0-3話 バウンティディヴィジョン ヴァナティック邸の攻防 その2 閃光の狐
3話です。何やらドイルやライザーが主人公みたいな感じですが、彼らは脇役です。アサイラムの死神編の主人公はまだ出てきておりません…。このヴァナティック邸の攻防シリーズ?が終わると主人公が登場しますのでお楽しみに。いきなり主人公不在で脇役だけでバトル始めるってどうなの?って感じなんですがwあと可視化サーマルスコープって何やねん!?wミリタリの知識がないのでなんかすみません。
マットが慌て無線で予備部隊に応答を求める。
「こちらシザーチームのマットだ!!オイ!!どう言う事だ!!?スナイパーは2人いるのか!?ジェイコブ一体どうなってる!?答えろ!!」
予備部隊の隊長ジェイコブがマットに答える。
「こちらディージェーチームのジェイコブだ!マットお前の言う通りポイントD316に増援を送ったが……誰もいないぞ!?本当にポイントはD316で合ってるのか?」
マットは驚愕の事実に青ざめながら呟く。
「畜生!!索敵精度を限界まで上げる……。それでも補足しきれない……。およその位置しかわからねえが……。同反応からの狙撃と断定だと……!?バ……バカな……!?まさか……こんな短時間で……あ……あんなところまで……移動して狙撃ポイントを新たに選出したというのか!!?あり得ねえ!!」
新たな狙撃ポイントに陣取り、スナイパーライフルを構えているドイルは皮肉っぽく微笑を浮かべながら呟く。
「そのまさかなんだよ!!俺の銃弾はつまんねードラッグよりも気持ちよくなれる事請け合いだぜ!?イッちまいな!!」
マットの頭部にドイルのスナイパーライフルの照準が合う。引き金を引こうとすると……。
「社長!防弾シャッターの起動を!!」
マットはヴァナティックに防弾シャッターの起動を促す。
「おお!!そうだ!!妙案だなマット!!」
ヴァナティックが何やら携帯の端末を操作すると、ヴァナティク邸全ての窓ガラスの上から防弾シャッターが降りる。ドイルが引き金を引くも撃ち放った銃弾は、防弾シャッターにあえなく弾かれてしまう。ドイルは思わず悔しさを滲ませ声を上げる。
「ウッソ!!舐めてる!そんなんアリかよ!!ここでゲームオーバーか?いいや!コンティニューだな!マニングス!可視化サーマルスコープとアーマーピアシング貫通弾をよこせ!」
マニングスと呼ばれた隊員はそっけなく無線で答える。
「へいへい……。人使いの荒い事で……。でもよお。分析したんだが、これ特殊ジェラル二ウムでできてる最高級の防弾シャッターだぜ?アーマーピアンシングでも貫通できない模様」
ドイルはマニングスの返答を遮るように口を開く。
「いいからよこせ!俺に考えがある!凡人には無理だが天才の俺にしかできねえやり方だ!!」
「天才ねえ……。大きくでやがったな。お前今期の実技演習サボりまくって赤点スレスレだぞ……。いずれアーヴァン隊長にこってり絞られるんじゃなくて?天才お坊ちゃん?」
「それは……言ってくれるな……。どーせ絞られるんならジャンヌ特佐がいいなあ。あの巨乳に挟まれながら絞られたい!!」
「あのな……。今一応任務中なんでな……。妄想はいいから……。あいよ!可視化サーマルスコープとアーマーピアシング弾ね!手配するからもうちょい待ってくれ!」
「頼むぜ!相棒!俺の腕をあいつらに見せてやるぜ!」
ヴァナティック邸の全窓に防弾シャッターを降ろしスナイパーの銃撃からひとまず事なきを得たヴァナティックとブラッティファントムOB。(以下BFOBと記載)マットが再び隊員の士気を煽る。
「これでスナイパーからの銃撃は封じた!!てめえら!!ここからだぞ!!何をへばっている!それでもBFかお前らは!数ではこちらが有利なんだ!一気に畳みかけろ!!」
練り歩きながらBFOB隊員に号令をかけるマットの一瞬の隙に、バウンティディヴィジョン(以下BDと記載)の精鋭の隊員たちデュラン、シュミット、アマンダ3人が一斉に襲い掛かる。
「隙だらけだぜ!大将!」
デュランが飛びかかって拳を突き出し殴りかかろうとする。
「……頭を抑えれば……!!」
シュミットが2本のダガーナイフを交差するように構えて後方から飛びかかる。
