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デュアル・ギャラクシーズ  作者: 篠宮 琉璃
Chapter1 笛
2/3

Episode01

「なあ、剛司(たけし)。"七つの秘宝"って知ってるか?」


「知らねえな、(つばさ)。そいつはなんだ?お伽噺か何かか?」


二人の男がある屋敷の廊下を歩きながら会話していた。一人は北条(ほうじょう) (つばさ)、人とは変わった"右腕"を持つ男だ。もう一人は西村(にしむら) 剛司(たけし)、丸刈り頭が特徴の男だ。


「知らないなら教えてやるよ。七つ揃えたらな、願いが叶えられるっていう伝説の秘宝だよ」


「はぁ!?…お前そんな下らねえ話信じてんのかよ。二ヶ月前に24歳になったばっかなのにそんなこと言えんのか…」


(しのぶ)ですら信用してたんだ。この秘宝とやらはすごそう、ってな」


「あの忍ですらか!?笑わせてくれるな全くあのお嬢――失礼、"坊っちゃま"は。ところでその秘宝さんとやらはどんなのがあるんだ?」


七つの秘宝にはそれぞれ別々の名称と種類がある。魔力結晶マナ・クリスタル大海杯オーシャン・グレイル神王剣ゼウス・カリバー時空仮面ホロギウム・マスカレイド天理織物ヘヴンズ・レイメント世界樹魔笛ユグドラシル・フルート、そして星心ハート・オブ・ジ・アース。これら全ての宝を集めることによって願いが叶うというのは一部の人間の中では有名な話だ。


「ふむふむ…内容はわかったけどよ、秘宝のことが急にどうしたんだよ?」


「実を言うとな…先日ここ織阪邸の地下倉庫にて秘宝の一つと思われる物品が発見されたんだ。発見者は日野(ひの) 大輔(だいすけ)。清掃担当の人間だったから地下室の掃除をしてる時に見つけたんだとか」


「で、実物はどこにある?」


「忍が持ってる。直接見せてもらった方がいい」


剛司は翼の後を追って忍の部屋へと向かった。


「おい忍、俺だ。翼だ、開けていいか?」


翼が部屋の扉をノックしているが一向に返事がこない。部屋の外の二人は怪訝な顔を浮かべた。


「おい忍!!」


その刹那――


「…わあああ!?なんだよなんだよ!?朝っぱらからうっせぇーな!!今オレ起きた所なの!!」


「ノックの音で気づいてくれよ…心配したじゃねえか。てか今朝の十時、いつまでぐだぐだ寝てんだお前」


「今日日曜日ジャン?だからぐっすりしたくてよぉ…すまん、もう一回寝させて」


「アホかお前、意地でも起こすぞ」


そう言って翼がドアを開けた瞬間――




「あ、すまん。見ちゃった」


「忍さぁ…寝間着ぐらい着ろよドアホ…」


ベッドの上には下着姿の女性が一人――そう、たった"一人"。彼女は寝惚け眼を擦りながら現状を理解しようとしていた。


「ふぇ…?」


「ふぇ?じゃねえよバカ。何お前こんなクソ寒い時期に下着で寝てんだ」


「あの…翼クン。俺どうしたらいい?見ちまったんだけど…」


「記憶から消せ」


その瞬間女性が声を荒げた――二人の男が腰を抜かす程。


「お前ら何勝手にオレのカッコ見てんだよ!?おい!!」


「うるせえよお前が服着てないのが悪いし全然朝起きないからだろ!?お嬢様だからって生活ぐだぐだじゃねえか!!」


すると咄嗟に女性が顔をひきつらせた。翼は彼女にとっては癪に触ることを言ってしまったらしい。


「――今、なんつった?」


「いや、その、すまん。口が滑った」


「だからなんつった?」


「お嬢…」


「テメエが珍しく間違えるとはなぁ!?この際忠告してやるがな、オレは――」





「――男だっつってんだろ!?オ・ト・コ!」


そう、ベッドの上で赤ら顔をしながら怒りを表しているこの女性もとい男性こそ、この屋敷の所有者、織阪(おりさか) (しのぶ)である。かの偉大なる大手企業の織阪財閥の一人息子が彼である。要するに彼は肉体は女性で心は男性の、いわゆるトランスジェンダーなのである。


「翼、俺そろそろ鼻血出そう」


「医務室行ってこいよ」


「話聞けよ!!」


「いやなんかすまん。ガチで言葉選ぶのミスったわ」


「オレが男なのどんだけ言ったらわかんだよ!?」


「悪かったって!とにかく服着てこいよバカ!」





――しばらくして


「何の用か説明しろ」


「この間お前が保管したアレのことだ」


「アレって…ああはいはいアレね。そこの机に置いてるやつだね」


忍が指差した先にある机の上には一つの笛があった。それは木でできていた。この世のものとは思えないほど美しい見た目をしていたその笛はまるで吹かれていなくとも音色が聞こえてきそうだった。


「笛…木…世界樹魔笛ユグドラシル・フルートなのか?」


「実際のところはわからんがな。そこは書斎に置いてあるあの本見るしかねえわ」


「あの本って…忍が"しょーもない伝説の書"とか呼んでたやつか」


「そうそう、それそれ」


「あの本だったら秘宝の特徴ぐらい書いてるかもしれないしな。ただオレもあの本なんかぺらっと読んだだけだから詳細は知らないぞ?」


「手がかりになるものがわかっただけ十分だ。とっとと探しに行くぞ」


「待ってくれ。書斎ってあんま使わないから今は(ひろし)の仕事部屋になってたんだわ」


「んじゃ本人に入室許可とらねえとな」


忍と翼の二人は書斎に向かって歩き始めた。その時屋敷に敵が迫ってきているとも知らずに――。

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