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怖がるリリーを抱きしめて

作者: 千代三郎丸

 僕は『ゴールデンレトリバー』という種類の大型犬を飼っている。


 名は『リリー』、メスで3歳。

 また成長途中で、小さめだ。


 気持ちがお互い分かり合い、やっと慣れてきた。


 ある夏の晴れた朝、ジープの後ろに乗せて、海に連れ出した。


 スイスイと犬かきで泳ぎ、とても楽しそうだ。



 車の横で、体を拭いた。


「たまには、外で、風呂だ」


 と、水をかけて、ペット用シャンプーで軽く泡立てた。


「ググッ」

 と、気持ちが良いのか、喉が鳴った。

 この声は、犬の世界では『快感、サイコーだ!』を表すことを最近知った。


 ジープの下に、どこからきたのか、

 別の犬がやって来ていた。黒い大きな影が見えた。


 リリーは気になるのか、隠れるようにゴソゴソ動いているものに、顔を向けたままに。

 

 野良犬だ、きっとオスだ。


(デカいわりには、気が弱い奴だ)


 グーグー、と喉を鳴らす似たような音が聞こえてきた。


(リリーが気になるんだなきっと)


「うるさいぞ!」


 と、人間の言葉を発してしまった。


 リリーにペットボトルの水を掛けて流した。

 

「よし、終わりだ」

 と、バスタオルで拭いていると、


 リリーが震えているのに気が付いた。


 ジープの下に隠れていた犬が顔を出したのか、


 僕は「ウオッ」


 と、吠えるような大声を出して、後ろを振り向いた。

 

 胴体をチラリと見せて、またジープの下に戻っていった。

 同じような毛並み、ゴールデン系だった。


(まったく、そんなに、気になるのか?)


 と、ブツブツと思った。

グーッ


 声が生で、今度は大きく聞こえたので、振り返ると、


 なんと、



 犬にしては、顔が大きい。


 毛がふさふさとした、



(中型の、ライオンだ!)



 近くの、動物園から抜け出してきたのだろう。


「うお。あっちいけよ!」


 と、僕はビビりながらも大声を出したが、その顔は後ろへと引いてくれない。


 僕は足で、地面をパンパンと踏み鳴らした。


 それに対して、ライオンは大きな、前足で威嚇してきた。



 一,二歩、奥に引いたとき、


 ジープの中に目を向け、金属の棒を取り出して、

 車体の横腹を思いっきり、ガンガンと叩いた。


 ライオンは、逃げ去ったか、と下を覗いた。

 まだ、奥に居る。



 このライオンは気が弱いが、何か目的を持っている。



 僕は考えた、そこにアイツがとどまっている理由だ。



 1、このリリーと交尾(エッチ)がしたいのか、(野良犬だと思っていた時の感想)


 2、食料として食べたいのか、(普通のライオンとしてはこうだろうと)


 3、シャンプーして欲しかったのか、(喉を鳴らす音が、リリーと似ていた)



 ゾクッと寒気を感じた。


 実は、


 4、俺を喰いたいのか、(一度、人間を食べるとやめられないらしい。特にサメは)



 四択だ。



 答えが四番目で無いことを、祈った。



 怖がるリリーを抱きしめて、ジープの中に、




 終り。


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