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3.第一章、第一節、第三項

4.



第一章



第一節



第三項





スパッーー。


ヒュンッーーー


ドッ!


ザシュッ、バババッーーー。


スタッー。



「ッ!!ーー被害状況はっ!?


おい、誰かッ!!」


アリアは焦っていた。

報告以上の獣がそこにいて、斬っても斬っても、薙いでも薙いでも、次から次に獣が沸いて出てくる。


(なんだ、この異常なまでの獣の数はッーー)



「ほっ、報告しますッ!!


大隊の4分の1がッ、被害を受けっーークッ!


ハァっーー!!


甚大な被害になりつつッ、せいっーー!」


(くっ・・・、このままでは大隊が壊滅してしまう・・・)


報告を聞き更に焦るアリア。

辺境でここまでの規模の荒れは、初めてでありさらにはここまでの規模の荒れを大隊1つで対処するのも初めてである。


(この辺りのどこかに、とてつもない龍脈が存在しているというのか・・・?)


アリアは思考を止めず、そして脚も止めずにただひたすらに動き続ける。被害を最小に抑えるために。



ドォオオオオーーーーンッ!!



「ーーッ!?なんだっ!!」


森の奥、地響きとでもいうのだろうか。

なにかが爆ぜる音が鳴り響いた。



(ーーッ!な、なんだ・・・アレはッ!?)



音のする方角を見ると、木々が次々に薙ぎ倒されている。そして、土埃が柱状に舞い上がっている。その土埃は天にまで届きそうな勢いで。そしてそこに、なにか得体の知れないモノがいるとハッキリとわかるほどに。


「・・・なんなんだ、アレは・・・」


隣で佇み、息を飲む側近。

その気持ちはわからなくもない、だが



「ーーッ!ハァッ!・・・手を休めないで!


死にたいのですか!?」


「すっ、すみませんッ!」


すぐ側まで来ていた獣を斬り捨てる。

危うく側近が喰われかけた。


(しかし、なんでしょう。獣が・・・一定の箇所に集まっているように思えます)


普段であれば、獣は人に襲いかかってくる。だが、今対峙している獣たちはどこか、一箇所に集中しているような動きをしている。



(ーーッ!?・・・確かあの方角には・・・)



そう、先程自身が水浴びをしていた川があった場所ではないか?

あの青年と出会った場所があの辺りではなかったろうか。


(あの青年・・・川のすぐそばの村にと・・・ッ!?あの青年が危ない!)


アリアは抜刀していた刀を納める。


「獣たちの向かっている先に村がありますっ!小さな村ですが、人が住んでいます!

力を持たない、天帝国の民がッ!」


「それは、確かですかっ!?」


「ッ!話は後ですっ!

私は一足先に村へ向かいますので、

貴方は隊長に被害状況と、村の話をっ!」


「了解ですっ!お気をつけて!」



側近に見送られ、アリアは近場にいた馬に跨り駆ける。

あの青年が無事であることを祈りつつ・・・






「・・・なんだよっ・・・アレはッ!?」


木々を薙ぎ倒し、こちらに向かってくる謎の生命体。訳がわからない・・・理解しようとしても理解が追いつかない、そんな状況の最中唐突に、


キャアーーーーッ!!


(なんだ!?悲鳴・・・?)


近くで女性らしき悲鳴が聞こえる。

そして、その原因の元がコウの近くまで来ていた。


(・・・?なんだ、獣か?)


ソレは四足歩行で、牙を剥き涎を垂らしながらこちらを威嚇している様にも見える。

一瞬のち、

サッーー。


ドンッー!!


「・・・っぶなぁ!?

なんだ、コイツ・・・、

スゲェ、疾い・・・。」


対峙している獣は姿が見えなくなったと思ったら、先程までコウがいた場所に体当たりをかましていた。

危機を察知し、一歩飛び退いたのが功を奏した。普段から森で見ている獣だと甘く見ていたら多分死んでいた可能性がある。

それほどまでに、ソレは危険だと本能が察知した。

だが、コウには対抗する手段がない。


(どうする、どうする!?なにか、武器はないか!?)


辺りを見まわすも、武器になりそうなものは・・・ない。

そう思考している間にも獣はこちらの様子を伺っている。

次の瞬間、目の前にいた獣が消えた。


(なっ!?しまっ・・・)


グジュリ、と左耳から音が消えた。

獣はコウの顔目掛けて跳んで来ていた、それを躱せずに左耳を喰いちぎられた。


「ッ、があぁァァアアアっーーー!」


左顔がジンジンと、ズキズキと痛み始める。

痛さのあまり、気を失いそうになるが留まる。

(っぶな・・今一瞬意識飛んだ・・・)


ドクドクと、左耳があった場所から血が流れ出ているのを感じる。


痛い・・・痛い痛い痛イ痛イイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイッ!

急激に痛みが加速し、立っていられなくなる。

フラついたコウを見て、四足歩行の獣はここぞとばかりに飛びかかってきた。


(くそっ・・・これは躱せない・・・。あぁ、僕の人生ここで終わるのか・・・)


飛びかかってくる獣がスローモーションに見えた。

獣が僕の首を喰いちぎり、僕が首なしのまま倒れていく

未来にはならなかった。


バアンッー。


ギャンッーーー。


僕の首を喰いちぎる瞬間に、四足歩行の獣は横へ吹き飛んだ。


「ッーー!コウっ!!

