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ネクロポリス・リバーサイド・スクール  作者: 夕月萌留
NRS―壱の章―
1/42

1-1

 ここは……。どこだ? 暗い……。暗くて何も見えない。僕は今何をしているんだろう。  

ちょっとした混乱。自分の名前は……思い出せる『近衛一振(このえひとふり)』だ。年齢は十三歳でこの春ネクロポリス・リバーサイド・スクール――通称『NRS』の中等部に入学した。それまでは政府の設立した研究機関『アクロス・ザ・ヘブン』に在籍し被験者として過ごしていた。登校初日のことは――ちゃんと思い出せる。担任の先生に促された僕は同じクラスの生徒たちに簡単な自己紹介をした。研究機関(アクロス・ザ・ヘブン)での成績が芳しくなかったために僕一人だけNRSへの入学時期が一ヶ月ほど遅くなった経緯がある。従って、クラスの皆の目には僕が転校生のように映っていたと思う。

 質問攻めにあうかもしれない……。

 教室に入るときにはそう思って内心どきどきして身構えていたのに、いざ自己紹介の場面がやってくると質問攻めどころかクラスの皆はただ静かに僕の話を聞いているだけだった。自己紹介を終えた僕は自分の席に座り他の生徒たちの様子を恐る恐る伺った。中には興味津々といった感じで後ろを振り返り僕のことをチラ見する生徒もいたが、大半の生徒は真っ直ぐ前を向いて先生の話に集中していた。こうして、たった一人の初登校という僕の一大イベントは何気ない日常のひとコマのように過ぎ去っていった。

 ちょっと――いや、かなり拍子抜けした。

 僕がNRSの初等部上がりではなく研究機関(アクロス・ザ・ヘブン)の出身というのは周知の事実だろうから、ちょっとくらいチヤホヤされてもいいはずだ。――にも関わらず、登校初日の自己紹介という大切なイベントがこんなにもあっさりと終了してしまったところに僕自身の平凡さが表れている。見た目が格好いいわけではないし背も高くはない。研究機関(アクロス・ザ・ヘブン)に在籍していたといっても成績は落第レベルで卒業の時期を意図的に延期させられるくらいだ。しかも、結局自分の能力もコントロールできずじまいで研究機関(アクロス・ザ・ヘブン)を出ることになってしまった。他の生徒が僕に無関心であっても何ら驚くことはない。僕なんかその程度の人間でしかないんだ。

 そんな自分自身の情けないエピソードを思い出しはしたが、肝心の自分が今置かれている状況については未だにわからないままだ。自分はどうなってしまったのか――その手がかりを探るため、僕は自己紹介の後に起こった出来事を思い出してみることにした。

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