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マネク泥濘  作者: 万拠 K
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第1話:落ち葉を踏む少女

小説の投稿テストも兼ねております。ご指導等ございましたらよろしくお願いいたします。

ふと、恋をしたいと思った。


今日はなんでもない日だ。月一のアレが来たわけでもなく、月が綺麗であったというわけでもなく。

そして私はまだ大学生で身内に「結婚」という文字を仄めかされるものの、まだ世間一般の結婚平均年齢にはまだ達していない。

何故だろうかと首を傾げる。特にそのような話題は無かった。ただ今日は少し寒かった。それだけだ。

しかし同時に納得もする。人間は一人で生きられないものだという。ならば納得のしようもある。

本能がふと目を覚ましたということなのだろう。春にふと咲く桜のように。今の今まで春が沈黙をしていたというだけのこと。


けれども一つ、問題がある。私は恋愛をしたことがない。


私は人間不信だ。どうにも人は信じられない。

それは私に流れる半分の血を与えた男が原因だろうと思う。

男は私と母をただの金を貯める豚の貯金箱としか考えていなかった。良くありがちな、全くもって非現実的で未だに信じられない事だ。

金が貯まった哀れな豚の貯金箱はハンマーで割るしかない。


ハンマーは振り下ろされる前に止められた。男の最後の良心とかそんな綺麗なものではなく、ただ母の呼んだ助けが来たというだけの事だ。

その瞬間まで、男は私に幾度となく当たり前の教養を教えてきた一人の親だった。

人には優しくすること。

弱きは助けること。

上は敬うこと。

親の言うことは絶対だということ。

そして、人を信じるということ。

それを教えた人間が、すべてを裏切ったのだ。


落ち葉は危ない。雨に濡れると滑ってしまう。

一度滑れば後は悲惨だ。濡れてしまうし怪我をするし最悪、カバンの中身が何かしらの損害を受けてしまう。

キャンパスの敷地にある落ち葉を踏み分けながら、私は同じような研究をしている同級生との待ち合わせ場所に向かった。

同級生とは同じような研究内容であったということで大学に入学してからそれなりに話をする間柄で、思考が似ているのか異性ではあるものの遠慮も無く話せるので一緒にいて楽な人だった。

私にとって彼とは、友人というにはどこかで遊んだとかそういうことは無く、かといって知人というにはそれなりに親しい人だった。

それだけだった。それ以上の感情を抱いたことも無かった。せいぜいfavoriteとかそんなもんだ。

彼はただ待ち合わせの場所にいただけだ。寒いから、庭に面した学食の入り口付近で、という約束を忠実に守って。

そういう人だった。約束を忘れたら謝って、覚えていれば必ず忠犬みたいに守るやつだった。

そうだ。滑ってはいけないのだ。その後は悲惨だから。


その瞬間、生まれて初めてヒューマンエラーを体験した。


それが私の終わりだ。




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