表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/120

ある魔王の憂鬱 二

 町でも村でも、まぁ行商処でもいいのだが。

 とにかく俺は、今現在進行形で隣を歩く奴の隣を、歩きたくないといつも、常々、思っている。


 女性にも負けず劣らずな美貌を持つこいつは、舞踏家。

 舞いと呼ばれる、まぁなんかすごい技を継承している村の奴で、その華麗な動きの前ではどんな奴も足を止めて彼を見てしまう。


 少し離れた場所にいる女性二人組が、何やら俺たちを見てコソコソと話している。

 これはいつものあれだ、またあれだよ。


「モテるっていいよなぁ、俺もモテたい」

「は?お前何言ってんの」


 舞踏家が呆れたように腕を組んで、それから気づいたのか、二人組に妖艶に笑って手を軽く振った。女性たちはウットリした表情を浮かべている。

 歓声すら上げないとか何。ああ、これだから顔がいい奴っているだけで嫌味なんだよなぁ。イケメンって悪だよな、うん、悪だ。


「悪は滅ぶべきだと思う」

「は?何、自滅願望?」

「そうですね、どうせ今の俺は悪そのものですよ」

「は?ネガ期ならもやしにでも愚痴ってろ」


 見た目と反して、ほんとにこいつは口が悪い。

 どうしても女性と間違われてしまうから、こうなってしまったのはわかるが、それにしても、もう少し気を使ってほしい。

 仮にも魔王なのだし。


「リーパーなら、今頃愛しの“そうちゃん”と楽しく花見てるんじゃないかな……はは」

「何お前、本当にネガ期なわけ?」

「煩い!どうせモテない独り身なんて、今日も淋しくお一人宿屋ですよ!」


 舞踏家は、旅先で会った女性のとこにいつも転がり込むし、そうなると、俺は一人淋しい一泊を過ごす羽目になる。

 誰かいないかな、戦士……は家族いるし、リーパー連れてくと僧侶が拗ねるのが目に見えてわかるし、何より面倒くさい。


「はぁ……、じゃ集合は明日の朝、ここで」


 宿屋へ入り、店主に一人分の代金を出す。


「おっちゃん、一人分空いてる?」

「一人?兄ちゃん、後ろの方はお連れじゃないのかい?」

「へ」


 振り返ると、心底面倒くさそうに目を細めた舞踏家が立っていた。


「舞踏家?」

「明日もネガ期は面倒くせぇからな。早く金出せ」

「うぅ……、ぶとぅかぁぁあああ」

「泣くな!くっつくな!うわ、鼻水つけやがった!」


 なんだかんだで、この舞踏家は優しい。

 口は悪いままだけど。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