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1.第一章、第一節、第一項

では。

2.

第一章



第一節



第一項





「待ちなさいッ!!すぐ楽にしてあげますから!!こらっ、逃げるなぁぁァァ!!」


背後から生命の危機を感じるほどの殺気が飛んでくる。これは、非常に不味い!

捕まったが最後、なにをされるかわかったもんじゃない。であればここはひたすら逃げる。それ以外の選択肢が僕には存在しない。


(どうして僕がこんな目に・・・)



事の始まりは少し時を遡る。





僕はいつものように家の近くを流れる川へ水を汲みに向かった。

これが僕の一日の始まりの仕事だ。


僕は母さんと、とある小さな村の小さな家に二人で暮らしている。僕がまだ物心つく前、母さんが子どもの泣き声が聞こえる、と家の近くを流れる川へ向かうとそこで僕が泣いて座っていたらしい。らしいというのは、僕にはそれより前の記憶がなく、気がつけば川辺の石の上に座って泣いていたという。それ以来、僕は母さんと一緒に暮らしている。


川の手前の茂みに入るとなにやら川に人の気配を感じた。

(・・・誰だ?この時間帯にこの川を使う人なんていないのに)

僕は茂みの中で息を殺し、川が見える場所までそっと移動した。


サラサラサラーーーッ。


川のせせらぎが大きくなってくる。


(ここまで来れば・・・ん、あれは誰だ?見たことのない女性だな)


その女性は村の人ではなかった。その女性は水浴びをしている、全裸で。

金色(こんじき)の髪が濡れて体に張り付いている。

真っ白な玉肌に金色のラインが入っている、さながら白昼の流星群のようだ。

綺麗だ、と僕は素直に思った。

女性的な膨らみもしっかりとしつつ、腰のラインは細く、まるで彫刻のようだ、とも僕は感じた。

僕は思わず息をのんだ。その拍子に茂みと桶が擦れ合う。


ガサッーー。


「ッ!?誰ですか!?」


しまった、と思ったときには既に遅し。

その女性は両手で体を庇うように隠すと、ギュインッと効果音のつきそうな勢いでこちらに顔を向ける。薄く淡い青色の透き通った2つの瞳がこちらを見る。


僕は両手を挙げ、茂みから出る。


「すみません、覗くつもりはありませんでした。ただ僕は近くの村に住んでいて、この川に水を汲みにきただけです。」


右手に持つバケツに視線を送り白状する。


「そうですか・・・私も無用心でしたのでこの事は不問にさせていただきま・・・、


いつまで此方を見ているつもりですか?」


おっと、しまった。

つい男の(さが)で、真っ白な玉肌を眺めすぎていたようだ。主に女性的な膨らみを帯びた部分を。


「あ、いえ。すみません、貴女が綺麗だったもので・・・悪気はないんです」


「それにしては、貴方から胸と腰にいやらしい視線を感じるのですが・・・?」


なんて鋭いんだこの女性!

すみません、


「あっ、あはは・・・ご馳走様です。」


おい!何言ってんだ僕!

心の声と発音する声を間違えた。

これは非常に不味い、と。


「・・・貴方、死ぬ覚悟は出来てますか?」


目の前の女はこちらを睨み、凄んでくる。

全裸で。


「いや、待ってくれ。僕は今死ぬわけにはいかないんだよ。何故なら、今僕が死ぬと父さんや母さんが悲しむからね。だから僕はここでは死ねない。


だから、許してくれ。頼む」


必死の言い訳のかいあってか、目の前の女性は笑っている。あぁ許してくれるのか、目は笑っていないが。なんて優しい女性なんだ、と。僕はその時思った。

がしかし、


「・・・風に吹き飛ばされ地面に叩きつけられて死ぬか、雷に撃たれて感電して死ぬか、どちらか選ばせてあげます。

さ、選んで?」


許してはくれなかった。無念。


「わかった、なら僕は・・・」


「・・・なんでしょう?」


「すぐさま退散ッ!!じゃあな!」





といった状況になり、今に至る。

僕は体を使う仕事をほぼ毎日こなしているので、体力にはそれなりに自信があった。

しかし母さんからは、あんた体が細いんだからあまり無理しないのよ。とよく釘を刺される。

そう、自信があっただけで僕の体力はもうすぐ尽きそうだった。僕は、なんて貧弱なんだ・・・

背後から殺気を放ちながら迫りくる女性は、服を着ている。僕を追いかける前に着用したのだろう。しかし、急いで着用したのか所々乱れている。ちょっとズレれば見えそう。

そのハンデがあっても僕にぐいぐい近づいてくる。


こここ、怖いいいいい!!


