第一話:バカ勇者現る
どうも、鱗雲之です。
ストレスで溜まった怒りをギャグにしてぶつけたら此んな作品が出来上がってました。
「おお……神よ……どうか我らに救いを……。」
荒れ果てた荒野で一人虚しく詠唱を唱えて居るのは、此の国──エルヴェラント国の王、ルスドレール・メル・ド・エルヴェラント四世。
四代に亘りこの国を守って来た、偉大なる王で有る。
一代目が国を建て、二代目が国を発展させ、三代目が戦争により国を護ったのなら、彼は国の混乱を鎮め、平和にさせた、平穏な王と云えるだろう。
然し、その平穏な王はボロボロの服と光の無い王冠を着け、必死に祈って居る。
事の発端は数日前、隣国との協定を結んだ彼が国に戻って来ると、国中が焼け野原と化して居たのだ。
そんな中、壊れた噴水で蹲っている兵士が一人いた。彼は訝しんだ。内乱だろうかと。
王は尋ねた。
「どうした、一体、何でこんな事に成って居る?」
兵士は答える。
「王様、魔王が攻めて来たのです。」
「魔王……だと?」
民は目線を低くし、強張った声で言う。
「はい……国民総出で闘ったものの……敢えなく負けてしまって……。」
と悲しそうに口を噛んで居る。王は冷淡に口を開いた。
「なら、私が闘って来る。魔王はどこだ?」
「お、王様⁉︎ そんな、王様一人では行かせられません‼︎」
兵士は立ち上がり、王に抱き付く。然し、脚を負傷して居るのか「うっ」と声を上げた。
そんな兵士に王は優しく話し掛ける。
「まだ、お主にはやる事が有るだろう?」
「や、やる事……?」
兵士は困惑して居る。良く見ると、右足には包帯がぐるぐる巻かれて居る。
「お主は残った国民を連れて、さっき協定を結んだキュルレ帝国に行きなさい。
……王直々の命令だ。お願い出来るか?」
「……はい‼︎ はい‼︎」
兵士は立ち上がって大きく頷いた。そして、ゆっくりと立ち上がった。
王はそれを見てくるっと反対方向を向いた。
王の心の中には怒りが込み上げて居た。
国をこんな風にした奴は、無辜の民の命を奪ったのはあの凶悪な魔王かと。
絶対に赦さない。そう心に深く刻み込んだ。
……意気込んで魔王の所に向かったは良いものの、結果は惨敗。
至る所を魔法で攻撃され、全身はボロボロ、魔法に傷一つ与えられなかった。
王は一縷の望みに総てを掛ける事にした。
一縷の望みとは、そう、『勇者召喚』で有る。
彼は見付けて居た。約三千年前、世界を守った勇者の事を。
その勇者を召喚した人物は判って居ない。
然し、その勇者は異世界から来て、そして絶大な力を持って魔王を倒したと云う。
御伽噺の様な話だが、王はこれに総てを掛けるしか方法が無かったのだ。
然し彼が幾ら祈っても祈っても、魔法陣はびくともしない。
王は「はあはあ」と息を切らして居る。意識が朦朧として居る。
何だか、目の前が二重に見える。その場にバタッと倒れた。
王はもう、魔法を発動させる魔力が残って居なかった。
そして「ここで終わりか」と思った。
命を懸けて護った国が、父から受け継いだこの国が、こんな事で終わるのは歯痒かった。
……でも、そんな気力はもう無い。王には力も魔力も何も残って無かったのだ。
はあはあと息を立てて地面に寝転ぶ許り。そんな事しか出来ぬのだ。王として恥ずかしい。
そうは思うものの、やはり全身に力は入らない。
だが、急に、魔法陣が光り始めた。ばちばちと大きな音が鳴っている。
王は驚いた。そして無い力を振り絞って立ち上がる。
そして目の前の魔法陣を眺めた。
暫く眺めて居ると、魔法陣から誰かが現れた。
粒子の光が体を形成し、神々しい光に包まれた、神聖な人物。
──そこに居たのは、
鼻提灯を垂らし、髪はボサボサ、乱れた服装とどこか焦点の合わない視線を持った、明らかにアホっぽそうな勇者だった‼︎
因みに、実は『Rɹænↄɐɹƚↄɐtion/リンキャルケイション』と云うかなりまともな小説を更新しています。
此の作品を読ませたのでしたら、此方もご一読願います。
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