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日帰り異世界は夢の向こう  作者: 扶桑かつみ


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070「滅びた都への道(2)」

 破棄された状態の王都ウルズは、アクセルさんのランドールから普通に進めば街道沿いに馬で3日くらいの距離にある。

 道中は狭いながらも平野が続くので、街道沿いを進む分には田園風景が続いている場合が多かった。

 そして王都の半ばまではアースガルズ王国が占領していて、現在は領土化が進められている。


 平和な時代であれば、ランドールの町からハイホースなど早い馬で走れば、1日とかからず王都ウルズに行く事もできた。

 飛行生物なら、ゆっくり飛んでも2時間ほどだ。


 しかし今は、王都ウルズのほぼ10キロ圏内は、亡者や魔物のうごめく魔の領域、モンスター・ハザード状態となっていて、武装無しに近寄ることはできない。

 特に王都周辺は日本風に言えば魑魅魍魎が跋扈する世界で、今の住人は亡者と魔物しかいない。

 人に出会えても、命知らずな死体あさりがせいぜいだろうと言われる。


 既に戦乱が終わって4ヶ月近く経っているので、人が住めない場所からは生き残った住民は各地に離散してしまっている。

 ランドールの町にも、戦乱終息から1ヶ月くらいはかなりの数の難民が押し寄せていたという。巡察した村々でも、そう言った人々を結構見かけていた。


 そして王都と王都に近い村々は、離散するか奴隷として捕えられるか殺されるかで全て無人の廃墟だった。

 放置された畑や牧草地も荒れ放題だ。植物が成長する季節なので、荒れ地や草原として自然に埋もれつつある場所も少なくない。

 主要街道ですら、通るものがほとんどいないので雑草で埋もれつつある。

 この国、この地域を立て直すには、多くの努力が必要だと感じさせる惨状だった。



「この先って、まだ生きてる人はいるのか?」


「アクセルの情報だと、この先の廃村で神殿が一つがんばっているはずよ」


 それほど広く無い道を馬で並んで歩いているので、前後での会話となる。

 当然ながら、護衛を兼ねるオレが前を進む。

 だから会話は、オレが横を向きながらだ。


「じゃあそこが最後の中継地だな」


「そうね。セーブポイントにはならないけどね」


「そう言うの、やめようよ」


 彼女は、時々わざとゲーム用語を口にする。何かの皮肉かユーモアなんだろうけど、今のオレはちょっとげんなりしてしまう。

 しかも馬上から見える視界の先には、こっちに近寄ってくる魔物の群れが遠望できる。進行方向なので、相手をするより他ない。

 その先に神殿があるからだ。


「それで、その神殿は魔物とか大丈夫なのか?」


「ここまで酷くなっても維持出来てるって事は、常時魔物避けの結界が張ってある神殿だから大丈夫よ」


「ネットでその情報は見た事もあるけど、本当にあるんだな」


 自分でもそう言ったように、この世界では魔物が近寄らないもしくは近寄れないように、神殿や街もしくは人が住む地域に、魔物除けのような魔法を施すらしい。

 多くが魔法陣を掘込んだりした固定設置式で、天然の魔力を利用して永久稼働する。


「神殿だけじゃなくて、大きな街全体とか城や砦にも同じような護りはされているわよ。お約束とばかりに、強い魔物やアンデッドには効果薄い事が多いけどね」


「この国の王都の結界とかは?」


「そりゃ戦争で破壊されてるでしょ」


「なるほど。でなきゃ魑魅魍魎が跋扈してないよな」


「昨日くらいから魔物の出現頻度も増えてきるし、王都辺りはキツイかもね」


 彼女の言う通り、王都ウルズに近づけば近づくほど状況は悪くなっていく。

 時期的にゾンビはもういないが、スケルトンの小集団くらいは当たり前。廃村に近づく時は、墓地には近寄らない方がいい。


 人の住む地域の筈なのに、アンデッドだけでなく魔物も随分と湧いている。特に森の中は危険だ。森を抜ける街道や森の脇を通る街道も、できればあまり通らない方がいい。

 人の営みが消えると魔力がその場に溜まりやすく、そこから魔物が湧いてくるかららしい。


 なお、魔力は知性で制御するものだと言われており、知性の低い動物ほど魔力の悪影響を受けやすいとされる。

 このためか、魔力の影響を受けた動植物が影響を受けて、魔物化している場合も少なくない。


 完全に滅びた国が魔物うごめく原生林に沈むというのが、この世界で時折見られる現象の一つだ。

 そして人の世界が広がるのを遅らせる大きな要因の一つともなっている。


 旧ノール王国の中心部も、現状では普通の人では進むことは難しいだろう。

 それでも今のところは、オレ達二人で対処できないようなアンデッドや魔物に会うこともない。


「確かに進むほど魔物は増えてるな」


「いい加減にしか鎮魂をしなかったんでしょうね」


「よくあるパターン?」


「ひどい戦争の後はね。私としては亡者じゃないだけ精神的に楽ね!」


「そりゃ言えてる!」


 ハルカさんと会話しながら、大柄な人型の魔物、不完全な形の食人鬼を一刀に斬り伏せる。

 2メートルを超える巨体も、今となっては倒すのが苦にもならない。


 とはいえ、戦いながら会話ができているが、物理的に楽とは言えない。

 幽霊のような実態のないアンデッドも厄介だけど、多くの魔力が漂っている場所の魔物は大型化、凶暴化したものが出現しやすくなる。


 矮鬼ゴブリン程度なら楽だけど、食人鬼オーガあたりが増えると手間だ。

 それもオレたちくらいの強さだと手間程度で済んでるが、この世界の普通の兵士(Dランク程度)だとCランクに分類される食人鬼相手では、1対5以上じゃないと確実に勝てない強敵になる。


