078「情報収集(2)」
という訳で、早々に移動となって公立の図書館へと向かう。
高校から歩いて行ける距離にあるので、軽く相談をしながら向かうこととなった。
「その襲ってきた連中って、ショウたちくらい強いんだよな。ご同輩の可能性は?」
「殺す気満々だし、全員が魔力持ちじゃなかったから違うと思う。あっちのどこかの国の兵隊とか騎士団とかだと思うけど」
「何か特徴はあった?」
「黒っぽい目立たない衣装で、目もと以外顔が見えなくて、統率がとれていて、無口なのが不気味だったな」
「それだけ聞くと、忍者かプロの暗殺集団みたいだな」
タクミの言葉に、オレも思わずステレオタイプな忍者軍団を思い浮かべてしまうが、慌てて首を横に振って想像を振り払う。
「馬上戦闘に慣れてたから暗殺者じゃないだろ。あと和風でもない」
「逃げてた女の子から話も聞けてないんだよね」
「うん。それどころじゃないから、お互い名乗ったりもしなかった」
やっぱり天沢の反応は解せないが、今は横に置いておくしかない。
「まあ、原因は横に置くとして、その襲ってきた連中が毒を使ってた可能性はないのか」
「見た感じは大丈夫っぽい。神官戦士さんも助けた人も何も言ってなかったし」
「ショウより頼りがいある二人がそう判断してれば大丈夫だろ」
「オレが頼りないのは認めるけど、そりゃないだろ」
オレが苦笑すると、タクミがオレの二の腕をポンポンと叩く。
「まあまあ、それより目的地だ」
続いて図書館で探してみると、数はないがそれなりに医療関係の本もあった。
しかし、専門的なためか本の価格が高いものが多いためか、閲覧のみで貸出不可のエリアに置かれている本が多かった。
また、見たい本は場所が分かれて置かれているので、3人で分かれて確保した読書用テーブルに本を山積みしていく。
「今後も使う技術になるだろうから、応急手当、応急処置とかその辺重視で詰め込んでいくか」
「そんなに全部、短時間で無理だって」
「こっちの借りられる分は持って帰ればいいだろ」
「これ全部は無理すぎだろ。取りあえずすぐ役に立ちそうなやつだけ借りるよ。徹夜して眠れなかったとか本末転倒だし」
そんな事をコソコソ言いながら本を借りて図書館も後にして、詰め込む事を優先するのでこのまま帰宅することになった。
そしてタクミとは家の方向が逆なので図書館前で別れ、天沢と二人で途中まで一緒に帰ることになる。
しかし、向こうでの事があるので、自然とオレが無口になって天沢がぽつぽつ話しかけてくるのを単調に返すだけになる。
「どうしたの? まだ何かあるの?」
天沢が、こっちに視線を据える感じで聞いてくる。
女の子は鋭いと言うべきなんだろうけど、この場合は逆に鈍感と言うべきなのではないだろうか。それとも、向こうでの事を踏まえての言葉や振る舞いなのだろうか。やっぱり、よく似た別人なんだろうか。
そんな事を思いつつも、オレが何も答えないのも問題だろう。
「うーん、ちょっとあるんだけど、向こうで解決しとかないといけない事だと思うから、話せるようになったら話すよ」
「うん、分かった。悩みとかじゃないならいいよ。あーあ、私も向こうに行けたらいいのになー」
無邪気にそう話す。
それはとても演技とは思えず、自然に出た言葉としか思えなかった。
だから、ちょっと思いついたことを聞いてみることにした。
「そういえば、前言ってた友達に連絡とって助けてもらえたりは無理なのか?」
「うん、連絡は取れないの。遠くに引っ越したし、どっちもスマホ買ってもらう前だったから、連絡手段もないの」
そう言い切られてしまうと、「そっかー」としか答えようがない。
結局、そのまま当たり障りのない話をして天沢と分かれ、家に帰ると図書館で借りてきた応急手当、応急処置など、とにかく即席で使えそうな医療知識を、ポンコツな頭にできる限り詰め込もうとした。
これだけ熱心に勉強したのは、高校受験以来かも知れなかった。
ていうか、学期末試験の勉強も今日は放ったらかしだけど、後で泣こうと腹を括る。
「邪魔! ここで本なんか読むなよ!」
イヤでも現実を感じさせる、マイリトルシスター悠里の容赦ない罵声が今日も飛ぶ。
でも、どっちが現実なのだろうか、などと頭の片隅で思いつつも、とりあえず知識の詰め込みに専念する。
「それに、こんなに本を積み上げて。自分の部屋で読めよ、このクソ!」
そこで何を思ったのか、妹はオレが図書館で借りた本を手に取る。
「応急処置? 医療? サバイバル? 何、またなんか変なもんにでも目覚めた?」
「ウルサイ、ダマレ。オマエこそ受験生だろ、部屋に籠もってろよ。オレは忙しいんだ」
こっちも容赦なく反撃する。
すると妹は、いつものような口答えもなく、しばらくオレを凝視、いやガン見しているらしい。
珍しい事もある。
「なにマジ顔してんだよ。変なモンでも食ったんじゃね?」
「オレにだって、マジ、じゃなくて真剣になる時ぐらいあるんだよ」
「ふーん」。それだけ言うと、驚くべき事に妹が引き下がった。現実でも、たまには変わった事件は起きるものらしい。
まあ、今日の所は、少し助かったとしか思わないが。
そしてその日は、出来るだけ早く寝床についたのだけど、気が逸るのがなかなか寝付けず、焦るのでさらに眠れず、最後に意識した時間は、いつもより遅いぐらいの時間だった。
さて、向こうでは何時間経過した後なのか、寝不足でも全然構わないので出来る限り早く目覚めてほしいと思った。





