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ユガリズム  作者: 最焉 終
第一章
6/13

5話

稚拙

眼前に広がる荒野


~~~~~


 完全に山を下りきるよりも早く熱波が飛んでくると、周りの木はほどなくすると燃え始め周りに移っていった。降りきった時にはもう緑色は残っていなかった。呆然と目の前の赤を見上げていたユガだったが、すぐに頭を降り一瞬でも感傷的になった自分を恥ると、走って埋めた場所を探した。

 地面の色が違うため探し出すのに時間はかからなかった。


「さて……結界か」


 ユガは下りる時に結界に関して心残りがあった。


「どのくらい持つのかとか聞いておけばよかった」


 そんなことをぶつぶつ言いながら植え終わると、倒れないように石を周りに置いた。


「どうやら魔力量で持続する時間とか変わるっぽいな。……耐久度も違うか」


 離れたところで結界を張っては叩き壊すユガの姿があった。その実験結果として大雑把に人差し指の指先程度の魔力でも1時間持つと結論付けた。もはやそんなことにおかしいとも思わずに、とりあえずありったけの魔力を込めておけば当分困らないだろうと集中した。

 

 なにやら結界の色がおかしくなった。


「……何かこの枝光ってるんだけど」


 嫌な予感しかしなかったユガは目を背けると、この村から別れを告げた。


「当面の目的は、やっぱり食料かな」


 餓死すらしない自分の体を憎らしく思いながらも王都に食料(焼け跡)が残っていると踏んだユガはそっと歩き出した。


~~~~~


「こんな姿の君を見たかったわけじゃないんだよ」


 変わり果てた王都……というよりももはやただの瓦礫の跡と化した目の前の惨状に向かって呟いた。

 村から出て歩いているとすぐにお腹鳴った。どうやら食料を意識した所為らしい。未だ訴え続ける空腹を宥めながら王都に近づくとまず目に付いたのは人だったらしきものだった。すでに見慣れたものであったためか若干伏し目がちになるだけで通り過ぎていった。

 もはや原型を保っている家屋はなく、一目見ても何を目的とした家なのかはっきりしなかった。宿屋らしき建物ギルドらしき建物、武器屋鍛冶屋防具屋仕立屋らしき建物。特に武器等々はドロドロに溶けて固まっているようだった。


「鉱石類はあっても困らないんだけれど・・・・・・持てないし」


 そこで魔力を応用して大容量の何でも入る空間というのを作ってみることにした。幸いにしてユガの中の魔力は空間を作るということを知っていたようで案外容易に出来た。


 どうやら王都丸々入る大きさになったらしい。


「・・・・・・・・・・・・いやいやいやいや」


 考えることをやめたユガはさっそくそこら辺に転がっている鉄やら何やらまですべてを回収した。空間のことは便宜上『(うろ)』とでも呼ぶことにした。

 仕立屋にあった無事そうな布も回収し家を出ると、食料の調達という当初の目的を思い出したようで、宿屋へ向かっていった。が、ほとんどが炭になっていてあまり回収できなかった。それはギルドも同じで大量には見つけられなかった。その後も平民宅も訪ねてみたが、やはり成果は大して得られなかった。軽く絶望的なこの状況にユガは、ついに貴族街に突入することにした。とりあえずすぐそこにあった建物に這入ると早速キッチンの食料庫からすべての部屋をかき回し、無事だった宝石類すら盗み出した。食料はそこそこだった。

 そんなことを繰り返しついに城の中にまで潜り込んだ。潜り込んだと言っても相変わらず床には黒焦げたメイド服らしきものを着たものが転がっているため、誰も咎めたりはしない。まずは食料とあるだけ回収するとある程度溜まったようだ。ついでに宝物庫とその他諸々の部屋を漁り宝石やキラキラした剣を盗み出した。宝物庫は結界が張ってあったようだがあの白の光で軽く消し飛んだらしい。しかし中身は無事だったので僥倖といえる。こうして王都から使えるものすべてを回収し終えた。