「偉そうにふんぞり返ってるのもここまでだよ!!」
アマンダがショットガンをマット隊長のみに照準を絞って撃ちまくる。
「舐めるなよおおおお!!雑魚どもがあああああ!!」
マットの怒号が響き渡る。その瞬間マットのボディスーツに搭載されている内臓人工筋肉が一気に膨れ上がりアマンダのショットガンの連射した弾丸を腕を交差するようにガードし、飛びかかってくるデュランに拳でカウンターを入れ、後方から斬りかかってくるシュミットを後ろ回し蹴りで蹴り飛ばす。3~4M後方へ吹き飛ばされるデュランとシュミット、尋常ではない威力を誇っているようだ。
アマンダは3人がかりでも通用しないその状況に驚き、一瞬硬直した。
「うおおおおおお!!」
その隙を見逃さずマットは雄叫びを上げながらアマンダにタックルを仕掛け、アマンダが体勢を崩した瞬間に彼女の頭を掴んで豪快に地べたに叩きつける。地面の大理石にヒビが入るほどの衝撃だ。
「うぐああ……」
「……ぐうう……」
「ちっ……!だ……伊達に頭を張ってないってわけか……!」
デュラン、シュミット、アマンダはそれぞれ負傷し倒れ込む。特にアマンダは頭からおびただしい血をドクドクと流し重症のようだ。
「泣く子も黙るBFを舐めるなよ!!クズどもが!!貴様らなんぞに遅れはとるかよ!!」
地ベタに這いつくばるBD隊員達を煽り挑発するようにマットが吼える。
「クソ……!!ち……調子に乗りやがって……」
デュラン達は悔しそうに身体を引き起こして戦闘態勢を取ろうとするも、ヨロヨロとよろけてしまい満足に立てずにいる。その状況を見かねたライザーは、負傷したBD隊員達を庇うように一歩前に出る。
「……お前たちは他のBF隊員の駆除に当たれ。俺がこいつを殺る」
BD隊員達は申し訳なさそうに後退する。その際にデュランがライザーに声をかける。
「ライザー隊長……。すみません……!そいつはかなりの手練れです。気を付けてください!」
静かに頷くライザー。マットは立ちはだかるライザーをじっと見た後に問いかける。
「ライザー?ライザーだと?まさかお前はライザー・シュナイデルか?閃光の狐の?間違いない!!イグルー戦役のファルメール軍勝利の立役者!伝説の閃光の狐!!イグルー戦役の後、各地を転戦し突如行方をくらましたというが、よもやこんなところで会えるとは……!」
ライザーは全く無感動なままに答える。
「だとしたらどうする?」
「俺は鬼火マット・ヘーゲルだ!名前ぐらいは聞いた事あるだろ!?イグルー戦役ではアルツィーラ側の傭兵だった。100人以上殺した。お前と殺りあえない事が心底心残りだった。なんという僥倖だ!だからこの仕事はやめられねえ!政府の役人どもめ!戦争で人を殺りまくった奴に退役して犬でも飼って余生を過ごせと!?バカバカしい!!殺し合いこそが俺の生きがいなのだ!退役してこそなお殺りまくるのさ!まさかこんな上物にここであえるとは……。殺してやるぜええ!!殺してやるウウウゥゥライトニング・フォックス!!」
「鬼火……?聞いたことがないな……。貴様は最早軍人の誇りを捨て、ただの薄汚い殺人鬼に成り下がったようだな。二度と無益な殺生ができないよう叩きのめしてやる」
「舐めるなアァァァァァ!!ライトニング・フォックスウゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
マットのボディスーツに搭載されている内臓人工筋肉が再び一気に膨れ上がる。そして重厚なコンバットナイフを片手にライザーに向かって猛然と襲い掛かかっていく。
「ふうううう……はああああ!!」
ライザーは一瞬目を瞑り、精神を集中した後、目を開け、マットの連撃であるナイフの斬撃、肘撃ち、回し蹴り、それぞれの攻撃モーションを寸断するかのように閃光のような掌打、蹴りを放つ。
「ぐおおおお!!な……なにィ!!」
全ての攻撃を寸断されたマットは一旦距離をとり。思案するようにじりじりとライザーの周りを回る。マットの額に冷ややかな汗がつたい、強い焦りが見える。
「(な…なんて野郎だ……!こちらの攻撃のモーション中に難なく割り込んできやがる!!打撃のスピードの桁が違うんだ!!俺とライザーが同時に攻撃してもライザーの打撃の方が速く届く!!考えろ!!
