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第8話 熱情のノクターン

「ジルっ!!!」



 ソフィはジルの自室をノックもせずに入った。

 着替えもそこそこに家を飛び出したソフィ。


 苦しそうなジルの姿を見て、傍にいたルノアール公爵家の執事に声をかける。


「容態はどうなのですか?」


「おそらく風邪だとは思いますが、少々こじらせてしまったようでして……」


「私もお手伝いしてもいいかしら?」


「そんな! ソフィお嬢様の手を煩わせるわけには……」


「ジルが心配なの! お願い、看病させて?」


 ソフィは自分でも驚くほど大きな声で告げていた。

 駆け寄るようにジルに向かって声をかける。



「ジルっ! 私よ、大丈夫?」


「ソフィ……? 来てくれたのかい……? 僕は大丈夫だよ、少し風邪を引いただけさ」


 無理に起き上がろうとするジルをソフィは制止する。


「ダメよ! 寝てなくちゃ……」


 そう言って、額に濡らした布を乗せる。

 その後もソフィは執事と協力しながら、何度も何度も布を変えたり、水を飲ませたりとひたむきにジルを看病する。



◇◆◇




 看病を続けるうちに、すっかりと月が煌々と輝く時間になっていた。


「あつっ!」


 ソフィがジルのおでこに乗っている布を取って、額に手を当てるとやけどするのではないかというほど、熱く感じた。

 身体を拭かなければいけないので、ソフィはジルに起き上がれるかと尋ねる。


「ジル、着替えたほうがいいわ。ゆっくりでもいいから起き上がれそう?」


「はぁ……はぁ……うん……」


 ジルは力なく返事をすると、熱い身体を起こす。


「じゃあ、私はあっちむい……」


 「てるから」と言葉を紡ぐ前にシルクの服を上半身を大きく広げて脱ぎ始めるジル。


「──っ!」


 咄嗟にソフィは後ろを向き、ジルの身体から目を離す。



「きゃっ!」


 後ろ向きになったソフィの背中に熱い背中が当てられる。

 次第にジルは、ソフィを捕まえるように大きくたくましい腕で抱きしめる。

 熱い吐息がソフィの耳元にも届き、ソフィの身体が内側から熱くなっていく。


「ソフィ……、もう絶対離さないから」


「っ!!」


 ソフィはいつもより吐息が多めで低音なジルの声に、お腹の中がきゅっとして身体の芯が熱くなる。


 腕を離され、ようやく解放されたと思われるソフィだったが、今度はジルのほうを向かされて頬を撫でられる。


「ジルっ……」


 ソフィの頬と髪を往復するようにジルの大きな手が撫で上げる。


「ん……」


 熱のせいで苦しそうな表情を見せるジルのサファイアブルーの瞳は揺らめき、目尻のほうに涙が光っている。

 服を脱ぎ捨てたことにより、布を纏わないジルの鍛え上げられた上半身があらわになっている。



 ソフィはジルに腕を掴まれると、筋肉のしっかりついた身体で抱きしめられる。


(──っ!! こんなにがっしりしてる……ジルも男の人なんだ……)



「ソフィ……、愛してる……黙って俺のものになって」


「──っ!」


 耳元で熱く囁かれて沸騰しそうになる。

 いつもより荒っぽい、強引なジルに驚きを隠せないソフィ。


 抱きしめられた腕から解放されると、ジルは熱っぽい視線でソフィを見つめる。



「もう無理、我慢できない……」


「──っ!!!!」


 そう言うと、一気にソフィとの距離を詰めて熱くしっとりとした唇をソフィの小さな唇に押し付ける。

 ジルから注がれる熱なのか、自分自身の熱なのかわからないまま、頭がぼうっとするソフィ。


 甘く甘く、そして獣のように求めるジルの欲望は一気にソフィに伝わる。




「はぁ……はぁ……」


 ようやく解放されたソフィは息が上がり、呼吸が乱れる。

 突然の熱っぽい展開にソフィは頭が真っ白になっていく。


 すると、ソフィの肩に急にジルの身体がのしかかる。


「ジル……?」


 ジルの様子をうかがうと、ジルはそのまま眠るように気を失っていた。


 ソフィはくらくらする頭を無理矢理働かせながら、ジルの看病を続けた──

読んでいただき、ありがとうございます。


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ジルの色気が皆様に届きますように・・・

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