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あの冬の日の願い

作者: 嘯風弄月

昔々、北の国、フローレイズ王国にとてもとても美しいお姫様がいました

そのお姫様の名前はシャーロット

まだ幼い姫でしたが誰からも愛されています

姫は少し派手で無邪気で

そして誰よりも人生を楽しんでいました



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ある冬の日、シャーロット姫が隣の国の姫、王子と

凍った庭でスケートを楽しんでいました

お気に入りのピンクのドレスを身にまとい、栗色の髪を一つにまとめて

王妃の紫色したショールで寒さをしのぎ、はしゃぐその姿は

他で、どれだけ美しいと言われる姫でも敵うものはいないといっても過言ではなかった

スケートを始めてしばらく時間がたったとき、遅れて南の国、ローズレン王国の王子が顔を見せました

王子の名前はロイ

正直王子は姫のことがあまり好きではありませんでした

ほかの姫と比べては、はしたない行動が目立つ姫

それは次期国王の自分とはかかわらないほうがいいと幼きながら思っていたからです

ですから、今日も誘われていたのを断ろうと思っていたのですが

国同士、仲がいいので断れませんでした

あ、でも、遅れたのは違いますよ

南の国から、北の国へ行くのには空飛ぶ馬車でも三時間はかかりますから








「ロイー!」






ロイは、シャーロットが苦手でも、シャーロットは違います

シャーロットはロイが大好きでした。




「一緒にスケートしよう」





そう誘います

しかし王子は





「遠慮します」



そういうと、執事の用意した椅子へと腰かけてしまいました

シャーロットが残念がっているとそこへ



「シャーロット、ロイ嫌がってるから、代わりに僕と一緒に滑ろう」



と、二人より三つ年上で西の国、ストラビオス王国のカイン王子がシャーロットの手を引いていきました

シャーロットは人懐っこかったのでお兄さん的存在のカインに喜んでついて行きました

それを見たロイは少し、もやもやした気持ちのままその日はシャーロットの笑顔を見つめていました





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



それから、数年

シャーロットはとても美しく成長し、そして、派手さも、無邪気さも落ち着き

世界一の姫

そう、呼ばれ続けていました

それを聞きつけたあらゆる国の王子が婚約を申し出ましたが

シャーロットはいつも


「私はある人を待ってるのです」


と断り続けました



そんなある日、シャーロットにカインとの婚約の話が出てきます

シャーロットはそれを嫌がりましたが、食事だけでもとの強いお誘いに仕方なく晩餐会を開くことになりました


そんなうわさを聞き付けたロイはシャーロットに手紙を書きました

あの、スケートの日から一切顔も見てない姫です

どう接していいかもわかりませんでしたが、こういった手紙を書きました



『シャーロット姫へ

 

  お久しぶりです。お元気ですか

  突然ですが、カイン王子と婚約なさるそうですね おめでとうございます

  私にも、恥ずかしながら婚約のお話をいただいております

  東の国、サンタビアン王国のグレース姫とですが、私は断るつもりです

  あなたの幸せを祈っています』



それを読んだ、シャーロットは



『ロイ王子へ


  そうですか

  それなら、もう一度最後にお食事をしませんか

  無理にとは言いません

  ですが、私はいまここにあなたを招待しました

  それでは、また逢う日まで 愛をこめて』






そう、手紙を返しました

ロイは最後にシャーロットの顔を見たいと晩餐会へと足を運びました





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



晩餐会の夜

あの冬の日のように庭は凍っていました

国王が社交辞令を交わす中

シャーロットとロイは久しぶりに顔を合わせていました




「おひさしぶりですね」




「おひさしぶりです お噂のとおりおきれいで」




「ありがとうございます」





こんな会話がしばらく続き




しびれを切らした王子はついにあのことを聞きました




「ご婚約されるのですか」




「いえ、断るつもりです」




シャーロットは前のような無邪気さはなく、冷たくそう言い放ちました





「どうして、婚約なさらないのですか」




それでも、ロイは聞き続けます




「じゃあ私からも質問します あなたこそ、どうして断わるのですか?」





「それは、、、、」





ロイは正直困りました

そんな理由今まで考えたことがなかったからです

国王が言う人と、国同士の結婚をすればいい

そう、思っていたからです

でも、いつもいつも婚約のお誘いを断っていました

それは、なぜだろう

いつも夜になると胸の奥に引っかかる一つ

これではないかと思うものもあります

毎晩、眠れなくなるといつも思い出すことがありました

それはあの冬の日、シャーロットがほかの姫やカインと楽しそうにスケートをしていたことです

薄い記憶の中でシャーロットの笑顔が特に輝いて見えて

それを考えると、胸が締め付けられるような感覚です






「それは、ある人のことを思うとなぜか胸が締め付けられるからです」





ロイがこう答えるとシャーロットは





「それは誰ですか」





と続けます




するとロイも負けじと






「シャーロットは誰をまっているのですか」






と質問で返します






それにシャーロットは






「逆にあなたは?」






と聞きます




すると、負けず嫌いで真っ正直なロイはこう答えます






「いま、私の目の前にいる笑顔の素敵な姫です」






すると、シャーロットは





「私も、今目の前にいるおバカさんの王子のことです」





とあの時の笑顔で返します

美しく成長した姫の笑顔はどこか懐かしさが残っていました

無邪気で、派手で、人生をまっとうに生きているあの顔

ロイには、幼少期のシャーロットが重なって見えました

そう、このとき二人はようやくお互いの気持ちにきづいたのです



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



それから、シャーロットは以前のような無邪気さが現れ、よく笑うようになりました

あの落ち着きは、ロイが騒がしい女は嫌だと思っていると思っていたからです

そうやって、自分のために努力してくれたということにきずいたロイはますますシャーロットを好きになっていきました

それから、ついにあの日が来るのです

シャーロットとカインの晩餐会と

ロイとグレイスの晩餐会の日です



お互い断る

そういっていましたが、そう人生は簡単にはできていないのです

なんと、縁談を断り切れなかった国王はシャーロットとカインを婚約させてしまいました


このことは瞬く間に世界中へと広まり、もちろんロイの耳にも届きました

悲しみに暮れたロイはグレイスとの縁談を断る理由もなく婚約してしまいました

だけど、最後にもう一度だけ会いたい

そう思った二人は本当に最後の晩餐会を開きます

二人だけで



その晩餐会は風の音と、食器の音しか聞こえない

その静けさは、二人の心情を表しているかのようでした




「さようなら あなたに会えてよかった」




そういったシャーロットの目からは透明な涙が一つ零れ落ちた



「私もです」



そう言い残すとロイは馬車に乗り込んだ



馬車が走り始めると涙路線が崩壊したロイの大きな目からは大量の涙があふれ出た






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



それから、二人は別々の人生を歩んで行きました

二人の時間以上に幸せとは言えませんでしたが、子宝にも恵まれ国はどんどん栄えてきました

そして、シャーロットは娘が大きくなると、フローレイズの城の庭で年に一度世界中の姫、王子を招待してアイスパーティーを開きました

その時、ロイは息子にあの日自分が来ていた服を

シャーロットは娘にあのピンク色のドレスを着させてパーティーへと連れて行きました

二人は、自分たちの叶わなかった願いを子供に託したのです


「ねぇ、一緒にスケートしよう」


「うん いいよ」



手をつなぐ二人の子供の後ろ姿は氷に反射した光で輝いて見えました
















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