと『母の願った娘』ではないでしょう。
だって『まともに育ててはいない』のです。
偏った食事しか与えられていない妹の見た目はお世辞にも『美しい』などとは言えないものになっていました。
どれだけ高級オイルを使おうと、どれだけ美容成分の入った石鹸を使おうと、どれだけ保湿成分のある化粧水を使おうと、妹の体そのものの基盤がボロボロであれば、何も吸収できません。
母が愛情を持って大切に大切に育てた妹は、愛情を一切貰わなかった姉のわたくしより、不健康で枯れ葉のような見た目に育ってしまいました。
だから母は泣くのでしょう。
何故、どうして?、と。
母の愛する可愛い妹は、母の愛情の所為でそうなったのだと、母は未だに気づけていない様でした。
ですが、母も馬鹿ではありません。
泣いてばかりでは妹を助けられませんものね。
お城から出られなくなってしまった妹を助ける為に母は、ここで初めて、嫌がる妹を置いて動き出しました。
◇ ◇ ◇
母は悲しむ妹を置いて、『妹を助ける手段』を探しに王立図書館に通いました。
──歩きたくない。嫌いなものは食べたくない。嫌いな人とは顔も合わせたくない。嫌なことはしたくない。楽しいことだけしていたい。嬉しいことだけ知っていたい。面白いことしか知りたくない。
自由にしている姉が癪に障る──
自分だけの楽園を追い求める妹の願いを叶えられる事などできるはずがありません。
それは人知を超えています。
──ならば、人知を超えた存在に助けを求めればいいのでは?──
母はどこまでも安直に物事を考えてしまう人でした……
そしてそれを、この大陸でも一二を争う程の所蔵を誇る王立図書館は叶えてしまいました。
禁書と言われるその本を、侯爵家の権力を使って手に入れた母と、それを後押しして力を貸した父は、遂に妹を助けてくれる存在と出会うことができたのです。
悪魔召喚という、禁断の術を使って…………
◇ ◇ ◇
悪魔……彼はとても美しい青年でした。
黒と赤と金を纏った天使のような美しい彼にみんなが見惚れました。
美しい彼のやわらかな美声にみんなが虜になりました。
そんな彼が言うのです。
「願いをどうぞ、御主人様」
恭しく頭を下げる彼に、一瞬悪魔だということを忘れさせられそうでした。彼の纏う色が白であれば、きっと彼を天の使いだと思うでしょう。
それほどまでに優しい笑みを、彼は浮かべていました。
彼の顔に見惚れた妹が夢見るように言いました。
「お姉さまの全てが欲しいの!」
それを聞いて両親は嬉しそうに微笑んでいます。
わたくしはそんな両親たちの見える位置に立たされて、全ての成り行きを見せられていました。
疾うに両親への期待は消え失せています。
この人たちがわたくしを“心無いもの”として扱ったとしてももう驚くこともありません。妹の別邸に無理やり連れてこられた時点で何となく察していました。きっとわたくしにとっては良くないことが始まるのだと。
ですが流石に悪魔を召喚したのは驚きました。そして出てきた悪魔の美しさにも驚きました。これ以上驚くことなどまだあるのでしょうか?
そんな風に思います。
◇ ◇ ◇
「全て?」
悪魔の美声が響きます。
彼の声は耳を通り、心の奥まで届くようでした。一言だけで心がとろけさせられそうです。
彼の声に頬を染めた妹が瞳をキラキラさせなから答えます。
「そうよ! お姉さまの全部! 欲しいの!」
「全部?」
「そう! 全部全部全部!! お姉さまの全てをわたくしに頂戴!!」
「代わりに何をくれるのかな?」
「お母さまとお父さまの命よ!!
2つも上げるんだから早くわたくしの願いを叶えて!! すぐに!!!」
キラキラとお菓子を強請るように妹が言います。それを両親が嬉しそうに見守ります。
さすがにそれにはわたくしもゾッとしました。
これが自分の血の繋がった存在なのかと怖くなります。
妹も両親も、とても命のやり取りをしている人たちには見えません。
お菓子が欲しいと強請る子供とそれを与える両親。言葉だけなら幸せそうな家族です。
ですが対価は命です。
妹は、わたくしの命を軽視するだけではなく、自分を愛する両親の命さえも自分の為に笑って差し出すのです。
これが、『両親が育てた娘』なのです。
◇ ◇ ◇
「いいのかい? 悪魔に差し出された魂は二度と神の元には戻れないよ?」
悪魔は意外と優しくて、そんな言葉を両親に投げかけました。
両親は嬉しそうに微笑みながら答えます。
「娘の為ならばこの命惜しくはない!」
「見たこともない神様は娘の願いを叶えては下さいませんもの。そんなものに祈るくらいならば、今目の前にいる悪魔に魂を捧げますわ」
そして両親は口を揃えて言いました。
「「愛する可愛い娘の為ならば」」
なんと献身的な親の愛でしょう。
きっと娘が一人であったのならば、こんな両親を神様も認めてくれたかもしれませんね。
ですがこの方たちはわたくしの命を使って娘の願いを叶えようとしているのですから、わたくしからすれば人殺しと変わりません。
わたくしは目の前で繰り広げられる馬鹿馬鹿しい茶番劇に淑女のマナーも忘れて溜め息を吐きました。
