表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/97

84.朗読を聞いて一冊読んだと言えるのかどうか


 昨年の夏辺り、Audibleオーディブルを無料試用していた。一言説明を書くと、本を朗読してくれる機能である。



 最初に小説(ライト文芸)を試したところ、学生時代を思い出させるものだった。

 もう少しその、ラジオドラマのような感じになるのかな? と思っていただけに、何か拍子抜けしたのは否めない。

 あるいは昔──何年前かは覚えてはないが「なろう」に登録し始めた頃、声優の能登麻美子さんが朗読をするラジオ(おはなしノート)を一時期聴いていたので、あんな感じになるのかと。


 1冊朗読で聞き終わったときに思ったのは「これで読書の満足感は得られない」だった。


 実物の書籍と電子書籍──スマホやタブレットでの読書とで、どちらを選ぶかというのは度々に見かける話題だが、Audibleは朗読なのでそのどちらともまったく縁がない。手で重さを感じることもないし、指で手触りを感じることもなく、視線を動かす必要すらない。ただ聞いているだけだ。


 個人差が生じる問題として、マルチタスクと呼ばれる能力が僕にはない。同時に2つ以上の行為を進行させることができるというアレだ。CMで見られるような「ながら聞き」が推奨できるかどうかは、甚だ疑問となってしまう。

 物語に集中したいときに掃除をする、筋トレをする、外出をする、そういったことをしながら語られる内容に集中して記憶に残すというのは、僕には難易度が高すぎる。



 僕の中でAudibleの良かった点は2つ。

 1つは余計な音を無視できること、1つは自分が読んだときとは違うニュアンスを感じられたこと。


 音に関しては以前も書いたことだが、僕は音に対して弱い。

 無駄な音を聞きたくないのに、とにかく耳が音を拾ってしまう。読むことに集中したくても微かな音で遮られる。集中力が足りないのかもしれない。昔は電車の中でも本が読めたのに今は無理となった。

ところがこれは耳をふさいで尚且つ本の内容を語ってくれているのでとても集中できる。非常に優れたものだった。本を読むときにヘッドホンでもして音楽をかけていればいいと思われそうだが、それはそれでどちらに集中力を割くかで気が散るのでやらない。


 ニュアンスの違いに気がつけたのはかつて読んだ本を聴いていたときだった。数年前に読んだ覚えのあるタイトル(コンビニ人間)を見つけたので、とても面白かったのを覚えていたので、こちらでも味わってみようという気になった。

 そして「この話はそんなに深刻で、暗い未来のような物語だったろうか?」という、なんとも言えない感情を生んでいる。自分で読んでいたときにはもう少し、突き放したというか客観的というか、もっと感傷的にはならない読後感があった。内容も主人公に共感していたものだったが、なるほどこうして他者(話者)を通じてみると社会からの異端性を如実に書いていたんだなと。


 そんな2つの点を体感した結果、無料期間を終えた今もAudibleを継続している。


 とはいえ、そこまでの頻度で聞いているかというとそうでもない。

 本を読もうとするときよりも、何かこう、ハードルが上がった面はある。

 適当に好きなところまで読んでそこで終わり、というようなことが難しいからだとは思う。



    ◇



 読書という行為は、本に意識を向けて知識や想像を働かせるもので、コスパとしては最悪な部類の娯楽であり、現代の中ではとても贅沢な時間の使い方だ。暇潰しをしたければスマホをいじっていればいい。

 それすらもこうして簡易化してしまうというのは、趣味の多様化が極まっているなとも思う。

 別にAudibleを否定しているわけではない。

 こうした技術で助かっている方々も確実にいるだろう。紙の本が至高と考える傲慢派の方々にはわからないかもしれないが。



ということを2カ月くらい前に書いていながら退会した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