False love .
「ねぇ、僕のこと好き?」
僕は、彼女にそう声をかける。
彼女は「うん」と僕に頷いてみせた。
……そんな嘘、つかないでいいのに。うそつきさん。
本当は、知ってるんだよ?
君が僕のことを好きじゃないってことぐらいね。
いつまで嘘をつき通すつもりなのだろうか。
呆れてくる。
今から一年前、僕から告白し、彼女と無事付き合うことになった。
【幸せ】って心から僕はそう思っていた。
だけど、そんな幸せは簡単にたった一言で崩れていった、粉々に、儚く。
崩れてしまったものは簡単に修復できないのだ。
彼女の友人の一言だった。
「彼女、君のこと別に好きじゃないらしいよ」
これを、聞いたとき、僕の視界は真っ暗闇に包まれた。
それから、彼女の友人から、彼女が僕の悪口を言っていたことを知った。
もう、僕はズタボロだった。
彼女のことを信じていた。
でも、僕に向けての愛の言葉も、優しい笑顔も全部偽りだったんだね?
ぜんぶぜんぶ、偽り。
ねぇ、酷い、酷すぎるよ。
その時、僕の愛は憎しみへと変わったんだ。
今日は、僕たちが付き合って一年。いわゆる、【記念日】っていうものだ。
僕は彼女を僕の家に迎えた。
今日の彼女は気合が入っている。メイクは普段より濃く、普段はパンツスタイルの彼女が、珍しくスカートを履いていた。
別に、僕のこと好きじゃないならそんな気合なんか入れなくてもいいのにさ。
僕はそう嘲笑っていた。
「あのね、これプレゼント!」
彼女はそう言い、僕に綺麗にラッピングされた箱を渡してきた。
手のひらに乗るぐらいのサイズのものだった。
……もしかして、指輪?
「これね、ペアリング」
僕の勘はあたったようだった。
「そっか、ありがとう」
僕はありきたりな感謝の言葉を彼女に告げる。
こんな偽りの愛の形を貰ったて、もう僕は動じない、揺るがない。
「あのさ、僕からもプレゼントがあるんだ。」
僕はそう言い、シレネの花束を渡した。
__花言葉は「偽りの愛」
「わぁ、綺麗な花束!」
と、彼女は喜んでいた。きっとシレネの花言葉を彼女は知らないのだろう。
もう、【計画】を実行するか。
「コーヒーでもいれてくるよ」
僕は笑顔を顔に貼り付け、彼女にそう言う。
すると彼女は頷き、「いってらっしゃい」と言った。
僕は、座っていたソファーから立ち上がり、キッチンへとむかう。
もう、これで終わりにしよう。
僕が彼女に告白したのは、僕の家。つまり、彼女と僕はここからはじまったんだ。
はじまりと終わりは、同じ場所にするんだ。その方がなんとなく綺麗な気がした。
僕は、二つのマグカップに均等にコーヒーをそそいでいく。
そして、一つのマグカップ……彼女のマグカップの方に、粉状の毒を、仕上げのようにパラパラとかけておいた。
粉は雪のように儚く、そして綺麗にコーヒーに溶けていった。
まるで、僕と彼女のようにね。
きっと、僕らは続かない。彼女はきっと他の男のいってしまうに違わない。
僕が捨てられるまえに、彼女を綺麗なままで眠らせるんだ。
【二度と】起きれないようにね。
END






