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第17話 ジルの行方

「メアリー! ジルがいなくなったってどういうことなの?!」

「王宮を出てから馬車ごと行方がわからず……」


 ソフィは一瞬何か良くないことに巻き込まれたのではないかと心配でたまらなくなり、家を飛び出し探しに行こうとした。

 しかし、ぐっとこらえて冷静になり、頭を回転させる。


「おじ様とおば様はこのことを?」

「ご存じです」

「では、お二人にお任せしましょう」

「ソフィ様はそれでいいのですか?」


 メアリーはソフィの気持ちを案じて言っていることを、ソフィ自身もよく理解していたが、今自分が勝手に動くわけにはいかないと自制した。



 ルノアール邸ではひとまず王宮に連絡をしたのち、明日朝まで戻ってこない場合は騎士団への捜索依頼を出すことになった。

 ソフィは祈るような思いで一晩中眠りもせず、ひたすらに待ち続けた。


 だが、ジルが翌朝までに戻ってくることはなかった──




◇◆◇




 捜索が開始されるも、一向に戻って来る気配はなくソフィは食事もまともにとることもなく一時間に一回教会に祈りを捧げにいく。

 そしてその時は突然訪れた。


 ジルが帰って来たのだった。

 大きな外傷は特になかったが、頭を打っていた様子で意識が戻らずにいた。


「ジルっ!」


 ソフィはベッドに横たわるジルに駆け寄ると、涙を流した。

 安堵の涙でもあり、緊張がとけた涙でもあった。


 ソフィの声かけで目を覚ましたジルは、ぼうっとして自分の視界をじっくりと確認していく。


「よかった、目を覚まして」


 ソフィの問いかけにジルは無表情で呟いた。



「君、だれ?」


ここまで読んでいただきありがとうございます。



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