表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

北風と太陽と

作者: 志崎洋

「ぼくの勝ちだね、北風くん」

 太陽はいかにも自慢そうに北風に言った。

「負けたよ。確かに君が旅人の着ていたコートを脱がせたからね」

 北風はさも悔しそうに答えた。

「でも……」

 北風が言葉を続けた。

「あの旅人はまだ帽子をかぶっているじゃないか」

 確かにその旅人は暑くなったのでコートは脱いだが、日差しが強いので帽子はまだかぶったままだった。

「あきらめが悪いな、北風くんは」

 太陽は憮然とした。すると、

「いやっそうじゃないよ。いくら太陽さんでもあの帽子は脱がせられないんだなと思っただけさ」

 いく分皮肉めいた口調で北風は言った。

「じゃあ、君は脱がすことができるのかい?」

 太陽は、ちょっと怒って北風に言い返した。

「いや、ぼくにもできないよ」

 さっき、強い風で吹き飛ばそうとしたが、旅人がしっかりと手で帽子を押さえ込んだのを思い出し、北風は残念そうに答えた。

「そうだろう、ならもう負け惜しみは言わないことだね」

 太陽は勝ち誇ったように北風に言った。


 北風はあきらめかけたが、あることを思い出し太陽に言った。

「でも君が雲で隠れてしまった時、ぼくが雲を吹き払ったおかげで出てこられたこともあったよね」

 そう言えばそうだった。太陽が厚い雲に覆われてしまったところを北風が吹き払ってくれたことがあったのだ。

 太陽は北風に少し言いすぎたなと思い、

「そうだね。自慢したぼくが悪かったよ。これからもなかよくしようね」

「うん、ぼくも強がりだったよ。なかよくしようね」

 北風もちょっぴり反省した。そして太陽が雲に少し隠れたので、北風はそっと吹いてあげた。

 その時だった。薄日の中にさわやかなそよ風が心地よく吹いた。

 すると、旅人はかぶっていた帽子を思わず脱ぎ、そっとつぶやいた。


「ああ、いい気持ちだ……」




             

そよ風は優しさの贈りもの

北風と太陽と雲と

どれもちがって、どれもいい…。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