表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
信長物語  作者: 楠乃小玉
11/12

 義元

今回は今川義元の思いを書いてみました。

今川義元は理想主義社であり、商人に対して非常に強い思い入れを持っていました。

現存する書状でも伊勢の商人たちが伊勢の国人衆から虐げられていると聞き、

憤って、兵を出して伊勢の商人たちを救うという書状をわざわざ発給しています。

この派兵は桶狭間の合戦によって、現実することはありませんでしたが、

今川義元の桶狭間への派兵は、ひょっとすると、伊勢の商人を救うための派兵を

実現させるための港の占拠が目的であったのかもしれません。

書状でみる今川義元は自分の損得よりも、夢を語り、理想をかかげる理想主義社であったことがわかります。

 今川義元は呆然と月を見ていた。

 赤い月だった。


 あの忌まわしい出来事があった日の月もこのように赤かった。

 義元はなんとなくそう思った。


 子供の頃、学問には精通しているものの、武芸を重んじる家風の今川家では

 軽んじられることが多かった義元を、長男の氏輝はいつも庇ってくれていた。


 次男には散々馬鹿にされ、見下されてきた。


 氏輝は、主君の地位についてからも飄々としており、たまに一人で散歩に出かけたりした。

 ある日、大雨が降り、義元は慌てて笠を背にかついで、びしょ濡れになりながら氏輝を

 さがした。

 寺の軒先に雨宿りしていた氏輝と笠の譲り合いになり、結局、両方がびしょぬれになってしまった。


 表情がなく、理屈っぽい義元を氏輝だけは、いつも明るく受け止めてくれた。


 「笑え、さすればこの世が明るうなる」と笑顔で言ってくださった。

 それでも、義元は笑うことができなかった。

 すると、氏輝は言ってくれた。

 「よい、心で笑っているのだからそれでよい、お前はお前のままでいればよいのだと」


 義元は氏輝を尊敬した。命をかけて、この兄の理想を現実させようと思った。


 にも関わらず、上の兄からはことごと邪魔をされた。


 遠州生まれのもう一人の兄は何かといえば今川の家風をひけらかし、ことある事に武を誇った。


 あげく、大切な兄上、氏輝が亡くなったあと、主君の座を巡って義元を討つ兵をあげた。


 義元は主君の座など欲しくなかった。しかし、上の兄では氏輝の理想は現実できないと思った。

 ゆえに、兵を挙げ、上の兄を討った。


 金もいらぬ、名誉も名声もいらぬ、

 ただ、氏輝の兄上の理想を現実させたかった。

 氏輝は言った。

 「皆が分け隔て無くくらせる穏やかな世を作りたいものだ」

 その理想を実現するためなら、この世のすべての人を殺しつくしてもかまわない。


 理想のためなら何でもする。

 兄上のために、兄上の理想のためならすべてを犠牲にする。

 その純粋な思いで義元は今まで生きてきた。

 これからも、その思いは変わらぬであろうと義元は思った。

 

今川義元という人はとても優等生であったことがわかります。

今川義元は市場を開放し、緊縮財政を行い、税金をあげる政策をとっていました。

なぜ、そういう政策をとっていたかというと、デフレを進行させて、自分の保有している資産価値を

倍増させるためです。そして兵の調達価格を引き下げるためです。

兵法の教科書において、合戦は数が多いほうが勝つとされています。よって、今川義元は

教科書通り、織田と戦う時の兵士の数を少しでも多くすることを目的として、

緊縮財政を行い、お金を貯め込むとともに、デフレを進行させて兵の調達価格を徹底的に引き下げたのです。それによって実現したのが四万の大軍勢です。

歴史家の恐ろしいところは、現実的に今川家の石高から考えれば四万人も調達できるわけがないから、

四万と記録にかいてあることはウソだ、と何の資料もソースもなく想像だけで切り捨ててしまうことです。

しかし、記録に残っている以上、どんな無理をしても今川義元は四万の軍勢を集めたと考えるのが、

本来のあり方です。そして、それをするためには、どんな仕組みが必要か、それを考えていけば、

なぜ、今川義元が緊縮財政を行い、金をためこんでいたのか、座を解体して、

異国である甲斐から呼び寄せた他国の御用商人に友野座を渡して、海外製品である綿の輸入で財をなしたのか、など、色々なことがわかってきます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