〜残骸の中で〜
不自然なことに一つ気がついた
この村の中心部まで
歩いてきたのだが…
「なぁ…やけに静かだとは思わないか?」
「そうですかね?
朝方だから人が単純にいないんじゃないですか?」
どういうわけか村人と全く会わない事だ
確かに火事から逃げた為に人がいないのはわかるが
もう火が消えてだいぶ経つ
「普通こんな大規模な火事があったら
村総出で朝から片付け始めるだろ…」
「確かに…そう言われると
そうかもしれないですね〜」
昨晩はあれだけ火事を止めに行こうと
言っていたにもかかわらず随分と
淡々とした口調でそう話した
「お前昨日あんなに騒いでたのに
この火事で人が亡くなって胸とか痛む〜
とか言わないのか?」
「いやいや、わからないですか?
この火事で死者はいませんよ」
「…?こんなに建物も燃えて死者がいないって?
流石に一人か二人は逃げ遅れていてもおかしくないだろ
と言うかなぜそんなことわかる?」
「…臭いですね
生き物が焼け死んだ臭いがしないんですよ」
「臭い?
あぁ…そういえばエルフは血の臭いが
確かダメなんだっけ?」
エルフは元来森で暮らす種族であることは有名であり
一説では遥か昔この世界の戦乱から逃れた
人間の学者の末裔が長い時を経て進化した
と言う伝説があり
危険な森で生き残るため嗅覚が異常に発達し血の匂いにも
敏感になってしまった…らしい
「私はハーフエルフなのでそこまで酷い拒絶反応は
起きないですが強い不快感は感じます
ですがこの場にはその臭いがしません」
「そうか?鉄の臭いがするけど
じゃあこの臭いは違うのか?」
「それは単純に鉄の焼けた匂いですね」
「じゃあ具体的にどんな匂いなんだよ」
「うーん…なんと言うか
すごく吐気がするというか〜
どのように説明したらいいのか
わからないですが…
とにかく不快な臭いなんです!」
話しながらしかめっ面にする様子から
よほど嫌な臭いなのだろうというのはなんとなく
伝わった
「ではこの村の人々は
どこに行ってしまったのだろうか…
これはこれで記事が書けそうだな…」
そんなことを思いつつ
もう少し情報がほしいと思い
ナンシーとは別行動で一人
村を改めて散策した
そしてもう一つ気がついた事がある
それは建物の被害もさることながら
村の大小様々ある路地などよりも
表に出たお店の並ぶ大きな通りに
面している道路部分が黒く焼けている
ドラゴンが
逃げる村人達を焼こうとしたのだろうか…
だがさっきの話から死人は出ていないというのが
妙に引っ掛かる
歩き回ったのも疲れたので
近くにあった程よい花壇の縁に腰を掛け
しばらく町並みを見ていると
黒く焼けた道路の一部が持ち上がり
中からなにか出てきた…
お読みいただきありがとうございます
次回…一体何が出てきたのか…
今後もお読みいただけたら幸いです