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日帰り異世界は夢の向こう  作者: 扶桑かつみ


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088「玲奈とレナ(2)」

 夕方、現実と『夢』との違いすぎるギャップに遠く思いを馳せつつも、今日も今日とてクラブ活動が終わったら玲奈と一緒に下校していた。

 タクミも、最近は最低でも下校時にオレに付きまとわなくなった。この辺りは、友達がいのあるヤツだ。


 本来なら、友情に報いるためにも男の子として頑張らねばならないのだけど、今のオレは本来なら夢どころか妄想でしかなかった彼女作りに、どうしても力が入れられなくなっていた。

 ハルカさんの真実を聞いてからは尚更だ。


 だから玲奈に対しても、少し罪悪感のような思いを持っている。いつかは、きちんと話さないといけないだろう。

 しかし当の玲奈はオレの内心に気付いているのかどうか分からないが、こうしてオレと並んで歩いていた。


「もうすぐ王都探索だね。今度は大丈夫そう?」


 最近の玲奈は、話し方にどもりも少なくなっていたし、話すときも相手に顔を向ける事が増えた。

 今もオレの方にちゃんと視線を向けてくれている。玲奈個人としては良い兆候の筈だ。


「多分な。大勢参加することになりそうだし、もっと準備も整えるから大丈夫だろ」


「でも、帝国軍って強いでしょ」


「オレの感覚では、数が極端に増えてなきゃ何とでもなると思う。それより問題は、多分王宮の中だろうな。『帝国』軍がまともに手出しできないって言うくらいだし」


 そこで玲奈は「あっ」と口に手を当てる。


「王宮で思い出した。シズさんから伝言頼まれてたの」


「何か変化でもあったのか?」


「ウン。あれからシズさんが、シズさんというか『魔女』を乗っ取っている謎の魔導器とせめぎ合いをしてるんだって話しはしたよね」


「おう。スゴイ人だよなシズさん。あの世界のマジックアイテムとやり合うって、オレどうするか見当もつかないよ」


「そうだよね。あ、続きね。それでね、何とか優位に立ちつつある気がするって。あと、王宮が久しぶりにかなりの規模の襲撃を受けたって」


 あの辺の『ダブル』でない以上、『帝国』の兵隊たちで間違い無いだろう。


「そっちは、どうなった? まあ、少なくともヤられてないって事か」


「ウン。退却させたけど、アンデッドの犠牲は、いや犠牲じゃないのかな? は多くて、ともかく強かったし、数も確認できただけで30人くらいいたって」


「ああ、そりゃきっと『帝国』軍だな。両者ご愁傷様」


「でも、急いだ方がいいかもしれないって言ってた。何か魔法の道具の仕掛けようとしたり、最後に照明弾みたい魔法を打ち上げていたらしいから」


「色々と手を打ってるんだろうな。分かった、今晩、いや明日みんなに話してみる」


「ウン、お願い。私も頑張るから」


 意外という以上に真剣な眼差しを注いでくる。顔も正面でオレをガン見だ。

 その視線は、ボクっ娘のレナのもののように思えた。意識の下から玲奈を後押ししているかのようだ。


「玲奈がなにを頑張るんだよ」


 二つの事を思いつつ、とりあえずツッコミを先に入れる。

 関西芸人じゃないけど、ツッコミは会話の潤滑油だと、じーちゃんも言っていたものだ。

 熟練者の言葉を、ないがしろにしてはいけない。

 それは、現実も『アナザー・スカイ』も変わりない不変の真理だ。


「あ、ほ、ホントだね。何言ってるんだろ私」


「まあ、無事クエストクリア出来るよう、祈っててくれ。それで十分だ」


「ウン、向こうでのショウ君の無事を祈ってる」


「単数形なのは嬉しいけど、複数形で頼むよ」


「あ、また間違っちゃった。エヘヘ」


(ごまかし笑いも出来るようになったなんて、玲奈大進歩だ。お兄さんは嬉しいぞ)


 しかし、最近玲奈とボクっ娘が似てきている事が増えているので、ちょっと突っついてみようと、不意に思った。

 ちなみに向こうのレナの事は、レナという名前などパーソナルの多くは伏せたままなので、どう答えるのか興味もあった。


「あ、話変わるけど、前言ってた『夢』を見ていたレナの友達ってどんな人? 今から沢山集まるし、これからも色んな人とも会うだろうから、もし出会えた時のために予備知識として知っときたいと思うんだけど」


「え? あ、ああ、そうだね。会えたら私も伝言して欲しいかもって思ってたの」


「伝言か、了解。で、どんな人? 学年はオレらと同じだよな」


「うん。えーっと、えーっと、背丈は私と同じくらいで、髪は短くて、主語はボクで、あっ、あれ?」


 言葉を続けるほど、レナの中で混乱が広がっているのが如実に分かった。

 そのうち「いぇ、いや、ぼっ、ちが、わた」と、何か異形のものを呼んでしまいそうな意味不明の呪文になってしまった。

 二重人格というものはよく分からないが、意識や記憶を混乱させてしまったのかもしれない。

 これは緊急停止させるべきだろう。


「ごめん、突然聞いちゃって。マジご免。無理して思い出さなくてもいいから」


「ううん、全然大丈夫。けど、おかしいなあ、あんなに仲良かったのに」


「あ、あれだ。たまにあるだろ、突然ポッカリと忘れたりするやつ。あれだよ」


「そ、そうだよね。じゃあ、ちゃんと思い出せたらすぐ教えるね。私も伝言頼みたいのはホントだから」


(いや大丈夫じゃないだろ。動揺しまくりだろ)


 そうは思うが、心の問題なのだから下手に触れない方がいいという事が分かった以上、もう触れない方がいいだろう。


(けど、絶対あっちでボクっ娘にドヤされるよなー)


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