「さて・・・・・・これから何をしようか」


 王都から出てすぐにユガは座り込んでいた。辺りは完全に真っ暗、いや星の明かりが辺りを照らしてくれている。そしてなぜ座り込んでいるかというと


「まっずい」


 さっきから鳴っているお腹を鎮めていた。


「ここでじっとしているわけにも行かないのは分かってるんだけど・・・・・・行く宛もないのに歩いてもしょうがないんだよな」


 ただその場に留まっていても何も生まれないことも分かっていた。とにかく今から始まる長い永い暇をどう潰すか、それだけが気掛かりだった。


「・・・・・・寝るか」


 ユガは料理をしていた火をそのままに地面に横たわった。地面はとても硬くて熱かった。


~~~~~


「白い光の正体を調べよう」


 やっぱり寝てばっかりも健康に悪いと思い、この惨状を作り出した原因がどこかに残っていないか、朝から考えていた。今更どうでもいい現象だったが、暇がいけなかった。


「あの女・・・・・・今度会ったらただじゃおかない」


 とにかく歩き出せば何か暇も潰せるはずと意気込んだユガはとりあえずこっちにとまっすぐ歩き出した。途中、村や街、動物や魔物を見つけては食べられるものや金銭類を盗んでは虚に放り込んでいた。

 

 最初1周間はとにかく歩いた。暇を忘れるほどに。


 1ヶ月経つと暑さに若干疲れてきた。水は魔力から作り出すことができた。


 半年経つ頃には焦点も合わなくなってきた。


 1年経てば暇も、暑さも、足の裏の痛みさえ感じなくなった。


 10年経った頃に食料がなくなり、細くなってきた。


 100年後には若干の肉付きと骨と皮だけになっていた。


 ユガはこの不老不死という体は死なない代わりに魔力を消費するらしいことが分かった。それが500年経った頃だったか。前まであったものはすでに腐っているか地面とどうかしてしまっているかのどっちかだった。以前まであった熱波はだいぶ治まってきたようで、日の出ている間は良かったのだが落ちた頃には寒さが耐え切れなかったのか、火を付け暖まっていた。次の日。


 いつも通りただただ何も考えずに歩き続けたその日、たまたま通りかかったその場所に何か小さな隆起を見つけた。すでに地面をある程度変形させることができるようになっていたユガは中身がどういったものなのかすぐに分かった。それは大きな鉄の塊であった。所々融けてどういった形をしていたのかさっぱりで、使用方法も分かるはずがなかった。昔教えてもらった魔法にはこんなものを使用するとは言われなかった。しかしどうやらこの鉄には魔力の残痕がほんの少し残っているようで、関連性がないというわけではないらしい。とりあえず回収して先へ進もう、そう思ったユガは虚を引き伸ばすと一瞬で消し去った。埋まっていたのだから当然その跡には穴が生まれるわけで、ユガは500年ぶりの暇な感覚を取り戻すと、好奇心旺盛な少年の如く潜り込んでいった。500歳だが。


~~~~~


「・・・・・・寒い」


 地面の中とあって寒い上に暗かった。指先に光を灯し下りていった。途中、土とは関係のない素材でできた壁を発見した。見たこともないような模様の壁で、何か部屋があるのだろうと思ったユガは、


自分の体ごと魔力を爆発させ壁を破壊した。


 今更痛みもなかった。空間があるのを破片でつぶれた新しい目で確認すると、真っ赤に染まってしまった壁から這入っていった。辺りにはよく分からない魔導具らしき融解した鉄の塊が散乱していた。さらに久しぶりに見た人間の骨もたくさん転がっていた。とりあえず探索をするべしと思ったユガは未だ魔力の反応を残す扉へと向かっていった。


 結界が張られていたがちょっと触っただけで壊れてしまった。どういう原理だったのか疑問に思いつつ、扉を抜けるとそこには大量の紙の束が辺りに散らばっていた。高級な紙が大量にあることに驚きながらあの大きな鉄の塊の正体を探しながら整理していると、どうやらそれらしきものを発見した。


 残念ながらここの国の言語は理解できず、何が書いてあるのかは分からなかった。しかし捲りながら見ていると魔力という言葉だけは読み取れた。世界共通の言葉らしい。そして、最後に描かれていた絵をよく見ると人の形をしたものに魔力と右に書かれ、そこに向かって飛んでくるように描かれる細長い尖った物体。極めつけは矢印が書かれたその先には、魔方陣が載っていた。読み取れるだけを読み取った結果が、これだ。


「魔力を保有するものに向かって打ち出される無数の爆発・・・・・・?」

ごめん

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