考えるんだ!!奴を倒す方法は……?………………………あったぜえ!!とっておきのがな!!)」
マットは妙案を思いついたのか。ニヤリとほくそ笑む。
「どうした?鬼火とやら。まさかその程度とは言うまいな?」
ライザーが構えながら拍子抜けしたように言い放つ。
「舐めやがって!!減らず口などすぐに叩けなくしてやるぜ!!」
マットは腰に収納していたアサルトライフルを抜き、ライザーめがけてフルオートで乱射する。
ライザーは重心を低くし、腕を交差して、後ろ足に力をグッと溜め、その力を解放するかのように閃光のようなスピードで銃撃の合間を縫いマットに一気に近づく。途中何発かの銃弾が頬や交差した腕を掠めていく。
「ク……クソがあ!!速いなんてもんじゃあねえ!!これがライトニング・フォックスのスピードかよ!?ふざけた身体能力しやがって!!」
「チェックメイトだ!諦めろ」
ライザーは完全にマットの急所を捉えそこに渾身の掌打を叩き込もうとするその瞬間
「お前がなァ!!甘いんだよ!!このボケがあ!!」
マットの口から毒霧が吐き出される。ライザーの目を中心に毒霧が侵食していく。
「ぬう!?卑劣な!!」
「バカが!!殺し合いに汚いもクソもあるかよ!!このブラッディミストは視力だけではなく聴覚や臭覚や触覚すらも奪う優れものでよお……。あのライトニング・フォックス様もこうなっちゃ形無しだなあ!!ゲハハハハハハハハハ!!オラァオラァ!!」
マットのボディスーツの内臓人工筋肉が更に膨れ上がる。身動きがとれなくなったライザーにマットの強烈な拳や蹴りの連打が容赦なく突き刺ささっていく。
「ぬううう!ぐうううう……!」
為すすべもないライザーはそのままサンドバックのようにいいようにされてしまっている。
一方後方で戦況を厳かな表情でじっと見つめているプルートゥにBFOBの隊員達が襲い掛かる。
「何ボーッと突っ立ってんだ!?ボケてんのか!?くたばれや!!ジジイ!!」
「はあ!」
手刀と回し蹴りなどの華麗な連撃でプルートゥを守るようにBFOB隊員達を蹴散らすジャンヌ。しかしライザーの尋常ではない危険な状態にジャンヌは困惑を隠しきれない。
「(ここはライザーのフォローにいくべきか!?しかし私はプルートゥ様をお守りするという役目もある!迂闊には動けない!)」
ジャンヌはプルートゥに襲い掛かるBFOB隊員を振り払うので精一杯だった。
ヴァナティックが歓喜の声を上げる。
「素晴らしい!!素晴らしいぞ!!マット隊長!!そのまま存分に嬲れェい!!殺してしまえィ!!殺したらボーナス5億追加だあああああ!!」
マットは更に上機嫌になってライザーを痛めつける。
「社長~!!話がわかる旦那だアンタは!!聞いたか?5億だ!ライトニング・フォックスの賞金としては十分な額だなあ?ええおい!?そろそろ死んじまえや!!」
散々ライザーを嬲った挙句、トドメの一撃を繰り出そうとするマット。
そのマットを虎視眈々と狙っている男がいた。可視化サーマルスコープを搭載した新たなスナイパーライフルを構えているドイルである。
「心底汚い野郎だ!このままじゃライザー隊長が死んじまうぜ……!可視化サーマルスコープオン。よーく見えるぜ……!見えるが……ちっ!野郎!やたら激しく動いてやがる……。的が狙いにくい。動きを予測するんだ……!貫通弾セット!…………ここだ!!いけえええええええ!!」
ドイルは貫通弾を3発連続で撃ち放った。1発1発は貫通弾といえど強固な防弾シャッターを貫く事はできない。だが3発連続で寸分違わぬ軌道、同じ箇所に銃弾を重ねるように狙撃したのだ。
見事、防弾シャッターを貫通した銃弾がマットの腰に命中する。飛び散る鮮血。
「うぐぎゃああああああああ!!ス……スナイパーの狙撃は完全に封じたはず!!な……なんだ!!一体どこから!?」
あまりの激痛に転げまわりながら叫ぶマット。銃弾は肉を深く貫き、骨にまで達している。
「ハッ!!ざまあみやがれ!!どうだ!!貫通弾のお味は?美味いか!?クソ野郎が!!」
ドイルがガッツポーズをしながら歓喜の声を上げる。
「やれやれ……まいったね……。本当にやりやがったよ……。たいした坊ちゃんだこと……」
マニングスは思わず驚嘆のため息をついた。ドイルの秘策とそれを可能にする卓越した狙撃能力に舌を巻くしかなかった。
やっとのことでヨロヨロと立ち上がり中腰になったマットの眼前には、傷つきながらも体勢をなんとか立て直したライザーが立ちはだかっていた。ライザーの顔は毒霧によって半分緑色に痛々しく染まってしまっている。
「ハアハア……。やってくれたな。少々効いたぞ。それ相応の返礼をしなければな!」
「ま……待て!!命だけは……!!」
マットがそう言いかけた瞬間、ライザーの怒りの飛び後ろ回し蹴りがマットの頭部に直撃し、
余りの威力と鋭さに凄まじい音と共にマットの首の骨がへし折れ、きりもみ状に体ごと吹きとんでいく。マットはもう二度と立ち上がらない。ヴァナティックは絶望して絶叫する。
「うおおおおお!!マット隊長!!!バカなあ!!私の史上最強の部隊がああああああ!!」
ライザーがBD隊員達に激を飛ばす。
「今だ!畳みかけろ!」
これを勝機とばかりに一斉に総攻撃を仕掛けるBD隊員達。
「な……なんてことだ!あの百戦錬磨の鬼火のマット隊長が破れるなんて……!うわあああああ!!」
隊長を失って残されたBFOBの隊員も一気に戦意を失い、その総攻撃を受けてあっという間に総崩れになっていく。
読んでくださってありがとうございます!4話に続きます!ブクマや評価、感想くれたら嬉しいなあと。
できるだけ更新するようにしますが、仕事が忙しかったり、次の話ができていない時には更新が止まりますwご容赦ください。不定期更新でのんびりやっていきます。