まさしく鬼の形相とはこのこと。

美人が台無しになりそうなほどに顔をしかめ、苦しそうにしかし僕を追い詰めようとぐんぐん近づいてく・・・


「っ!ーー。んはぁー、ハァ・・・ハァ・・・。よ、ようやくっ、つ、捕まえましたっ・・・。」


捕まっちゃっ・・・た・・・っ。


「すみません、すみません、すみません、すみません。」


ひたすら謝る。

逃げてしまった手前、もう謝るほか方法はないと悟る。

ガシッと腕を抱かれているので最早逃げられない。胸の膨らみが当たっていて正直役得だとか少しだけ思っているが、それを口にしてしまえばおそらく命はない。


「っ。ふぅぅーー。


それで、何故逃げたのでしょうか?」


ニコリと微笑んでいるが、目は笑っていない。


「貴女が追いかけてくるからです」


「貴方が逃げるからでしょう?」


「いえ、最初に追いかけてきたのは貴女ですよ?多分」


さらりと嘘をつく。

本当は僕が最初に逃げたのだが、ここは相手のせいにしてしまおうと、僕の心の悪魔が囁くのだ。そのまま口にしてしまった。


「・・・そ、そうでしたか?それは申し訳ない。

で、ですが貴方が私のその・・・

はだ、・・・ッ!!カラダをいやらしい目で見ていたからですよッ!」


裸、と言いかけて体と言い直す。

肌が白いので、羞恥で頬が赤く染まっているのがハッキリとわかる。


「それに関しては、事故です。あといやらしい目では見ていません。

えと、綺麗だな・・・と、凝視してしまった次第でして・・・。」


僕は素直な感想を述べる。

女性は首まで真っ赤になった。


「ッ!?!

ーーっ!!あ、ありがとうございます!?」


キレられた、あと感謝された。なんで?




少しの沈黙の後、佇まいをなおし


「私は、アリア・シュヴァルツ・ユニアと申します。仕事で近くまで来ていたのですが、途中で川があり、汗をかいていましたので流していました。お見苦しい姿をお見せし、その上誤解で追いかけ回してしまい申し訳ありませんでした」


や、むしろご馳走様でした。

あと誤解じゃないです、少しだけその、いやらしい目で見てました、とは口が裂けても言えません。墓まで持っていきます。


「えと、僕は近くの村に住んでいる、コウ・ヴァニアスです。さっきも言った通り、川に水を汲みに来たらユニアさんがいて、そしたらその、たまたま見てしまったと申しますか・・・あの、お綺麗でした。」


と再度素直に感想を述べると、ユニアさんは


「忘れてください。それがお互いのためでもあります。」


とドスの効いた声で言ってきた。

はい、忘れました。

・・・すみません無理です。

一度焼き付いてしまった姿はどう(あらが)っても消す事はできない。いや、消したくないです。たぶん一生記憶に、鮮明に残るだろうなぁとか思いつつ


「わかりました。」


とだけ答えておく。


「よろしい」


ユニアさんは頷き、


「では、私は仕事の途中ですのでそろそろ失礼します。」


と、身を整えて歩き始める。


「はい」


とだけ。僕は返事をした。


スタスタスタスターーッ。クルッ

後ろ向きに戻ってきた。そして首だけをこちらに向け、


「忘れてください」


それだけ言うと、ユニアさんはそのまま去って行った。




「無理です」


そんなラッキーハプニングに遭遇しても、日常はさほど変わらない。僕は川で水を汲み家に戻った。




初めのうちは節ごとに投稿できたらしようと思います。

長々した作品になるかと思いますが、お付き合いいただけたら幸いです。


※作品タイトルは変える可能性があります。取り敢えずはこのままで行きますが。

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