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イソジンと恋愛

すれ違い

作者: イソジン

長く続いた雨はもうすっかり上がり、辺りには湿ったアスファルトの匂いとどこか生臭い雨の匂いがしていた。


最寄り駅の改札前でいつものように君を待っている。

家から持ってきた傘はどうやら役目を失ったらしい。


スマホで何かを確認している女子学生、タクシーを慌てた様子で呼び止めるサラリーマン。何故か大泣きの子供を、なだめながら歩く若い親子。

駅を行き交う人々の目的は様々なようだ。


腕時計を確認する。時刻は12時56分を指していた。


13時に待ち合わせをしているのでそろそろ来る頃だろうか。


LINEを開き《今どこ?》と打ち込んで、送ろうとしたタイミングで『ごめん待った?』と君が手を振りながら近寄ってくる。


隣のおじさんが自分に手を振られたと思ったのか手を振り、

僕が「1時前だし、謝んなくていいよ」と返したのを聞き、気まずそうに手を下ろすのが見えて滑稽だった。


『じゃ、行こ!』

僕が返事をするよりも先に手を握ると、ぐいっと引っ張るようにスタスタと歩き出す。

手を引かれて歩くのも癪なので2,3歩大股で歩き、形成を逆転させる。

「さあ、何食べたい?」

君の方を振り返り少し顔を目線を下げて話しかける

『おすすめは?』

「牛丼かな」

『ふざけてる?』

不審な表情をする

「大真面目」

おどけた表情を向けると

『じゃあ牛丼でいいよ』

君をおどけた表情で返した


さすがにここまで来て牛丼になる訳もなく、駅から5分ほどのこじんまりとしたカフェで、軽く食べることになった。

『牛丼じゃなくていいのね』

「くどい」

数分前のネタを蒸し返すので、いつものように顔も見ないで軽くあしらう。

顔は見えずともどんな表情をしているかは手に取るようにわかる。

あえて見るまでもないのだ。


君は洒落た名前のコーヒーとパンを頼む。僕はフレンチトーストとアイスコーヒーを頼んだ

『いつもそれだよね』

「他の食べたことないから怖くて」

『じゃあ1口あげるね』

「うん」

下がるタイミングを失ったのかキョロキョロする店員に

「以上で」

と言うと「あ、はい」と帰って行った。


10分もしないうちに料理は揃い、食べ始めることにした。

他愛もない話は続く。

いつものように学校の話、職場の話。面白いと思ってる話。

どれも大好きで。どれも消えてはいけない話だ。

それにしてもお腹が重い。少し食べすぎたようだ。


その後、近くのお店に行くことになった。

買い物に付き合って欲しいと言われ化粧品コーナーへ

化粧品は全然よく分からないけど、ここに来るといつも他の女性からの視線が少し痛い気がする。

やはり女性のテリトリーなのだろうか。


その後カラオケに行き。

声が枯れるまで歌う。疲労はいつもの2倍だった。


いつものように家路につく。

「今日は泊まってく?」

お決まりのセリフだ。

『んー、課題が溜まってるんだよね。』

「そうなのか、残念だ」

『ごめんね。じゃ、また!』

手を振るとパタパタと時折振り返りながら、帰っていく。



君を見送ったあと、昼に送りかけだったLINEを思い出し、スマホを開く。

しばらく見ていただろうか。

画面にポタポタと水が垂れる。どうやらまた雨でも降ってきたのだろう。



12時の交通事故のニュースを閉じ


君のLINEに〈今どこ?〉と打ち込んだ。




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