第16話 新婚生活の新たな問題
第二部を開始しました。
プロポーズをされて三ヶ月後、ソフィとジルは二人での新たな生活をスタートさせようとしていた。
ソフィは花嫁修業も兼ねて、結婚式を翌月に控えたタイミングからルノアール公爵家に住むことになった。
「ソフィ? 荷物はそれだけかい?」
「ええ、身軽の方がいいかなって」
プロポーズの時にもらった指輪を光らせながら、ソフィは荷物を整理していく。
一緒に眠るのは結婚してから、とふたりで決めたため、一ヶ月の間部屋は別々で、ソフィには客間の一室が与えられた。
「それにしてもこの本棚すごいな……」
「ええ、おば様が結婚のお祝いにって私にくださって、本当に嬉しいわ」
「母上も嬉しいんだよ、ソフィが娘になってくれて」
「そうだといいのだけれど」
本棚に少しばかり実家から持ってきていた本を詰めてみるが、まだまだ埋まらない様子を見て、ソフィはこれから増える本との出会いを想像してワクワクしていた。
「メアリー? これはどうしましょうか」
「あ、わたくしがしますね!」
ソフィ付きのメイドであったメアリーもルヴェリエ伯爵の許可を得て、ソフィについていくこととなった。
ソフィにとって親しみ慣れた彼女と一緒なことは非常にありがたく、心の安らぎのひとつでもある。
皆でソフィの荷解きに立ち会っていたところ、コンコンとドアをノックする音がした。
中に顔を見せたのはジル専属執事のクロードで、彼は変わらずきちんとした身なりをしてぶれないお辞儀で挨拶をする。
「ソフィ様、ようこそいらっしゃいました」
「クロードさん、ごきげんよう。これからよろしくお願いいたします」
「もちろんでございます。何かございましたらいつでもご相談くださいませ」
ソフィに挨拶をすると、クロードは「ジル様」と声をかけながら言う。
「ランチの準備が整いましたので、よかったらダイニングへいらしてください」
「わかった、ありがとう」
おおかた片づけは終わっていたため、ソフィとジルはその足でダイニングへと向かった。
ダイニングではジルの両親であるルノアール公爵とその公爵夫人がすでに席についていた。
二人が席についたのを見ると、公爵は話を始める。
「ソフィ、ようこそルノアール邸へ。これからよろしくな」
「ご無沙汰しておりました、おじ様、おば様。それからどうぞよろしくお願いいたします」
「まあ、これからはお義母様と呼んでちょうだい」
「母上、ソフィの気持ちもあるからゆっくり待ってあげてくださいね」
気がせいてしまったわ、と口元に手をあてて上品に笑う公爵夫人。
「さ、いただこうか」
公爵の合図によってノンアルコールであるシャンパンで乾杯をすることとなった。
◇◆◇
ランチを終えて午後をゆっくり過ごしたところで、夜にラウンジでソフィとジルはホットミルクを飲んで語り合っていた。
何度も足を運んだことのあるルノアール邸ではあったが、それでもそこに住むとなると緊張もするもので。
ソフィは不安な気持ちを吐露していた。
「私、大丈夫かしら」
「え?」
「やっていけるかしら、ジルの妻として」
不安そうに俯く彼女の手をジルはすくいあげて、優しく両手を握る。
その手は角ばった手ではあるが、ソフィを大事に大事に想って包み込んでいた。
「安心して。必ず僕が守るから。一生、必ず」
「ジル……」
ソフィは頭を撫でられると、心が落ち着き、安心できた──
翌日、ジルは仕事のため王都から少し外れた街へと出かけたのだが、ソフィは帰りは夕方頃と聞いていたため、それまでゆっくりと好きな本を読んで過ごしていた。
すると、メアリーが騒がしい様子でソフィの部屋へと駆けこんできた。
「大変です、お嬢様っ!」
「もう、これからは名前で呼んでって言ってる……」
「ジル様がいなくなったと連絡が……」
ソフィの心が大きくざわついた──
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