あんた・・」


猟銃を持った母さんだった。

おそらく母さんが銃で仕留めてくれたのだろう。

母さんは自分の服を破き、僕の左耳のあった場所へと布を当てる。


「っ!ごめんね、ごめんねコウッ!」


母さんが謝りながら涙を流す。

大丈夫だよ母さん、と言いたいが声が出ない。血を失いすぎて意識が朦朧としていた。

ふっ、と暗闇へ引き摺り込まれる感覚がした。あれ?もしかして死ぬのかな・・・


僕は、目の前が真っ暗になった・・・






深い深い、真っ暗な空間で漂う僕。

あれ?死んだのかな?

遠くで母さんが泣いている姿が見える。


(ん、なんだこれ?意識がふわふわするな)


ふと、体が反転するような感覚がした。

体が反転し、母さんが見えなくなる。

かわりに、真っ暗闇の空間の中でほんのり光っている場所があり、黒い球体のようなモノが見えた。


(なんだろう、なんだか暖かい・・・)


そう、例えるならふかふかの布団に包まれたような、そんな心地の良い感覚。


(あれ?なんかこの温かみ、覚えが・・・)


遠い記憶のような、そうでないようなふわふわとした感覚が身を包む。そうしていると、黒い球体に体が近づいているのを感じた。


(なぜかアレに触らないといけない気がする・・・)


曖昧で、不明瞭な。

でも何故か、ボクはそれに触らなければいけない気がした。

ゆっくりと、ただただゆっくりとソレに近寄る。というより、引き寄せられる。


目の前まで来た。

あとは触るだけ・・・

ふと、記憶が流れ込んでくる。

(これは僕の記憶じゃない)


ふわふわとした意識の中、それだけははっきりとわかった。


そして、


球体に


触れた。



その球体は粉末状になり消えた。



そう、球体の周りを覆っていた黒い殻のようなものが・・・


すると中から、何色でもない虹色に光り輝く球体が出現した。


ボクは・・・ザザザッとノイズが入る、

僕は・・・



始まりの全てを見た。・・・気がした。




意識が覚醒する。

目の前には泣き崩れた母さんが、


「え?なんで母さん泣いてるの?」


「ッ!?こ、コウ!?

アナタ、大丈夫・・・なの?」


母さんは心配そうにこちらを伺っている。

それもそのはずコウは時間にして5分、死んでいた。まごうことなく、死んでいた。

心の臓は鼓動をやめ、あと少し覚醒が遅ければ核も消滅していたと思われる。


「ん、あぁ・・・、なんか夢を見ていた気がする・・・。不思議な夢を・・・」


おそらくアレは夢ではない。

コウには確信があった。あれはおそらく自身の核に触れる感覚であると。そう、心の臓のさらに奥深くに眠る、核に触れたのだと。

そしてコウは体に不思議な力が宿るのを感じた。いや、感じている。


(なんだ・・・これは・・・?)


地面から、いやおそらく大地から感じるこの不思議な、言葉に言い表すことのできないエネルギーをコウは確かに感じている。


グオオォォォオオオオオオオオーーーッ。


遠くでナニかが雄叫びを上げている。

空に響き、地に響き、その音は空気をも震わせる。


(ッ!?この雄叫びは、さっきも聞こえたな・・・)


コウは残った右耳で、その音を聞く。

そして雄叫び以外の音を拾う。

四足歩行の駆ける音、

咄嗟に母さんが持つ猟銃を手にした。


「母さん、隠れてて。

僕ならもう大丈夫。今の僕ならなんとかなりそう」


確信はない。

だが、コウには先ほどとは違う何かを感じ取っていた。確かな感触と共に。

母さんは震えている、正直母さんが来てくれなければ僕は間違いなく死んでいた。

母さんに感謝だな・・・

母さんはコクコクと頷くと、音を立てずに物陰へと移動する。

母さんが隠れたタイミングで、先程と同じ獣、いや同じ見た目の少し一回り大きい獣が現れた。

僕は猟銃を構え、狙いを定める。

引き金に指を添え意識を集中させる。


ふぅーーっ。


ッ!!


引き金を引いた。


ドォーンッ!!


!?


猟銃から有り得ない音が鳴る。

大砲でも撃ったかのような音だ。

そして僕の放った銃弾は、風を纏い威力を増して獣に当たる。そう目に見えるほどに異常な現象がそこで起きていた。


(なんだ・・・?

銃口から出た弾に風が纏わりついて、威力が増したぞ・・・どういうことだ?)


理解が追いつかない。

がしかし獣は斃すことができた。


(考えるのは後だ・・・少しでも安全な場所に母さんを連れて行かないと)


そう考えたコウは、母さんが向かった物陰へと向かう。そこには、村の子どももいた。母さんが覆いかぶさるようにして二人で震えていた。


「母さんっ!怪我はない?」


「えっ、ええ。アナタこそ大丈夫なの!?」


「今はそれより、安全な場所に行かないと・・・ここは危ない気がする」


「そ、そうね・・・。ナタリー、立てるかしら?」


ナタリーと呼ばれた女の子は、無言で首を縦に振る。母さんがナタリーの手をひき、僕は母さんを先導すべく先に動き始めその場をあとにした。


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