 ようやく当面のモンスターを倒し終わったので、魔石の獲得や止めが必要なやつを探すなどの事後処理だ。


 

「そういえば、今までオークって見てないな」


「楢の木ならそこら中に生えてるでしょ」


「そのオークじゃなくて、モンスターのオーク。ゴブリンと並んで有名だろ」


 大きめのエルダーゴブリンを足で裏返しつつ話す。

 次に心臓の辺りを剣で突き刺すが、あまり気が進む作業ではない。


「ああ、有名なファンタジー映画に出てくるやつね。似た魔物ならいるわよ」


「やっぱり豚鼻のブサメンで、人やエルフと敵対してるのか?」


「魔物だから敵対的ね。矮鬼とは出現地域が分かれてる醜鬼ってのが見た目がちょっと似てるから、『ダブル』の間ではオーク扱いされてるわね」


「ハルカさん戦ったことある?」


「あるけど、ああいうマッチョ系は苦手ね。後衛で魔法連打してただけだったわ」


 そう言って彼女が軽く肩を竦める。


「こいつらより厄介?」


 ついさっき倒した、足ものとオーガもどきの死体を指差す。

 既に魔石は取ったあとで、不活性の黒っぽい魔力が漏れ出している。


「たいてい群れてるから面倒ね。十分な数の前衛並べて、後ろからマジックミサイルで掃討するのが一番楽かしら。魔法には滅法弱いから」


「へーっ。じゃあ、人をさらったり食べたりするのか?」


「矮鬼と同じように、その場でいたぶり殺す事はあるらしいけど、クズのオタクが大好きな中途半端に卑猥なことはしないわよ」


「ハっハっハっ、モンスターにも色々あるんだな」


 ハルカさんの蔑みぎみな目を誤摩化し笑いで回避しつつ、牛のような魔物の胴体から魔石を取り出す。

 牛と言っても、牛頭の巨人ミノタウロスではなく、普通の牛が魔物化したものだ。

 けど図体が大きいので、結構な大きさの魔石が手に入った。


 そしてこの牛のような魔物のように、人が住んでいる地域では人型以外の魔物は少ないが、たくさんの魔力を浴びて魔物化した魔獣モドキが意外に厄介だ。

 犬や猫、牛、馬、羊など家畜の魔物化したやつらのうち、特に大型は大きさだけで十分脅威だ。


 しかも揃いも揃って凶暴化して、擬似的に肉食化している。

 凶暴な目つきに肉食獣のような歯の並んだ魔牛は、見た目かなり凶悪だ。しかも共食いも平然とするし、合体や融合という感じで歪にくっ付いているものまでいる。


 動物だけでなく、草木の一部も森が深くなったりすると魔物化しており、食虫植物の凶暴化したやつみたいに厄介で、中には移動して襲いかかってくるアクティブなやつもいる。


 オタク的には触手プレイをしてくるネタ系のモンスターっぽいけど、実際相手にすると「もうそれ植物じゃなくて動物だろ」と素でツッコミ入れたくなる。

 しかも凶暴すぎて、エロさは皆無だ。

 たいていは完全に身動きを奪われるか、蛇の様にすぐに絞め殺しにくるか、というパターンだ。


 そして今までの道中はある程度アースガルズの兵士が鎮定しつつあるが、この先は無法地帯どころか人の領域ですらない。

 その証拠とばかりにこの日3度目の戦闘で、いい加減うんざりしてくる。


 しかも倒して前進を再開して1時間もしないうちに、新たな魔物の群れが出現する。まるでゲームのようだ。

 けどモンスターのさらに先には、目的とする廃村があり神殿の尖塔が遠望できた。

 ただ、眼前の魔物の群れは、神殿のある廃村を目指していたのでこちらには気づいていなかった。


「ひどいエンカウント率だよな」


「ゲームほどじゃないでしょ。1時間前進して5分か10分戦うだけなんだから」


「ゲームだと一回の戦闘で10分も戦わないだろう」


「はいはい、文句言わない。蹴ちらすわよ!」


 ハルカさんは気合を入れると、魔法の準備に入る。

 強そうな敵は少ないが数が多いので、まずはマジックミサイルなど魔法で一掃するのが定型化していて、オレは彼女が魔法を完成させるまでの盾や露払いが初手での主な役目になっていた。

 今は敵が気付いてないので、先制のために距離を詰める。


 本日最後となるであろう雑多なモンスターの集団は、まさに神殿を襲う為に集まっていた感じだった。

 こっちに気づくのも彼女の魔法が飛んできてからで不意を打てた。


 おかげで数は多かったものの短時間で魔物の集団を蹴散らし、ようやく次の目的地に到着した。


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