レベル無しの実況者、勇者を追いかけます。 僕は死にましぇん
「おい、昨日の勇者の四天王討伐戦の放送みたかよ」
「見た見た。もう、迫力が超やべーの」
「まじで目の前まで魔法が飛んできて画面越しなのに本気でびっくりしたぜ」
「さすが、ピックだよなリアルタイム放送なんてあいつしかできないだろ」
レベル無しのあいつにしか
人は皆、産まれながらにレベル持っている。
レベル一で産まれ、成長する過程で何を為したかによりジョブが変わり、レベルもあがる。
ただ一人を除いて。
「勇者様! 今日は四天王のフレイムドラゴンとの戦闘ですね! 戦闘前に意気込みを一つお願いします!」
僕はピック。戦うことのできないただの村人。
レベルは無い。0とかじゃなくて、そもそも僕には皆が当たり前に言うレベルがわからない。
ただ一つ言えるのは
「ピック。君が何故か何の攻撃も受けないのは知っている。だからといって毎度、毎度、敵の周りをウロチョロするのはヤメロ」
僕には誰の、どんな攻撃も効かない。
「心配して下さりありがとうございます! 今日も勇者様の勇姿を画面の向こう側で見守っている世界中の人々に、このピックがお届けします!」
映像をリアルタイムで各都市の冒険者ギルドのスクリーンに写す魔道具を手に勇者の右斜後ろに立つ。
勇者はダンジョンと化したフレイムドラゴンの巣を進んでいく。敵を倒し、ときには罠を解除して。
「勇者様は順調にダンジョンの内部を攻略しています。この落とし穴の仕掛けなんかは最早定番のトラップで、解除するまでもなく飛び越えています! さすが勇者様! あ、そこ即死トラップあります。」
勇者はピックの言葉を聞き、即死トラップを魔法で壊した。
「君、何気に便利だよね」
「ダメージとか無いですからね! 勇者様はみんなの希望なのでトラップごときでやられないでください」
勇者様は四天王を倒して、魔王を討つ使命があるのだから! そして僕はそれをみんなに映像として届ける使命があるんだ。
ピックはダンジョン攻略中の勇者をあらゆる角度から映す。勇者の横から、後ろから、あるいは戦闘中のモンスターの隣から。
「それにしても、僕がモンスターの隣に行っても僕を攻撃しようとするモンスターは減りましたね」
勇者が始まりの村を出たときからピックは勇者の後を追っている。その頃はモンスターの隣に行って勇者を映そうとすると、モンスターがピックに攻撃しようとして出来ずに、戸惑うという事態が多発していた。
「そりゃあね。俺のレベルがまだ低い頃は君のその体質? にお世話になったけど、相手も馬鹿じゃない。学習もするさ。それに、勇者の俺がピックに助けられてばかりじゃ格好がつかないだろ」
流石勇者様! 格好良い!
フレイムドラゴンの巣らしく、蒸し暑いダンジョンを慎重に進み、ついにボス部屋の前まで来た。
「いよいよ戦闘になりますね。勇者様、準備はいいですか?」
「ああ、サクッとヤッてやる」
ピックは魔道具を勇者様の顔が映るように持ち、ボス部屋の大きな扉をゆっくりと開いていく。
「来たか、勇者よ」
扉を開けると燃え盛る炎を身にまとった巨大なドラゴンが勇者を待ち構えていた。
「さあ、四天王のフレイムドラゴンです。見てくださいあの四本脚の巨体! 口から出るブレスは摂氏1200度もあるそうです。ブレスだけでなく、その爪は地面をも抉る力がある剛爪!」
「騒がしい。噂の金魚のフンか」
フレイムドラゴンは煩わしそうに尻尾でピックを払おうとする。
invincible
「面妖な。これならどうじゃ」
invincible
何度か払おうとしたり、ブレスで焼こうとするがその度に不可解な文字が浮かび無効化される。
「ピックに攻撃しても効かないぜ?」
「噂は本当じゃったか。まあ、何もできん小僧一匹うろちょろしたところで変わらぬ。勇者よワシの餌にしてくれようぞ」
フレイムドラゴンは言い終わると動き出し、勇者と戦闘が始まった。
「フレイムドラゴンとの戦闘が始まりました! まずは爪での通常攻撃です。勇者様は華麗に飛び回って回避しています!!」
ピックは引きで全体を撮る為、一度戦闘場所から離れる。
僕は変わらないけど、勇者様はすごく強くなった。フレイムドラゴンは四天王なだけあって強敵のはずだけど、今の勇者様なら負ける気がしない!
「おーっと大きく息を吸い込んだ!これはブレスか!?」
吸い込み動作を見て勇者はフレイムドラゴンの背面へと回り込みブレスを避ける。
「いくら熱くても当たらなきゃ意味がないんだよ!」
勇者がフレイムドラゴンの背面に行ったと同時に、ピックも急いで近づき、勇者を間近で映す。
「華麗に回避ーからのースラッシュだー」
一撃入れたとはいえ、フレイムドラゴンの傷は浅く、あまり効いてはいない。
「ちっ 浅かったか」
勇者はそのままフレイムドラゴンの正面まで駆けながら水魔法を繰り出す。
「弱点属性の水魔法を当てる勇者様! これは効いてるか!?」
勇者が水魔法を当てたところが黒くなっていて、ダメージが通っていることを物語っている。
ピックは全速力で走り勇者についていき、フレイムドラゴンの横っ腹あたりから、転がってドラゴンの腹の下に入る。そのまま進み、丁度首の下辺りから魔道具を出すと正面から勇者を撮る。
「何じゃこいつは!! 鬱陶しい!」
ピックの動きが気になったのか、一瞬大きな隙ができた。
「もらった!!」
勇者は注意がピックに向ってる間に大きく飛び上がり、フレイムドラゴンの首を切り裂く。途端、大きな唸り声を上げて、フレイムドラゴンは倒れた。
「やりましたね!勇者様!四天王のフレイムドラゴンを倒しました!!!」
「結局、ピックに助けてもらったようなもんだけどな。でもやっぱり危ないからヤメロ」
「いいえ! 最後まで勇者様についていきます!僕は死にませんから!」
僕はピック。戦うことのできないただの村人。
僕の仕事は勇者様の勇姿を全世界に伝え、希望を広げること。魔王に支配されたこの世界で、人々が前を向いて歩いて行けるように。
始まりの村から魔王討伐後までかけたら書きたい。
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