◇ ◇ ◇
「おいで。エカテリーナ」
悪魔がわたくしの名前を呼びました。
わたくしの溜め息に唯一気付いた彼が少しだけ可笑しそうに眉を下げてわたくしに笑いかけます。
そんな彼に近寄ったわたくしを、彼は悪魔とは思えない程の優しい瞳で見つめてきます。
「エカテリーナ。
君は抵抗もしないのかい?」
不思議そうに聞いてくる悪魔にわたくしは少し笑い返しました。
「もう全て諦めましたわ。いっそ考えることを止めたいと思う程に」
「そう。君も大変だね」
悪魔も苦笑するんだなと思いました。
そんなわたくしたちのやり取りを見ていた妹が不機嫌な顔になります。
「ひどいわ! この悪魔はわたくしの悪魔よ! お姉さま、取らないで!」
そんな妹に両親が続きます。
「エカテリーナ! 何をしているの!」
「エカテリーナ! 弁えなさい!」
久しぶりに両親に名前を呼ばれてなんだか不思議な気持ちになりました。
わたくしを“エカテリーナ”と名付けたのは両親のはずなのに、その名前を優しく呼ばれた記憶はありません。きっと妹が生まれる前までには確かにあったことだとは思うのですが……そう考えると少しだけ寂しさが込み上げます。
「ベアトリーチェ。こちらに」
悪魔が妹を呼びます。
名前を呼ばれた妹は、直ぐに表情を変えて悪魔に笑顔を向けました。そして甘えるように悪魔の腕に抱き着いて背の高い悪魔の腕に頭を寄り添えました。
「もっと名前を呼んで下さいな」
妹はきっと自分のことを世界一可愛いお姫様だと思っているのでしょう。
しかし、栄養が足らずにカサついた髪と肌に、女性らしい肉も付いていない胸と笑った唇の奥に見えるガタガタの歯並びが、妹をとても残念な生き物のように見せています。とても侯爵家の娘には見えません……
それなのに彼女本人には、自分が可愛く見えているのです。
そんな妹を、わたくしは心から『かわいそう』だと思いました。
◇ ◇ ◇
ベアトリーチェ。
両親に愛される妹。
欲しい物は全て手に入り、自分の好きなものだけに囲まれて生きている娘。
嫌なものから逃げることを許された女性。
それなのに、何にも満たされてはいない存在。
欲しい欲しい、羨ましいズルい、と強請ることしか知らない……かわいそうな妹。
──わたくしも貴女も、生まれる家を間違えたわね……──
心の中で妹へ話しかけます。きっとこれが妹と顔を合わせる最後だから。
わたくしを睨む妹と目を合わせて、そしてその視線を悪魔へと向けました。
「……さぁ、始めようか」
心を見透かすような深い色の悪魔の瞳に、返事を返す為にわたくしは小さく頭を下げました。
妹がわたくしと並ぶようにして立ちます。その表情はこれからの未来を期待してどこまでも眩しく輝いていました。
「あぁ、ベアトリーチェ……」
母がウットリと妹の名を呼びます。
「今から貴女は全てを手に入れるのよ。
……健康に産んであげられなくてごめんなさいね」
涙を浮かべながら母がそんなことを言っています。
妹はそもそも健康に生まれていたというのに。
「可愛い可愛い私の娘」
父が妹に話しかけます。
「さらに美しく、そして強く生まれ変わったら、たくさん外に遊びに行こうな」
自分たちが妹をこの城から動けなくさせたのに、そんなことすらも気付くことなく父がそんなことを言います。
そんな両親に妹が顔を向けて、嬉し泣きをしながら二人に言葉を返しました。
「あぁ、お父さまお母さま!
わたくしは生まれ変わって幸せになりますね!」
悲劇のヒロインとその両親。
そんな主人公たちの側で、さしずめわたくしは悪者役なのでしょう。そんなわたくしは、ただただ静かに全てが終わるのを待ちます。
あぁ、なんという茶番劇。
全て自分たちが作り出した舞台だと云うのに。
◇ ◇ ◇
「……では、ベアトリーチェ。
お前の願いを叶えよう」
「はい!」
悪魔の言葉に妹は元気に返事を返します。
「ベアトリーチェの願いの通り。
姉であるエカテリーナの全てをベアトリーチェに与えよう」
「はい!」
悪魔へと元気の良い返事をして妹がこちらを見ました。
その勝ち誇った笑みの意味は分かりませんが、きっと妹は今一番幸せの中に居るのでしょう。
「ありがとうお姉さま!
わたくしの為に生きてくれて!!」
「えぇ。ありがとうエカテリーナ」
「あぁ、ありがとうエカテリーナ」
妹の言葉に両親も追随します。
その、心にも無い言葉に、わたくしはもう溜め息すら出ません。
たださっさと終われと悪魔を見ました。
ニッコリと笑った悪魔が両腕を広げます。
「エカテリーナはベアトリーチェに!
ベアトリーチェはエカテリーナに!
エカテリーナの全てをベアトリーチェに与えよう!!
全ては『全て』!
例外なく全てを!
エカテリーナをベアトリーチェのものとする!!」
悪魔の言葉と共にわたくしと妹の足元には赤黒く光り輝く魔法陣が広がりました。そこから真っ黒な闇が出てきてわたくしたち二人を包みます。
自然と落ちる瞼に逆らわずにわたくしは目を閉じました。
これでやっと解放される。
そんな安堵がわたくしの心を満たしていました……
そしてわたくしは目を、開けた……──