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Second Life  作者: ROA
12/22

「集会」

          11



 良太は無造作に頭を掻きむしり、目の前にあるパソコンのディスプレイに眼を向けていた。

そこには、変わらず微動だにしないアバター、Yumiが立っていた。

「In the beginning, Deity has created the heaven and earth.」

Yumiの日記帳には新しい言葉が書かれていたのだ。

「初めに神は天と地を作った…かな?」

良太は苦手な英語の知識を屈指して翻訳する。

Yumiの二回目の言葉にSecond Lifeの住人の反響は凄まじかった。自分達で回覧板にトピックをたてて、多くのユーザーがその言葉の真意を議論していた。

Yumiは誰ともフレンドリー登録はせず、ただその言葉だけを入力しているだけだった。それが、また他のユーザーには謎で魅力的らしい。

しかし一方で、会社側がYumiというアバターを作っているのではないかという声もあった。

その疑惑が広まってしまうと、折角盛り上がっている現状が冷えかねない。

良太のアバターはユーザーに会社の人間であることを公表している。上手く自分のアバターを利用して、その疑惑を晴らそうとしていた。

 今日の午後、Second Lifeでイベントが行われる。19時に良太による説明会が行われる予定なのだ。

 現在は18時半。指定した街の公園には、数多くのアバターが集まっていた。今までに行ったイベントを超える人数だった。

 Second Lifeは現在9つのサーバーに分かれている。そうすることでサーバーの負荷を軽減することが出来るのだ。Yumiが良太のいるサーバーにいたことを心から感謝した。

こんな白熱したイベントは初めてだった。お陰で、イベント用に作成された花火やクラッカーといった付加サービスがかなりの数従量課金されている。

オンラインゲームの多くは、キャラクターにいくつかのアクションを起こすことが出来るように設定されている。Second Lifeもそれを採用していた。

公園の前に集まり、「考える」アクションを行っている者、「座って」待っている者、イベントに浮かれて「踊って」いる者と様々である。

良太は自分のアバターを公園に向かわせる前に、Yumiにメッセージを残しておいた。

「今日の19時、あなたの説明会を行います。会社内の人間が操作しているのではないかという疑惑があるからです。もし良ければ、Yumiさんもお集まり下さい。」と。

時刻は19時を回った。Ryoという自分のアバターを公園の舞台の上に配置する。一同「拍手」のアクションを行っている。

「皆様、お待たせしました。Ryoです。」

チャットログに打ち込まれると、何人かがクラッカーを鳴らす。

「本日は、皆様の間で話題になっているYumiさんについてお話しに来ました。」

そう打ち込んで、「手を広げる」アクションを行った。

「Yumiさんにもご参加頂ける様にお誘いをしたのですが、残念ながら返答はありませんでした。」

Ryoは「落ち込む」動作をする。

「しかし、Yumiさんと私達は無関係です。」

一斉に花火やクラッカーが鳴らされる。

「Yumiさんの日記帳には不快であったり、悪質なコメントは含まれておりません。今後も、独自の世界観をアピールしていって頂きたいと思っています。」

もう一度、拍手のアクションが沸き起こる。

その時だった。舞台にいるRyoの横に一人のアバターが上がってきた。

アバターの頭上にはYumiと表示されていた。

良太はアドレナリンが沸きあがるのを感じた。これは大イベントだっ!!興奮している自分を抑え切れない。

Yumiは立ち尽くしたまま、しばらく何の反応もない。

そして、チャットログが動いた。

「One of many.」

新たな言葉がYumiの名前で表示された。


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